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98,パフォーマンス
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食事を終えて、シャルダンの魔法の研究室に案内された。
研究室は15畳程の広さの部屋で、壁面は全て収納する為の棚が作り付けられていて、見た事の無い様な色々な素材らしき品が所狭しと置かれている。
そして中央に3台の作業台が設置され、奥の2台の作業台には実験道具の様な器具と魔方陣や文章が書き込まれた何枚もの羊皮紙の書き付けが置かれていて、4人の白いローブ姿の線の細い男たちが熱心に何か作業をしている。
俺は使われていない手前の作業台に据え付けられた椅子に座らされると、少し待つように指示される。
物珍しさにキョロキョロしている間に、シャルダンが一振りの短剣と魔石を持ってくる。
「この短剣に物理耐性強化と中級レベルの火属性の附与を行う。」
耐性系の魔法は無属性の中級以上の魔法だ。
中級魔法を2つ附与とは、附与魔法では上級者向けのレベルで、弟子入りしたての新参者に披露するには破格のパフォーマンスであると言えた。
言い換えれば、シャルダンの期待がそれだけ大きい事を意味していたが、当の本人は気付きもせずに魔法の手法を盗み取る事だけに意識を集中させていた。
シャルダンの魔力が高まり、手にした短剣に徐々に魔力が同調していく。
これが物体の波長を読み取り、魔力を波長に合わせてなぞらえて馴染ませていく工程に当たるらしい。
身体の一部の様に短剣が馴染んだ所で、シャルダンが短剣に魔石を触れさせて、短剣と魔石の魔力の質を少しずつ合わせて調質し同化させてお互いの魔力を馴染ませていく。
すると、魔石が光輝き、瞬く間に短剣に吸収されてしまった。
吸収された魔石は短剣の柄に浮かび上がる。
これが魔力が馴染んで同化して、魔石に魔法附与が可能に成った状態らしい。
シャルダンはそれを見定めると、短剣に触れたまま詠唱を開始する。
「彼の力は降りかかる衝撃を軽減し、汝に立ち塞がるものに火の蛇を放つ···。この刀身を以て彼の力を顕現させよ!」
短剣から火属性の赤い光の輝きが灯る。
詠唱が終ると、シャルダンから魔力が短剣に次々と注ぎ込まれていく。
短剣から徐々に輝きが退いていき、輝きが無くなるとシャルダンは魔力を注ぎ込むのを止める。
「ふうっ。」
シャルダンは肩の力を抜き、ソウタに目を向けた。
シャルダンのその表情にはやり遂げた満足感が込められていた。
「これで、この短剣に魔法附与が完了した状態に成った訳だが、実際に目の当たりにしてどうかな?」
ソウタは笑顔を返すと、満足そうに頷く。
「流石ですね。本にも2つ附与するのは高位の魔道士にしか出来ないと記述がありましたね。とても参考に成りました。」
ソウタの反応はシャルダンが期待したほどでは無かったが、魔法に知識が薄い故だろうと思い直す。
「俺の我が儘を聴いて頂いて、ありがとうございました。これから夕方まで、町中を少し散策したいのですが構いませんか?」
礼を言いながらも少し落ち着かない様子のソウタに、少し違和感を覚えつつも、シャルダンはソウタの申し出を了承する。
「構わないよ。本格的な指導は明日からにしよう。」
シャルダンの言葉にソウタは安堵の表情を浮かべ、シャルダンに礼儀正しく頭を下げる。
「ありがとうございます!それでは、失礼します。」
静かに研究室を後にすると、ソウタは足早に屋敷の外に出ていった。
研究室は15畳程の広さの部屋で、壁面は全て収納する為の棚が作り付けられていて、見た事の無い様な色々な素材らしき品が所狭しと置かれている。
そして中央に3台の作業台が設置され、奥の2台の作業台には実験道具の様な器具と魔方陣や文章が書き込まれた何枚もの羊皮紙の書き付けが置かれていて、4人の白いローブ姿の線の細い男たちが熱心に何か作業をしている。
俺は使われていない手前の作業台に据え付けられた椅子に座らされると、少し待つように指示される。
物珍しさにキョロキョロしている間に、シャルダンが一振りの短剣と魔石を持ってくる。
「この短剣に物理耐性強化と中級レベルの火属性の附与を行う。」
耐性系の魔法は無属性の中級以上の魔法だ。
中級魔法を2つ附与とは、附与魔法では上級者向けのレベルで、弟子入りしたての新参者に披露するには破格のパフォーマンスであると言えた。
言い換えれば、シャルダンの期待がそれだけ大きい事を意味していたが、当の本人は気付きもせずに魔法の手法を盗み取る事だけに意識を集中させていた。
シャルダンの魔力が高まり、手にした短剣に徐々に魔力が同調していく。
これが物体の波長を読み取り、魔力を波長に合わせてなぞらえて馴染ませていく工程に当たるらしい。
身体の一部の様に短剣が馴染んだ所で、シャルダンが短剣に魔石を触れさせて、短剣と魔石の魔力の質を少しずつ合わせて調質し同化させてお互いの魔力を馴染ませていく。
すると、魔石が光輝き、瞬く間に短剣に吸収されてしまった。
吸収された魔石は短剣の柄に浮かび上がる。
これが魔力が馴染んで同化して、魔石に魔法附与が可能に成った状態らしい。
シャルダンはそれを見定めると、短剣に触れたまま詠唱を開始する。
「彼の力は降りかかる衝撃を軽減し、汝に立ち塞がるものに火の蛇を放つ···。この刀身を以て彼の力を顕現させよ!」
短剣から火属性の赤い光の輝きが灯る。
詠唱が終ると、シャルダンから魔力が短剣に次々と注ぎ込まれていく。
短剣から徐々に輝きが退いていき、輝きが無くなるとシャルダンは魔力を注ぎ込むのを止める。
「ふうっ。」
シャルダンは肩の力を抜き、ソウタに目を向けた。
シャルダンのその表情にはやり遂げた満足感が込められていた。
「これで、この短剣に魔法附与が完了した状態に成った訳だが、実際に目の当たりにしてどうかな?」
ソウタは笑顔を返すと、満足そうに頷く。
「流石ですね。本にも2つ附与するのは高位の魔道士にしか出来ないと記述がありましたね。とても参考に成りました。」
ソウタの反応はシャルダンが期待したほどでは無かったが、魔法に知識が薄い故だろうと思い直す。
「俺の我が儘を聴いて頂いて、ありがとうございました。これから夕方まで、町中を少し散策したいのですが構いませんか?」
礼を言いながらも少し落ち着かない様子のソウタに、少し違和感を覚えつつも、シャルダンはソウタの申し出を了承する。
「構わないよ。本格的な指導は明日からにしよう。」
シャルダンの言葉にソウタは安堵の表情を浮かべ、シャルダンに礼儀正しく頭を下げる。
「ありがとうございます!それでは、失礼します。」
静かに研究室を後にすると、ソウタは足早に屋敷の外に出ていった。
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