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107,飛ばされた先

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    光が収まって気付くと、鬱蒼と下草の茂る森の中に独りポツンと立って居た。

「何だかデジャブを感じる様な・・・。ここはどこだろう?」

 直ぐに結界で気配を消して、 周囲を用心深く探りながら、早急に現状把握に努める。

 魔物の気配が幾つか周囲に在るが、それほど強い物は無い。

 これなら結界で十分対応出来るレベルだ。

 取り敢えず、ホッと胸を撫で下ろす。

 時間は有効に使って少しでも状況を有利に持っていかないと、どんな落とし穴があるか分からない。

 ウイングで体を浮かせていきながら木の枝を足場にジャンプしつつ、覆い茂る樹木の上まで飛び上がる。

 360度ぐるりと見渡し、取り敢えず人里の痕跡を探す。

 小規模な農村が数ヵ所見受けられる。

 音をたてずに静かに降り立つと、太陽の位置から方位を探り、どの程度転移したのか昨日作成した地図を鞄から取り出し照らし合わせる。

シャルダンの居た町よりも太陽が右側に見える。

元の世界と同じで太陽は東から西に動くが、転移前と転移後は時間の経過は全くしていないので、先程見えた農村部の並びからすると、どうやらかなり西の国境付近迄飛ばされた様だ。

「取り敢えず、一番近い農村に行ってみるか・・・。」

 森の中に居ても埒が開かないので、情報収集を優先させる。

 幸いにも荷物はコンパクトな新作マジックバックのみだったので、然り気無く身に付けたままにしておいたのは行幸だった。

 嵩張る剣も全て中に収納済みだ。

 丁寧に地図を仕舞い込むと、剣を取り出す。

 農村で何か交渉するにも手ぶらと言う訳にはいかないだろう。

 道中の換金出来る魔物を狩りながら、解体しては鞄の中に放り込む。

農村だから、食肉に向いている魔物や道具作成に向いた素材の取れる魔物が良いだろう。

 戦い慣れてきたのか、初めて戦う魔物でも苦労すること無く狩れた。

 強くなって来ているみたいで、単純に嬉しかった。

 下級魔法のフレアとアクアスプラッシュを使いながら圧縮蒸気を推進力に、足下の悪い森の中を高速で駆け抜ける。

 障害物にぶつからない様に微調整しながら、縫うように駆け抜けるのはかなり爽快だった。

 結構な距離があったが、瞬く間に農村の側まで移動出来た。

 遠巻きに眺めた農村は見るからに活気が無く、人影も疎らだった。

 目に付くのは老人と女性と子供ばかりで、働き盛りの男性の姿が全く見えない。

 狩りにでも行っているのだろうか?

 しかし一人も村に残っていないのは不自然だ。

 そんな違和感に眉をひそめる。

 それでも行かない訳にはいかないので、ゆっくりと歩みを進める。

 簡易的な魔物避けの柵が、明らかに長期間手入れが行き届いて居ないのが見受けられる。

 村の門の簡単な閂を外して潜り抜けて村に入る。

 一番近い畑に居た老人に、ソウタは声を掛けた。

「すみません。旅の者なのですが、道に迷ってしまいまして、こちらは国境付近のダコタ村でしょうか?」

 老人は耕していた畑から視線をソウタに向けると、まじまじと見詰める。

「此処はサゴタ村じゃ。ダコタ村はここから更に西になる。えらく幼いが、お前さん旅の者と言ったな?悪い事は言わん、早目に東にある街道に向かってこの近辺の地から去った方が身の為じゃ。」

 老人は重々しく語ると、また畑を耕し始めた。

「何か有ったのですか?」

 軽い警告にソウタは更に眉をひそめる。

 食い下がってきたソウタに、老人は視線は向けずに畑を耕しながら忌々しげに呟いた。

「次期に此処も戦場に巻き込まれる・・・。」

「え?」

 一瞬、意味が分からず間抜けな声が出た。
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