中二な僕がささやかな祝福で生き延びる方法

38,思惑

　考え通りに犬の魔物は、俺の後を追ってくる。

　走りながら固い枝を拾う。

　登りやすい木を見つけると枝を口にくわえ急いでよじ登る。

　今は少し時間が必要だ。

　ポケットから用心の為に忍ばせていた小さな折り畳み式のナイフを取り出すと、枝の先をを急いで削る。

　武器は無いので、逃げるための時間を稼ぐためのチャンスを作り出さないといけない。

　数が増えないうちに、行動しないといけないので少し焦りはあるが、町中迄逃げられればそこまでは追ってこないだろう。

　枝を尖らせしっかりと持つ、眼下の犬の魔物を見据えて魔力を練り上げる。

「光よ！」

　一瞬だけフラッシュの様なまばゆい光が生まれる。

　努力の賜物でほんの細やかな魔法が使える様になったのだ。

　魔物が、目眩ましに一瞬怯んだ隙を見逃さずに、枝に体重を乗せ、魔物の上に落下する。

　枝は魔物の肩付近に突き刺さった。

「ギャン！」

　魔物の悲鳴と共に、振り返らず猛ダッシュで走り出す。

　直ぐ様、森を抜け出し、子供達の隠れ家に辿り着く。

　そして、隠れ家の中で少し怯えていた2人に声を掛ける。

「こわい、いそぐ、かえる。」

　言いたい事を理解した2人を連れて、急ぎ町中に戻った。