中二な僕がささやかな祝福で生き延びる方法

うさみん

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99,迫り来る者

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 周囲に忙しなく視線を向けながら、急ぎ足で町中の人混みを縫うように進む。

 幸いにも不審な動きのソウタに、注意を向ける者は居ないようだ。
 これから起こりうるであろう事を考えると、シャルダンにソウタの行動を逐一監視する思惑が無いのは、正直助かる。

 昼過ぎだというのに町の市場は賑わいを見せていて、活気のある掛け声があちらこちらから聞こえてくる。
 市場では一緒に馬車で移動してきた商人達の顔もチラホラ見えたが、ソウタにはそんな事を気にする余裕は無かった。

 距離があるはずなのに、町の外からひしひしと嫌な気配が直にソウタに向けられて伝わってくるのを感じる。

 ようやく町の市場を抜け、人の波を逆走するようにこの町の門に向けて歩きながら、少しずつ気配を殺して行く。

 こんなことは初めてだったので、強い警戒心を緩めずに町の門を抜けて、用心深く気配のする方向に近付いて行く。

 門を抜けると町の周囲には少しだけ拓けた草原があるが、直ぐに林に変わる。

 音すらもさせない様に風魔法のウィングで自身を浮かせて、慎重に先に進む。

 気配を殺しているというのに、向けられてる嫌な気配が薄れる様子は無いので気付かれている可能性が高い。

 以前感じた嫌な気配···間違いなく強敵だ。

 どの様な方法なのかは解らないが、何等かの痕跡を辿って追い掛けて来たのだろう。

 魔力操作で気配を殺しているし、結界魔法で魂の臭いも隠しているのに、ピンポイントでソウタに気配を隠す事無く露骨に伝えて来る相手だなんて、自意識過剰なのか侮っているのかそれとも裏打ちされるがあるのか、どちらにせよ一筋縄ではいかないだろう相手であることだけは確かだった。

 嫌な気配が間近になり、気配の方向に視線を向けてソウタは魂が総毛立つのを感じた。

 視線の先には、本能的な怖れを感じさせる形は人の姿をした異質な者が立っていた。

「ごちそうがわざわざやって来てくれたか!」

 目視出来るだけで、まだかなり距離があるはずなのに、であろう事が何故か解った。

 警戒感から瞬時に離れるための距離を取ろうとして、視線を数秒逸らしただけなのにすぐ目の前まで詰め寄られる。

「待ちわびていたんだ!味見をさせてもらおう!」

 咄嗟に、作ったまま使わずにバックの中に入れていた爆弾を掴み出して押し付け、結界で相手を囲い込む。

ドウンッ!!

 弾けるような爆発音と共に影が揺らめく。

 安堵する暇もなく、後ろに飛び退いたソウタの背後をワーウルフが二匹飛び掛かる。

 追跡していたのはこいつらだったのかと、正体が知れた安心と純粋な危機的状況に混乱する事も出来ずに、剣を後ろに振った。

 高周波ブレイドと化した剣が不意討ちに襲い掛かったワーウルフの一匹を切り裂いて手傷を負わす。

 倒すまでには至らなかった事に歯噛みする。

 3対1は部が悪過ぎる。

 一時も休まずに、使いなれた初級魔法を重ね掛けで使い続けている。
 
 そうでもしないと一瞬で決着が着いてしまうだろう。

 最悪の形で····。


 
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