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試しの祠8
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前方から地面を這う様なカサカサと硬質的な音が響いてくる。
響は途端に真顔になると、正面を見据える。
響達に目掛けて、前方から10m位の巨大なムカデの様なモンスターが2体現れた。
「センチピード!Aランクモンスターで毒霧と火の玉を吐き出す攻撃をしてきます!本来なら強い瘴気が発生する場所にしか居ない個体なのですが···。動きも素早いですから、気を付けて下さい!私は後衛で援護に回ります!」
早口で叫びながら直ぐ様後衛に回り、キルシィが精霊魔法を唱える。
「木々の息吹にたゆとう風よ!我等を不浄から守りたまえ!『風の守り』」
二人の周囲を優しい風が包み込む。
「一時しのぎですが、風の精霊達が毒霧から守ってくれます!」
スキルの恩恵で毒は無効なのだが、それを今更言うのは気が引ける···。
響はキルシィの気持ちだけ、ありがたく受け取っておく事にした。
「キルシィさん、ありがとうございます!こちらから仕掛けますから、キルシィさんはもう少し後方に下がって下さい!」
響は地面を強く蹴り前方に飛び上がると、ミニモップの柄をムカデの眉間に叩き付け、その反動で後方に宙返りをして軽やかに着地する。
その優雅さに似合わず、メキッと嫌な音を立ててムカデの額が大きく陥没していた。
痛みのためか脚を激しく蠢かせて、ムカデが体を無茶苦茶に捻りながらのたうち回る。
その巨体をかわしながら、鎌首をあげて迫ってくるもう1体をモップを高速で振り切る事で上下に切断する。
流石にもとの世界でも体を潰されても切断されても、直ぐに死なないようなムカデのしぶとい生命力は、異世界でも健在のようだ。
キラービーなら即死だった威力の攻撃も致命傷には及ばず、ムカデは悪足掻きの様に暴れながらむやみやたらに毒霧と火の玉を吐き出す。
「ヒビキさん!その場から200セク程後退してください!」
火の玉や毒霧を避けながら響が後退した瞬間に、両サイドの壁から金属の細く長い針が飛び出してムカデを串刺しにする。
キルシィが機転を利かせてトラップを発動させたようだ。
直ぐに長い針が引っ込むとムカデの体が地面に落ちる。
しかし、ムカデは2体ともまだしぶとく闇雲に暴れまわる。
流石に生理的嫌悪も相まって、響に苛立ちが湧く。
短絡的に止めの一撃を入れる為に、無言でムカデの頭を踏み抜く。
グシャリッと嫌な音と共に青い体液が辺りに飛び散る。
絶命したムカデから足を引き抜くと、もう1体には手加減なしで頭部に踵落としを綺麗に決めて、地面にめり込む程に叩き潰し沈黙させた。
強制的に潰した為に辺りには更に青い体液が飛び散り、生臭くアンモニアに近い様な刺激の強い匂いが漂う。
「ヒビキさん···。センチピードの体液が体に付いてしまいましたね···。」
響を見詰めるキルシィの表情が、明らかに絶望したかの様に青ざめている。
「それがどうかしたんですか?」
完全に血の気が引いてしまった表情のキルシィを、不思議に思い首を傾げる。
キルシィは悲痛な声で話す。
「実はですね···、センチピードの体液にはモンスターを引き寄せる強い誘引効果のあるフェロモンが多量に含まれているのです···。このままだとモンスターラッシュが発生してしまい大変危険です。」
取り乱すキルシィに納得する。
確かにAランクモンスターのモンスターラッシュが発生したら死活問題だろう。
もしかすると最悪の場合は響を囮にして見捨てなければならないという苦渋の決断をしなければならないかもしれないという所か···。
だが、心配には及ばない。
「落ち着いて下さい。」
響はキルシィを宥める様に静かに声を掛ける。
「大丈夫ですよ。俺はプロの清掃人ですから、この程度の汚れ位
ならフェロモンも含めて跡も残さず落としきることが出来ます。何も心配は要りません。」
そう言いながら水属性の洗剤のスプレーボトルを取り出す。
センチピードの体液の成分を全て掃除することを強くイメージしながらスプレーを噴霧する。
すると、ミルクを溶かした様な濃厚な霧が出現して、付着したセンチピードの体液全てを包み込む。
直ぐに刺激臭も消え去り、綺麗サッパリ洗浄出来たようだ。
キルシィは唖然として響の行動をながめていたが、はっと我に返る。
「清掃人?もしかして···職業が清掃人なのですか?」
キルシィが少し驚いた様に、ずれた眼鏡を元に戻しながら響をマジマジと見詰める。
「そうですよ?此方に来てからは、専らモンスターを片付ける掃除ばかりになっていますが、御希望が有りましたら何時でも本格的なハウスクリーニング等可能ですよ。初回は割り引きしますし···いかがですか?」
営業トークを交えながら、素早くセンチピードを解体していく。
響は途端に真顔になると、正面を見据える。
響達に目掛けて、前方から10m位の巨大なムカデの様なモンスターが2体現れた。
「センチピード!Aランクモンスターで毒霧と火の玉を吐き出す攻撃をしてきます!本来なら強い瘴気が発生する場所にしか居ない個体なのですが···。動きも素早いですから、気を付けて下さい!私は後衛で援護に回ります!」
早口で叫びながら直ぐ様後衛に回り、キルシィが精霊魔法を唱える。
「木々の息吹にたゆとう風よ!我等を不浄から守りたまえ!『風の守り』」
二人の周囲を優しい風が包み込む。
「一時しのぎですが、風の精霊達が毒霧から守ってくれます!」
スキルの恩恵で毒は無効なのだが、それを今更言うのは気が引ける···。
響はキルシィの気持ちだけ、ありがたく受け取っておく事にした。
「キルシィさん、ありがとうございます!こちらから仕掛けますから、キルシィさんはもう少し後方に下がって下さい!」
響は地面を強く蹴り前方に飛び上がると、ミニモップの柄をムカデの眉間に叩き付け、その反動で後方に宙返りをして軽やかに着地する。
その優雅さに似合わず、メキッと嫌な音を立ててムカデの額が大きく陥没していた。
痛みのためか脚を激しく蠢かせて、ムカデが体を無茶苦茶に捻りながらのたうち回る。
その巨体をかわしながら、鎌首をあげて迫ってくるもう1体をモップを高速で振り切る事で上下に切断する。
流石にもとの世界でも体を潰されても切断されても、直ぐに死なないようなムカデのしぶとい生命力は、異世界でも健在のようだ。
キラービーなら即死だった威力の攻撃も致命傷には及ばず、ムカデは悪足掻きの様に暴れながらむやみやたらに毒霧と火の玉を吐き出す。
「ヒビキさん!その場から200セク程後退してください!」
火の玉や毒霧を避けながら響が後退した瞬間に、両サイドの壁から金属の細く長い針が飛び出してムカデを串刺しにする。
キルシィが機転を利かせてトラップを発動させたようだ。
直ぐに長い針が引っ込むとムカデの体が地面に落ちる。
しかし、ムカデは2体ともまだしぶとく闇雲に暴れまわる。
流石に生理的嫌悪も相まって、響に苛立ちが湧く。
短絡的に止めの一撃を入れる為に、無言でムカデの頭を踏み抜く。
グシャリッと嫌な音と共に青い体液が辺りに飛び散る。
絶命したムカデから足を引き抜くと、もう1体には手加減なしで頭部に踵落としを綺麗に決めて、地面にめり込む程に叩き潰し沈黙させた。
強制的に潰した為に辺りには更に青い体液が飛び散り、生臭くアンモニアに近い様な刺激の強い匂いが漂う。
「ヒビキさん···。センチピードの体液が体に付いてしまいましたね···。」
響を見詰めるキルシィの表情が、明らかに絶望したかの様に青ざめている。
「それがどうかしたんですか?」
完全に血の気が引いてしまった表情のキルシィを、不思議に思い首を傾げる。
キルシィは悲痛な声で話す。
「実はですね···、センチピードの体液にはモンスターを引き寄せる強い誘引効果のあるフェロモンが多量に含まれているのです···。このままだとモンスターラッシュが発生してしまい大変危険です。」
取り乱すキルシィに納得する。
確かにAランクモンスターのモンスターラッシュが発生したら死活問題だろう。
もしかすると最悪の場合は響を囮にして見捨てなければならないという苦渋の決断をしなければならないかもしれないという所か···。
だが、心配には及ばない。
「落ち着いて下さい。」
響はキルシィを宥める様に静かに声を掛ける。
「大丈夫ですよ。俺はプロの清掃人ですから、この程度の汚れ位
ならフェロモンも含めて跡も残さず落としきることが出来ます。何も心配は要りません。」
そう言いながら水属性の洗剤のスプレーボトルを取り出す。
センチピードの体液の成分を全て掃除することを強くイメージしながらスプレーを噴霧する。
すると、ミルクを溶かした様な濃厚な霧が出現して、付着したセンチピードの体液全てを包み込む。
直ぐに刺激臭も消え去り、綺麗サッパリ洗浄出来たようだ。
キルシィは唖然として響の行動をながめていたが、はっと我に返る。
「清掃人?もしかして···職業が清掃人なのですか?」
キルシィが少し驚いた様に、ずれた眼鏡を元に戻しながら響をマジマジと見詰める。
「そうですよ?此方に来てからは、専らモンスターを片付ける掃除ばかりになっていますが、御希望が有りましたら何時でも本格的なハウスクリーニング等可能ですよ。初回は割り引きしますし···いかがですか?」
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