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まずは引っ越し1

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 ハインツの後を追って、着いたのは豪華なお屋敷だった。


「此処は貴族アシュリ男爵のお屋敷だ!貴族相手なので、失礼の無いようにな!」


 ハインツは響に、威圧的に言いながら門戸を叩く。


「はい!分かりました!」


 響は腕を捲りながら爽やかな笑顔で答える。

 直ぐに屋敷の執事が現れ、響を案内する。


「依頼内容は依頼書の通り、家具の移動でございます。只し、依頼が完了しない場合は違約金が発生いたしますので、御了承お願い致します。」


 冒険者相手であるのに執事はやけに丁寧に言った。


「違約金ですか?ギルドで貼り出してあった依頼書には、その事の説明の記載は無かったのですが······。」


 響は無一文だ。

 少し不安になり聞き返した。


「違約金は金貨10枚でございます。くれぐれも依頼を失敗なされぬよう、お気をつけ下さい。」


 違約金の相場は依頼料の1割程度なのだか、響が気付く筈もない。

 失敗はしない様にしないといけないと、響は気を引き締める。

 執事はとある部屋に案内すると、笑みを浮かべながら言った。


「此方の家具を、隣のお屋敷の二階の奥のお部屋迄、お願い致します。」


 その部屋には、豪華な家具が10点ほど、並んでいる。
 
 話掛けながら、執事は内心ほくそ笑む。

 この部屋の家具は小さなものでも200000ナム(200kg程度)はある。

 特に優男風の今日の冒険者一人では決して運べない。

 報酬が低価格なので依頼を受けてくるのは一人となり、それも合間って、今までこの依頼を果たせたものは一人も居ないのだ。

 つまり、違約金をせしめるための詐欺なのである。 

 アシュリ男爵は小狡い男で、ギルドにこういった依頼を出しては、小金(貴族にとって)を稼いでいたのてある。

 
「隣のお屋敷の二階の奥のお部屋迄、案内していただけますか?」


 これなら出来ると、初仕事に気負う事もなく、響はにこやかに執事に伝える。

 執事は足早に歩きながら敷地内の一番隅の屋敷の二階まで、響を案内した。


「こちらです。北側の壁面に、家具を同じように配置して頂けますでしょうか。」 


 距離は直線にして、30000セク(300m)程度であろうか、しかし、200kg以上の家具を一人で運ぶのは通常不可能である。

 無論、響は家具の重さは知らない。


『以前の引っ越しで、100kg 位迄なら一人で運べたから問題は無いでしょ·······。』


 100kg を一人で運ぶのも、並みの筋力では無いのだが、響は優男風に見えても細マッチョで、同年代では負け無しだったのだ。 
 
 それでも、貴族所有の家具という事で、細心の注意を払いながら、200kg 以上あるチェストに手を掛けると少し持ち上げて驚愕で顔を歪める。
 

 



 
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