御呼びとあらば即参上!モンスタースイーパー響

突然の不審者

　エリネールの町の路地に、突如ブラックブラッドスライムが現れた。

　ブラックブラッドスライムは、強い強酸で触れる物を溶かして取り込む、Aランク指定のモンスターだ。

　発見した町人達は、恐怖で足がすくんでしまう。


「何でこんな町中にあんな奴が·····！？」


　じわじわとブラックブラッドスライムが、移動を開始する。

　もちろんターゲットは、足がすくんでしまっている町人達だ。


「イヤー！！」
　

「助けてー！！」


　恐怖で動けない町人達が、口々に悲鳴や叫び声を上げる。

　Aランク指定のモンスターは、高ランクの冒険者や上級騎士で無ければ、倒す事が出来ない。

　しかし、主要都市部から離れた田舎町では、そんな強者が居る筈もない。

　一番ブラックブラッドスライムの傍に居た、剣士風の小太りな男が、断末魔の様な悲壮な声で叫んだ。


「誰か助けてくれ！俺の手には負えない！！誰かこいつを片付けてくれ！」


　足がガタガタ震え１ミリも動く事が出来ない。

　もう駄目だと、誰もが絶望を感じて居た。

　その人だかりを、誰かが軽い足取りで、スタスタと掻き分け歩いて来る。


「はい！ごめんなさいよ！」


　助けか！？と誰もが希望を抱き、その人物を見た瞬間絶句した。

　上から下まで白い装束に身を包み、手には長柄のホウキ？の様な物を持った不審者な人物が、ブラックブラッドスライムに近付いて行ったのだ。

　体格からして、男性であろうその人物は、腰から何やら不思議な道具を取り出すと、ブラックブラッドスライムに向ける。

　霧の様な物がブラックブラッドスライムに掛けられていき、ジュワワワワワ～！と、激しく泡立つ。

　男は、長柄のホウキ？をブラックブラッドスライムにに向けて押し付けると、ゴシゴシと擦り始めた。


　グギャギャギャギャギャァー！！


　恐ろしい断末魔の様な声がブラックブラッドスライムがら発せられた。

　みるみると路地に居たスライムが、その体積を減らしながら消滅していく。

　最後の一染みすら擦り取り、消滅させてしまうと、男は満足そうに一息付いた。


「片付け終わりましたよ！掃除なら、とどろきＳＣ(スイーパーカンパニー)にお任せ下さい！初回は安く割引出来ますから、何時でも声を掛けて下さいね！」


　口を覆う布をずらしながら、男はニッコリと微笑み、道具を片付けると、また、スタスタと歩いて行ってしまった。

　後には、呆然とする町人達が取り残されて居た。