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春の気紛れな寒暖さと新生活にも何と無く慣れてきて、春の大型連休明けの気だるさだけを残した様な···。
そんないつも通りの日常が戻ってきている、少し疲れを感じさせる様な黄昏が差し迫る学校帰りに、俺はいつも通りの通い慣れた通学路途中の交差点で、茶虎模様の子猫が横断歩道側の中央分離帯で、怯えながら立ち往生しているのを見かけた。
車を怖れて動けなくなったのか、不安そうな鳴き声が車のエンジン音の合間に聞こえてくる。
ほんの少し前に交差点の近くの学習塾から出てきて、俺の前を歩いていた塾帰りの小学生の二人組が、その子猫を見つけて「助けなきゃ!」と、赤信号の交差点の横断歩道の前で真面目に信号が変わるのを待ちながら必死になって騒いでいる。
信号待ちをしているのは他にも5~6人居るので、誰か何とかするだろう・・・。
俺は特に深く考えずに子猫に視線を向けつつも、さして気に留めずに信号が変わるのを待つ。
我関せずといった空気を少なくとも幾つか感じて、周囲の何人かは俺と同じ事を考えているかも知れないと漠然と感じた。
そんな周りの無関心さを全く意に介さず、小学生の二人組は足踏みしながら「青になれ!」と魔法使いの様に信号機に念を飛ばしたり、少しでも時間を速めようとしているのか「いそげ~!!」と叫びながらカバンをぐるぐる回したり必死だ。
童心のピュアさを少し遠い目で眺めながら、俺も思わず心の中で時間加速の魔方陣を描き人知れず心の中で詠唱する。
和やかな童謡が流れ、信号が青に変わる。
「今だ!急げ~!!」
「救助!救助!」
叫び声と共に小学生達がスタートダッシュをかける。
特別な何かが成し得られた訳では無かったが、妄想の中では『俺の魔法は成功した!』と自己満足しながら、ダッシュで中央分離帯に我先にと駆け出す小学生の後を、悠然と歩いて行く。
残念ながら子猫は突進してきた小学生達に本能的に怯えてしまったのか、小学生達を避けるように中央分離帯から此方に猛ダッシュしてきた。
子猫は勢い良く俺の脇を死に物狂いに駆け抜け、道路脇の茂みにガサガサッ!と派手な音を立てながら消える。
前方から子供達の「よかった!」と安堵する声と、「早く渡らないと!」と慌てる声が聞こえた。
横断歩道の途中ですっかり子猫に気を取られていた俺は、視線を向けた先の点滅している青信号に慌てて横断歩道の残りを渡りきろうと前に進み出た。
そして、この交差点は中央分離帯に陸橋を支える柱があり、車道から死角になっている事と、信号が変わる直前にフライングするドライバーが多い地域性を、目前に迫って来る乗用車の車体に、勢い良く撥ね飛ばされながら今更の様に思い出した。
視界が大きく回転して、全てがスローモーションの様に、ゆっくりと映し出される。
痛みを感じる暇もなく、意識が途切れた最後にグシャッ!と、嫌な音がした。
そんないつも通りの日常が戻ってきている、少し疲れを感じさせる様な黄昏が差し迫る学校帰りに、俺はいつも通りの通い慣れた通学路途中の交差点で、茶虎模様の子猫が横断歩道側の中央分離帯で、怯えながら立ち往生しているのを見かけた。
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そんな周りの無関心さを全く意に介さず、小学生の二人組は足踏みしながら「青になれ!」と魔法使いの様に信号機に念を飛ばしたり、少しでも時間を速めようとしているのか「いそげ~!!」と叫びながらカバンをぐるぐる回したり必死だ。
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和やかな童謡が流れ、信号が青に変わる。
「今だ!急げ~!!」
「救助!救助!」
叫び声と共に小学生達がスタートダッシュをかける。
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残念ながら子猫は突進してきた小学生達に本能的に怯えてしまったのか、小学生達を避けるように中央分離帯から此方に猛ダッシュしてきた。
子猫は勢い良く俺の脇を死に物狂いに駆け抜け、道路脇の茂みにガサガサッ!と派手な音を立てながら消える。
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そして、この交差点は中央分離帯に陸橋を支える柱があり、車道から死角になっている事と、信号が変わる直前にフライングするドライバーが多い地域性を、目前に迫って来る乗用車の車体に、勢い良く撥ね飛ばされながら今更の様に思い出した。
視界が大きく回転して、全てがスローモーションの様に、ゆっくりと映し出される。
痛みを感じる暇もなく、意識が途切れた最後にグシャッ!と、嫌な音がした。
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