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108,戦争という名の災厄
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戦争が身近に無かったソウタに取っては、まるで現実感の無い言葉だった。
思わず老人に詰め寄り、尋ねずには要られなかった。
「戦場は何処なんですか?」
老人は僅かに視線を上げるとソウタの質問に淡々と答える。
「ここから西南に、馬で半日の距離の平原じゃろう。負ければ、翌日には此処も無くなる。」
老人は彼方を力無く指差した後、村を振り返り呟く。
「何故安全な場所に避難しないんですか?」
ソウタは当たり前な事を聞いたつもりだった。
「女子供と年寄りしか居ないのに、何処に逃げるというんじゃ?わしらの様な弱者の足では、村からいくらか多少移動して離れたとしても、精々魔物の格好の餌食になるか、はたまた餓えて衰弱して死ぬかしか選択肢がないんじゃよ。それなら・・・生まれ育った場所で骨を埋めたいと願うのが人情じゃろう?」
しかし、返ってきたのは希望の無い者の声だった。
生気の無い濁った目がソウタを見ている。
「・・・・・・。」
ソウタは言葉が出せなかった。
今まで感じなかった負の波動が、ソウタの剥き身な魂に絡み付く。
じわりと侵食する闇が、ソウタの魂にダメージを与えて脱力感を産み出す。
諦めという絶望の鎖が、死の影をこの村に引き寄せているのがソウタの瞳に映る。
このまま放置する事も出来なくて、どうするべきか思い悩む。
考えた末に、「生きる希望」と「困難を乗り越える気持ち」を込めた『奇跡』を発動させることに決めた。
「諦めないで下さい!」
ソウタは老人の手を握り、強い眼差しを向けた。
「待ってて!きっと良い事があるよ!」
笑顔を老人に向けて、手を振ると走り出す。
走りながら、神の奇跡を起こす為の下準備を急いで行う。
小さな村なので、5分も掛からずに準備を終える。
「次は西南だ!」
相乗効果を狙うなら、戦場に出兵させられた村人達が戻って来ることが効果的だと思い、戦場にも奇跡を起こす為に急ぎ戦場に向かう事にした。
戦争が始まっていなければ良いけど・・・と思いながら・・・。
思わず老人に詰め寄り、尋ねずには要られなかった。
「戦場は何処なんですか?」
老人は僅かに視線を上げるとソウタの質問に淡々と答える。
「ここから西南に、馬で半日の距離の平原じゃろう。負ければ、翌日には此処も無くなる。」
老人は彼方を力無く指差した後、村を振り返り呟く。
「何故安全な場所に避難しないんですか?」
ソウタは当たり前な事を聞いたつもりだった。
「女子供と年寄りしか居ないのに、何処に逃げるというんじゃ?わしらの様な弱者の足では、村からいくらか多少移動して離れたとしても、精々魔物の格好の餌食になるか、はたまた餓えて衰弱して死ぬかしか選択肢がないんじゃよ。それなら・・・生まれ育った場所で骨を埋めたいと願うのが人情じゃろう?」
しかし、返ってきたのは希望の無い者の声だった。
生気の無い濁った目がソウタを見ている。
「・・・・・・。」
ソウタは言葉が出せなかった。
今まで感じなかった負の波動が、ソウタの剥き身な魂に絡み付く。
じわりと侵食する闇が、ソウタの魂にダメージを与えて脱力感を産み出す。
諦めという絶望の鎖が、死の影をこの村に引き寄せているのがソウタの瞳に映る。
このまま放置する事も出来なくて、どうするべきか思い悩む。
考えた末に、「生きる希望」と「困難を乗り越える気持ち」を込めた『奇跡』を発動させることに決めた。
「諦めないで下さい!」
ソウタは老人の手を握り、強い眼差しを向けた。
「待ってて!きっと良い事があるよ!」
笑顔を老人に向けて、手を振ると走り出す。
走りながら、神の奇跡を起こす為の下準備を急いで行う。
小さな村なので、5分も掛からずに準備を終える。
「次は西南だ!」
相乗効果を狙うなら、戦場に出兵させられた村人達が戻って来ることが効果的だと思い、戦場にも奇跡を起こす為に急ぎ戦場に向かう事にした。
戦争が始まっていなければ良いけど・・・と思いながら・・・。
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