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来世もあなたとともに 〜太陽神に仕える巫女と訳あり公爵令息は禁じられた恋をする〜
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「オキャクサン、アレ、ヘリオホルスヨ」
よく日に焼けた肌をした中年の男性が、遙か先を指差した。どこまでも続く砂漠に突如出現したオアシスのように、ヘリオホルスもただそこにあった。
蜃気楼でなければいいのだが。隊商にはどうにも不釣り合いな身なりをした青年は、額の汗を手で拭う。ヘリオホルスは砂漠に囲まれた、太陽神を信仰する小国だ。青年は男性に銀貨を数枚、支払うと隊商を後にした。
ヘリオホルスへ辿り着くにはラクダに揺られ、寒暖差の激しい砂漠を何日もかけて横断しなければならない。その為、他国の人間が観光のために訪れることは殆どなかった。
青年は宿屋を探し、部屋を借りた。まず狭い浴室で体を丹念に洗い、それから簡素なベッドで横になる。
(なんて心地良いんだろう……)
お世辞にも清潔とは言い難い部屋であったが、青年にとってこんなにも開放的な気持ちになるのは初めてだった。髪の毛も乾かさずに青年は微睡む。慣れない長旅で疲れたのだろう、そのまま深い眠りについた。
♢♢♢
「ん……」
目を覚ますと、窓から朝日が差し込んでいた。昨日、部屋を借りたのが夕方だったので、半日近くも寝てしまっていたらしい。青年はベッドから起き上がると、大きく伸びをした。
それから洗面所に行き、顔を洗う。ひび割れた鏡に映る幾人もの自分が、こちらを見つめ返している。金糸のように艶やかな黄金色の髪、紺碧の海を閉じ込めたような青い瞳。
ローガストン公爵家。王家の遠縁にあたる、由緒正しき血筋。端正な顔立ちと家柄のため、社交界で青年は貴族令嬢たちから持て囃された。青年は嫡男だったにも関わらず、まだ婚約者がいなかったためだ。
貴族令嬢たちがあの手この手で青年を虜にしようとしたが、青年は誰にも関心を示さなかった。もしかすると青年は男色なのではないか、というよからぬ噂が立つのも致し方ない。
青年の両親は青年に対してあまり強く言えずにいた。それには理由があったのだが、話したところで互いの古傷を抉るだけだと分かっていたので両親はどうにもできなかった。
何となくこの日が来るのを、青年も両親も本能的に悟っていたのかもしれない。青年は明朝にローガストン公爵家を出て行った。それがつい数日前のこと。今、青年がヘリオホルスにいるなど誰も考えていないだろう。
(お腹が空いたな……)
青年は着替えを済ませると、太陽の光が燦々と降り注ぐ街へと繰り出した。
♢♢♢
ヘリオホルスの街は活気と熱気に満ちていた。市場で働く人々も行き交う人々も皆、笑顔だ。
「オニイサン、コレ、ドウヨ?」
カタコトで話しかけてきたのは、布製品を扱う店主だった。目にも鮮やかな柄の絨毯やストール、衣料など様々な品物が所狭しと並べられている。青年は少し迷ってから、街の人々が着ているものと同じ服を購入した。一旦、宿屋に戻り、買った服に着替えてから再度、街へと赴く。
近場にあった屋台で、パンに挟まれたコロッケを食べた。素材はヒヨコ豆だろうか。スパイスが効いていて美味しい。新鮮な野菜もたっぷりトッピングされていたので、ひとつで充分お腹が満たされた。
青年は当てもなくぶらぶらと街を歩く。池では睡蓮の花が咲いていた。神秘的で爽やかな香りに青年は束の間、安らぐ。どうやら国花のようで、大切に扱われているのが窺えた。
街の中心部には大きな川が流れていて、人々は沐浴をしたり洗濯をしていた。思いの外、川の水は綺麗で青年は川辺に降り立つ。午後の日差しを受けて、水面がキラキラと輝いていた。
試しに青年は右足をつけた。ちょうど良い水温だった。せっかくだし泳いでみたくなった青年は、服と下着を脱ぐと川へと入る。成人した男性が公衆の面前で裸になっても、誰も気にしなかった。かつて住んでいた国ではあり得ないことだ。
流されないよう注意しながら泳いでいると、不意に一人の少女が沐浴している場面に出くわしてしまう。
「あっ、すみません!」
しかし少女は顔色ひとつ変えず、花のように微笑んだままだった。褐色の肌、烏のように艶やかで長い黒髪、柘榴石のように煌めく瞳、豊かな乳房。青年は思わず少女の裸体に魅入ってしまう。
それは決して劣情からではなく、少女があまりにも神々しく美しかったからだ。
「随分、遠いところから来られたのですね」
少女の言葉に青年はドキリとした。青年は少女の顔を見るが、少女の視線は心なしか定まっていない。
「どうぞごゆっくりお過ごしください。それでは」
少女はしなやかな動作で川から上がると布で体を拭き、服を着た。街の娘にしてはやけに豪奢な服装だった。ふわり、と睡蓮の良い香りがした。青年はしばらくの間、去りゆく少女の姿を見続けた。
♢♢♢
日が暮れ、仕事を終えた人々で街は賑わっていた。あちこちで乾杯の声が上がり、顔を赤くした男性や女性が陽気に歌ったり踊ったりしている。
青年はヘリオホルス産の赤ワインを一杯だけ飲んだ。元々、あまり酒には強くない。夕食も一緒に済ませ、宿屋に戻る。
「ふぅ……」
まだ昼間に出会った少女のことが、頭から離れずにいた。今までの女性とは絶対的に違う何かを感じたのだ。それはどこか懐かしい気持ちと、狂おしいほどに愛しい感情。
何故、初対面の彼女にそのような思いを抱くのかと青年は訝しむ。
きっと一日中、歩き回ったから疲れているのだ。青年はシャワーを浴びると、髪の毛も乾かさずにベッドで横になる。
――久々にあの子の夢を見た。
「ほら、アリス、たかいたかーい!」
僕は妹のアリスのことが大好きだった。ぷくぷくとした手足、今にも落ちそうなほっぺた。お父様の真似をして、僕は初めて高い高いをする。
「たかいたかーい……あっ!」
次の瞬間、僕は姿勢を崩してアリスを抱いたまま転んでしまう。ゴツンッ、と床に何かがぶつかる鈍い音がした。
「……アリス?」
起き上がるとアリスの頭部から、真っ赤な血が流れ出ていた。僕はパニックになり、アリスを抱いたまま邸の中を走り回った。
「坊ちゃま、どうされましたか? きゃああっ!」
最初に僕を見つけた使用人のマリーが悲鳴を上げる。それを聞きつけた他の使用人や執事がすぐに医者を呼んだが、アリスは助からなかった。
「ごめんなさい、おとうさま、おかあさま……」
両親は僕を叱ることもせず、嗚咽を漏らす。アリスの棺はとても小さかった。棺を埋葬する日は冷たい雨が降っていた。
あんなに可愛かったアリスはもう、この世にいない。僕が転んだせいで死んでしまったんだ。まだ生まれて、たった半年しか経っていなかったのに。
僕が悪いんだ。僕のせいでアリスは――
「アリス……アリス……アリスッ!!」
青年はそこで目を覚ました。頬を涙が伝っているのに気づき、瞬きをする。窓から控え目に差し込む月の光は、どこか他人行儀だった。青年はベッドから起き上がると、宿屋の外に出た。夜風に当たって気分を落ち着かせたかったのだ。
昼間とは打って変わって静かなヘリオホルスの街は、非現実的で幻想的な世界に思えた。本当にここは現実なのだろうか? 自分はまだ夢の中にいるのではないだろうか?
「こんばんは」
出し抜けに声を掛けられ、青年は驚きながら振り返る。そこにいたのは昼間、川で出会ったあの美しい少女だった。ふわり、と睡蓮の良い香りがした。
「君は……どうしてここに?」
「猫を追いかけて来たんです」
「猫を?」
「そうです。あっ、リリー」
夜闇に紛れてよく分からなかったが、ギラリと双眸が光るのが見えた。黒猫はニャア、と鳴くと少女の足元へ擦り寄る。
「だめよ、勝手に神殿を抜け出しちゃ」
「あの、君はもしかして――」
「はい、私は太陽神にお仕えする巫女です」
「巫女……」
青年の住んでいた国では、聖女と呼ばれる存在に近しい。だからあんなにも神々しかったのだ、と青年は納得した。少女は尚もにこやかに微笑んでいる。しかし青年を見つめる瞳は、やはり定まっていない。
「お察しの通り、私は全盲です」
「……」
青年はどう返していいのか分からず、押し黙る。
「太陽神に仕える者はその眩しさに、視力を失います。ですが心の目で物事を見るので、何ら支障はありません」
「そんな……!」
あまりにも酷いと感じ、青年は憤る。誰に対して? そう、太陽神に対してだ。
「立ち話もなんですから、よろしければ神殿にいらっしゃいませんか? 今の時間は太陽神も姿を隠しておられますので」
「いいのかな? 僕のような部外者が神聖な場所に立ち入っても」
「大丈夫ですわ。それに貴方様は部外者ではありませんから」
「えっ……?」
少女は意味ありげに微笑むと、黒猫を抱きながら歩き始めた。青年は好奇心を抑えることができず、少女のあとをついて行く。ヘリオホルスの街は石造りだ。当然、道も石で舗装されている。寝静まった静かな街中を、少女と青年の足音が鳴り渡る。
「もう少ししたら神殿です」
どれくらい歩いたのだろうか。知らないうちに、眼前に砂漠が広がる場所まで来ていた。街中よりもかなり肌寒く、青年は二の腕をさすった。
「こちらが入り口になります。私について来てください」
黒猫はヒョイっと少女から飛び降りた。気まぐれに青年の方を振り向くと、さっさと歩いて行ってしまった。
「すごい……」
神殿の中には見たこともない太さの柱が、何本も立っていた。松明に照らされ、二人と一匹の影が揺らぐ。途方もない長さの廊下を歩き続け、階段を上がり、ようやく神殿の中枢部へ到着する。そこには独創的な壁画と、古代文字らしきものが一面に描かれていた。
「どうぞお座りください」
少女はどこからかコップに水を汲み、青年に差し出した。青年が床へ腰を下ろすと、向かい合うように少女も座する。
「自己紹介が遅れました。私はドゥーニアと申します」
「僕は……レオン・ローガストン」
「レオン……勇敢なる獅子の御方」
「勇敢だなんて、そんなことはありません」
青年――レオンは自身を恥じていた。五歳の時に、妹のアリスを不注意で死なせてしまったことを。以来、彼は心を閉ざし、女性との関係を一切持とうとしなかった。
頑なに婚約しなかったのも、結婚して子どもが出来るのが怖かったからだ。そもそも自分が親になる資格などないと自覚していた。
「レオン様は妹さんのことを大切に想っていらっしゃったのですね」
「なぜ、そのことを……?」
ドゥーニアは驚愕するレオンの手にそっと触れた。
「私はアリスの生まれ変わりです」
「っ!!」
「昨日、レオン様がヘリオホルスへやって来るのも、私にはずっと前から分かっていました」
「……嘘だ、そんなの嘘だっ!」
レオンはドゥーニアの柔らかな手を振り払う。
「君は太陽神に仕える巫女だから不思議な力を持っているんだろう! だから僕の過去を知ることができた! でも妹の……アリスの生まれ変わりだなんて笑えない冗談はよしてくれ……」
レオンの頬をまたしても涙が伝う。黒猫は二人の様子をじっと見守っていた。
「レオン様、私は神に誓って嘘などついておりません。前世の記憶は生後半年までですが、レオン様が私のことを愛してくれていたことは今でもよく覚えています」
「…………」
「私は高い高いをされるのが大好きでした。レオン様が初めてしてくださったあの日、天から声が聞こえたのです。太陽神に仕える時が来た、と」
ドゥーニアは、レオンの涙を人差し指で優しく拭った。
「だから、あの日の出来事は不注意による事故などではなく、神の思し召しだったのです。どうか私の話を信じてください」
「…………」
ぷくぷくとした手足、今にも落ちそうなほっぺた。レオンはふと思い出す。アリスの青い両目尻の下に、小さなほくろが一つずつあったことを。
今、目の前に座っているドゥーニアも、まったく同じ場所にほくろがあった。その瞬間、ドゥーニアがアリスの生まれ変わりだと、レオンには確かに信じられたのだった。
「ああ、僕の可愛いアリス……ッ!!」
レオンはドゥーニアを強く抱きしめ、幼子のように泣きじゃくった。ドゥーニアもレオンの背中に腕を回し、彼が落ち着くまで背中をさすり続けた。ようやく泣き止むと、レオンは申し訳なさそうに目を逸らす。
「……すまない、大人げない真似をして」
「いえ、こうしてまた貴方様にお会いできて嬉しいですわ」
「アリス……いや、ドゥーニア、僕も君に会えて嬉しいよ」
「レオン様、これからお話することをよくお聞きになってください」
レオンはドゥーニアを見つめる。嫌な予感がしたのだ。
「ヘリオホルスは間もなく砂嵐によって壊滅的な被害を受けるでしょう。その前にどうかこの街を出て行ってください」
「砂嵐……?」
「はい、百年に一度訪れる大型の砂嵐です」
「た、大変じゃないか! 早く街の人々に知らせなくては――」
「いいえ、それはなりません」
「どうして!?」
「太陽神の考えに背くからです」
ドゥーニアの返答にレオンは息を呑む。彼女はあくまで神の意志に寄り添うつもりなのだ。
「だが、それではたくさんの人々が亡くなってしまう!」
「太陽神は人間を愛していますが、同時に憎んでもいます。彼らが神の助けを得ることなく、自力で苦難を乗り越えることを望んでいらっしゃるのです」
「君は……ドゥーニアはどうなるんだい?」
「ヘリオホルスとともに、でございます」
ドゥーニアは朗らかに微笑んでみせた。そこには微塵も不安を感じさせない。レオンは両手を強く握りしめる。
「そんなの……そんなの絶対に間違っている! 砂嵐が来ることを人々に知らせるべきだし、君も早くここから避難するんだ!」
「……太陽神はお許しにならないでしょう」
この時、初めてドゥーニアは寂しそうな表情をしたが、すぐに笑顔を浮かべた。
「どうかお元気で、レオン様――ッ!!」
レオンはドゥーニアを抱き寄せると、荒々しく唇を奪った。ドゥーニアは彼から逃れようとするが到底、力では敵わない。
「愛している、ドゥーニア」
「……知っています。レオン様と私が禁じられた恋に落ちることも」
ドゥーニアはアリスの生まれ変わりだが、今はもうアリスではない。一人の乙女なのだ。うら若き男女が惹かれ合うのは、世の理だろう。
ましてや二人は、長い時をともに過ごしてきた。ある時は親子として、またある時は親友として。今世では兄妹として、恋人として巡り会う運命だったに過ぎない。
「僕はもう二度と君を失いたくないんだ! たとえ神に背くことになろうと構わない」
「ああ、神よ、どうかお許しください……私もレオン様をずっと恋い慕っておりました」
「ドゥーニア、僕と一緒に来てくれるね?」
「……はい」
二人は手を取り合い、神殿を抜け出した。黒猫はちゃっかりレオンの肩に乗っている。夜明けと同時にドゥーニアは街の人々を広場に集め、直に砂嵐がやって来ることを告げた。人々は大慌てで逃げる準備に取り掛かる。
「命が惜しけりゃ金目の物は置いていくんだ!」
「年寄りと女子どもを優先してラクダに乗せろ!」
こうして小国ヘリオホルスが怒り狂った砂嵐に飲み込まれる前に、人々と動物たちは安全な隣国へと逃げたのだった。ヘリオホルスはすっかり砂に埋まってしまったが、逞しい彼らならば神の助けを借りずとも、復興するのにそれほど時間は掛からないだろう。
レオンとドゥーニアは皆が無事であったことにほっと胸を撫で下ろし、笑顔で街の人々に別れを告げた。
♢♢♢
「さて、これからどこへ行こうか」
「レオン様となら私、どこへ行っても幸せですわ」
ラクダに揺られ、レオンとドゥーニアとリリーは広大な砂漠を進む。しばらくすると小さなオアシスが見えてきた。
「あそこで休憩しよう」
二頭のラクダに水を飲ませ、自分たちも水分補給をしながら会話をする。ドゥーニアが言うには、最初こそ太陽神は彼女の行いに対して怒りを爆発させたが、すぐに干渉してこなくなったらしい。
「太陽神はこうなることを知っていらっしゃったのでしょうね」
「それは君もかい?」
「いいえ、私には分からなかった。何もかもが予測されていた未来とはまるで違っていたのです」
二人は暫し、キラキラと光る水面を見つめていた。
「その、今さらだけど、巫女の君がいなくなってヘリオホルスは大丈夫だろうか?」
「ええ、私を解放されたということはもう巫女を必要となさっていないのでしょう。きっと、これからは神でなく人が国を治める時代になってゆくのですわ」
ドゥーニアは長く美しい黒髪を風に靡かせ、空があるべき場所を見上げる。彼女にとって、この世界はどんな色をしているのだろうか? もし単調な色だけならば、自分が色彩を豊かにしようとレオンは強く決意する。
「ねぇ、レオン様。私、来世は鳥になりたいんです」
二人の頭上では二羽のヒタキが飛んでいた。仲睦まじく大空を羽ばたく姿に、レオンも心を惹かれる。
「うん、僕もそう思うよ」
二人が微笑み合うとリリーはニャア、と鳴いた。
これからどんなに辛い出来事があろうとも、二人と一匹ならば乗り越えられるだろう。一度、ドゥーニアを連れて故郷へ戻ってみようか。両親に心配をかけてしまったことを謝罪するべきであったし、愛するドゥーニアを両親に紹介したかった。
レオンは鞄からデーツの入った紙袋を取り出し、ドゥーニアに手渡した。デーツは彼女の大好物なのだ。元々ドライフルーツが苦手なレオンだったがコク深く、甘みのある味わいも案外いいものだと考えを改めている。
そして今日もドゥーニアから睡蓮の良い香りがして、彼は目を細めるのだった。
END
よく日に焼けた肌をした中年の男性が、遙か先を指差した。どこまでも続く砂漠に突如出現したオアシスのように、ヘリオホルスもただそこにあった。
蜃気楼でなければいいのだが。隊商にはどうにも不釣り合いな身なりをした青年は、額の汗を手で拭う。ヘリオホルスは砂漠に囲まれた、太陽神を信仰する小国だ。青年は男性に銀貨を数枚、支払うと隊商を後にした。
ヘリオホルスへ辿り着くにはラクダに揺られ、寒暖差の激しい砂漠を何日もかけて横断しなければならない。その為、他国の人間が観光のために訪れることは殆どなかった。
青年は宿屋を探し、部屋を借りた。まず狭い浴室で体を丹念に洗い、それから簡素なベッドで横になる。
(なんて心地良いんだろう……)
お世辞にも清潔とは言い難い部屋であったが、青年にとってこんなにも開放的な気持ちになるのは初めてだった。髪の毛も乾かさずに青年は微睡む。慣れない長旅で疲れたのだろう、そのまま深い眠りについた。
♢♢♢
「ん……」
目を覚ますと、窓から朝日が差し込んでいた。昨日、部屋を借りたのが夕方だったので、半日近くも寝てしまっていたらしい。青年はベッドから起き上がると、大きく伸びをした。
それから洗面所に行き、顔を洗う。ひび割れた鏡に映る幾人もの自分が、こちらを見つめ返している。金糸のように艶やかな黄金色の髪、紺碧の海を閉じ込めたような青い瞳。
ローガストン公爵家。王家の遠縁にあたる、由緒正しき血筋。端正な顔立ちと家柄のため、社交界で青年は貴族令嬢たちから持て囃された。青年は嫡男だったにも関わらず、まだ婚約者がいなかったためだ。
貴族令嬢たちがあの手この手で青年を虜にしようとしたが、青年は誰にも関心を示さなかった。もしかすると青年は男色なのではないか、というよからぬ噂が立つのも致し方ない。
青年の両親は青年に対してあまり強く言えずにいた。それには理由があったのだが、話したところで互いの古傷を抉るだけだと分かっていたので両親はどうにもできなかった。
何となくこの日が来るのを、青年も両親も本能的に悟っていたのかもしれない。青年は明朝にローガストン公爵家を出て行った。それがつい数日前のこと。今、青年がヘリオホルスにいるなど誰も考えていないだろう。
(お腹が空いたな……)
青年は着替えを済ませると、太陽の光が燦々と降り注ぐ街へと繰り出した。
♢♢♢
ヘリオホルスの街は活気と熱気に満ちていた。市場で働く人々も行き交う人々も皆、笑顔だ。
「オニイサン、コレ、ドウヨ?」
カタコトで話しかけてきたのは、布製品を扱う店主だった。目にも鮮やかな柄の絨毯やストール、衣料など様々な品物が所狭しと並べられている。青年は少し迷ってから、街の人々が着ているものと同じ服を購入した。一旦、宿屋に戻り、買った服に着替えてから再度、街へと赴く。
近場にあった屋台で、パンに挟まれたコロッケを食べた。素材はヒヨコ豆だろうか。スパイスが効いていて美味しい。新鮮な野菜もたっぷりトッピングされていたので、ひとつで充分お腹が満たされた。
青年は当てもなくぶらぶらと街を歩く。池では睡蓮の花が咲いていた。神秘的で爽やかな香りに青年は束の間、安らぐ。どうやら国花のようで、大切に扱われているのが窺えた。
街の中心部には大きな川が流れていて、人々は沐浴をしたり洗濯をしていた。思いの外、川の水は綺麗で青年は川辺に降り立つ。午後の日差しを受けて、水面がキラキラと輝いていた。
試しに青年は右足をつけた。ちょうど良い水温だった。せっかくだし泳いでみたくなった青年は、服と下着を脱ぐと川へと入る。成人した男性が公衆の面前で裸になっても、誰も気にしなかった。かつて住んでいた国ではあり得ないことだ。
流されないよう注意しながら泳いでいると、不意に一人の少女が沐浴している場面に出くわしてしまう。
「あっ、すみません!」
しかし少女は顔色ひとつ変えず、花のように微笑んだままだった。褐色の肌、烏のように艶やかで長い黒髪、柘榴石のように煌めく瞳、豊かな乳房。青年は思わず少女の裸体に魅入ってしまう。
それは決して劣情からではなく、少女があまりにも神々しく美しかったからだ。
「随分、遠いところから来られたのですね」
少女の言葉に青年はドキリとした。青年は少女の顔を見るが、少女の視線は心なしか定まっていない。
「どうぞごゆっくりお過ごしください。それでは」
少女はしなやかな動作で川から上がると布で体を拭き、服を着た。街の娘にしてはやけに豪奢な服装だった。ふわり、と睡蓮の良い香りがした。青年はしばらくの間、去りゆく少女の姿を見続けた。
♢♢♢
日が暮れ、仕事を終えた人々で街は賑わっていた。あちこちで乾杯の声が上がり、顔を赤くした男性や女性が陽気に歌ったり踊ったりしている。
青年はヘリオホルス産の赤ワインを一杯だけ飲んだ。元々、あまり酒には強くない。夕食も一緒に済ませ、宿屋に戻る。
「ふぅ……」
まだ昼間に出会った少女のことが、頭から離れずにいた。今までの女性とは絶対的に違う何かを感じたのだ。それはどこか懐かしい気持ちと、狂おしいほどに愛しい感情。
何故、初対面の彼女にそのような思いを抱くのかと青年は訝しむ。
きっと一日中、歩き回ったから疲れているのだ。青年はシャワーを浴びると、髪の毛も乾かさずにベッドで横になる。
――久々にあの子の夢を見た。
「ほら、アリス、たかいたかーい!」
僕は妹のアリスのことが大好きだった。ぷくぷくとした手足、今にも落ちそうなほっぺた。お父様の真似をして、僕は初めて高い高いをする。
「たかいたかーい……あっ!」
次の瞬間、僕は姿勢を崩してアリスを抱いたまま転んでしまう。ゴツンッ、と床に何かがぶつかる鈍い音がした。
「……アリス?」
起き上がるとアリスの頭部から、真っ赤な血が流れ出ていた。僕はパニックになり、アリスを抱いたまま邸の中を走り回った。
「坊ちゃま、どうされましたか? きゃああっ!」
最初に僕を見つけた使用人のマリーが悲鳴を上げる。それを聞きつけた他の使用人や執事がすぐに医者を呼んだが、アリスは助からなかった。
「ごめんなさい、おとうさま、おかあさま……」
両親は僕を叱ることもせず、嗚咽を漏らす。アリスの棺はとても小さかった。棺を埋葬する日は冷たい雨が降っていた。
あんなに可愛かったアリスはもう、この世にいない。僕が転んだせいで死んでしまったんだ。まだ生まれて、たった半年しか経っていなかったのに。
僕が悪いんだ。僕のせいでアリスは――
「アリス……アリス……アリスッ!!」
青年はそこで目を覚ました。頬を涙が伝っているのに気づき、瞬きをする。窓から控え目に差し込む月の光は、どこか他人行儀だった。青年はベッドから起き上がると、宿屋の外に出た。夜風に当たって気分を落ち着かせたかったのだ。
昼間とは打って変わって静かなヘリオホルスの街は、非現実的で幻想的な世界に思えた。本当にここは現実なのだろうか? 自分はまだ夢の中にいるのではないだろうか?
「こんばんは」
出し抜けに声を掛けられ、青年は驚きながら振り返る。そこにいたのは昼間、川で出会ったあの美しい少女だった。ふわり、と睡蓮の良い香りがした。
「君は……どうしてここに?」
「猫を追いかけて来たんです」
「猫を?」
「そうです。あっ、リリー」
夜闇に紛れてよく分からなかったが、ギラリと双眸が光るのが見えた。黒猫はニャア、と鳴くと少女の足元へ擦り寄る。
「だめよ、勝手に神殿を抜け出しちゃ」
「あの、君はもしかして――」
「はい、私は太陽神にお仕えする巫女です」
「巫女……」
青年の住んでいた国では、聖女と呼ばれる存在に近しい。だからあんなにも神々しかったのだ、と青年は納得した。少女は尚もにこやかに微笑んでいる。しかし青年を見つめる瞳は、やはり定まっていない。
「お察しの通り、私は全盲です」
「……」
青年はどう返していいのか分からず、押し黙る。
「太陽神に仕える者はその眩しさに、視力を失います。ですが心の目で物事を見るので、何ら支障はありません」
「そんな……!」
あまりにも酷いと感じ、青年は憤る。誰に対して? そう、太陽神に対してだ。
「立ち話もなんですから、よろしければ神殿にいらっしゃいませんか? 今の時間は太陽神も姿を隠しておられますので」
「いいのかな? 僕のような部外者が神聖な場所に立ち入っても」
「大丈夫ですわ。それに貴方様は部外者ではありませんから」
「えっ……?」
少女は意味ありげに微笑むと、黒猫を抱きながら歩き始めた。青年は好奇心を抑えることができず、少女のあとをついて行く。ヘリオホルスの街は石造りだ。当然、道も石で舗装されている。寝静まった静かな街中を、少女と青年の足音が鳴り渡る。
「もう少ししたら神殿です」
どれくらい歩いたのだろうか。知らないうちに、眼前に砂漠が広がる場所まで来ていた。街中よりもかなり肌寒く、青年は二の腕をさすった。
「こちらが入り口になります。私について来てください」
黒猫はヒョイっと少女から飛び降りた。気まぐれに青年の方を振り向くと、さっさと歩いて行ってしまった。
「すごい……」
神殿の中には見たこともない太さの柱が、何本も立っていた。松明に照らされ、二人と一匹の影が揺らぐ。途方もない長さの廊下を歩き続け、階段を上がり、ようやく神殿の中枢部へ到着する。そこには独創的な壁画と、古代文字らしきものが一面に描かれていた。
「どうぞお座りください」
少女はどこからかコップに水を汲み、青年に差し出した。青年が床へ腰を下ろすと、向かい合うように少女も座する。
「自己紹介が遅れました。私はドゥーニアと申します」
「僕は……レオン・ローガストン」
「レオン……勇敢なる獅子の御方」
「勇敢だなんて、そんなことはありません」
青年――レオンは自身を恥じていた。五歳の時に、妹のアリスを不注意で死なせてしまったことを。以来、彼は心を閉ざし、女性との関係を一切持とうとしなかった。
頑なに婚約しなかったのも、結婚して子どもが出来るのが怖かったからだ。そもそも自分が親になる資格などないと自覚していた。
「レオン様は妹さんのことを大切に想っていらっしゃったのですね」
「なぜ、そのことを……?」
ドゥーニアは驚愕するレオンの手にそっと触れた。
「私はアリスの生まれ変わりです」
「っ!!」
「昨日、レオン様がヘリオホルスへやって来るのも、私にはずっと前から分かっていました」
「……嘘だ、そんなの嘘だっ!」
レオンはドゥーニアの柔らかな手を振り払う。
「君は太陽神に仕える巫女だから不思議な力を持っているんだろう! だから僕の過去を知ることができた! でも妹の……アリスの生まれ変わりだなんて笑えない冗談はよしてくれ……」
レオンの頬をまたしても涙が伝う。黒猫は二人の様子をじっと見守っていた。
「レオン様、私は神に誓って嘘などついておりません。前世の記憶は生後半年までですが、レオン様が私のことを愛してくれていたことは今でもよく覚えています」
「…………」
「私は高い高いをされるのが大好きでした。レオン様が初めてしてくださったあの日、天から声が聞こえたのです。太陽神に仕える時が来た、と」
ドゥーニアは、レオンの涙を人差し指で優しく拭った。
「だから、あの日の出来事は不注意による事故などではなく、神の思し召しだったのです。どうか私の話を信じてください」
「…………」
ぷくぷくとした手足、今にも落ちそうなほっぺた。レオンはふと思い出す。アリスの青い両目尻の下に、小さなほくろが一つずつあったことを。
今、目の前に座っているドゥーニアも、まったく同じ場所にほくろがあった。その瞬間、ドゥーニアがアリスの生まれ変わりだと、レオンには確かに信じられたのだった。
「ああ、僕の可愛いアリス……ッ!!」
レオンはドゥーニアを強く抱きしめ、幼子のように泣きじゃくった。ドゥーニアもレオンの背中に腕を回し、彼が落ち着くまで背中をさすり続けた。ようやく泣き止むと、レオンは申し訳なさそうに目を逸らす。
「……すまない、大人げない真似をして」
「いえ、こうしてまた貴方様にお会いできて嬉しいですわ」
「アリス……いや、ドゥーニア、僕も君に会えて嬉しいよ」
「レオン様、これからお話することをよくお聞きになってください」
レオンはドゥーニアを見つめる。嫌な予感がしたのだ。
「ヘリオホルスは間もなく砂嵐によって壊滅的な被害を受けるでしょう。その前にどうかこの街を出て行ってください」
「砂嵐……?」
「はい、百年に一度訪れる大型の砂嵐です」
「た、大変じゃないか! 早く街の人々に知らせなくては――」
「いいえ、それはなりません」
「どうして!?」
「太陽神の考えに背くからです」
ドゥーニアの返答にレオンは息を呑む。彼女はあくまで神の意志に寄り添うつもりなのだ。
「だが、それではたくさんの人々が亡くなってしまう!」
「太陽神は人間を愛していますが、同時に憎んでもいます。彼らが神の助けを得ることなく、自力で苦難を乗り越えることを望んでいらっしゃるのです」
「君は……ドゥーニアはどうなるんだい?」
「ヘリオホルスとともに、でございます」
ドゥーニアは朗らかに微笑んでみせた。そこには微塵も不安を感じさせない。レオンは両手を強く握りしめる。
「そんなの……そんなの絶対に間違っている! 砂嵐が来ることを人々に知らせるべきだし、君も早くここから避難するんだ!」
「……太陽神はお許しにならないでしょう」
この時、初めてドゥーニアは寂しそうな表情をしたが、すぐに笑顔を浮かべた。
「どうかお元気で、レオン様――ッ!!」
レオンはドゥーニアを抱き寄せると、荒々しく唇を奪った。ドゥーニアは彼から逃れようとするが到底、力では敵わない。
「愛している、ドゥーニア」
「……知っています。レオン様と私が禁じられた恋に落ちることも」
ドゥーニアはアリスの生まれ変わりだが、今はもうアリスではない。一人の乙女なのだ。うら若き男女が惹かれ合うのは、世の理だろう。
ましてや二人は、長い時をともに過ごしてきた。ある時は親子として、またある時は親友として。今世では兄妹として、恋人として巡り会う運命だったに過ぎない。
「僕はもう二度と君を失いたくないんだ! たとえ神に背くことになろうと構わない」
「ああ、神よ、どうかお許しください……私もレオン様をずっと恋い慕っておりました」
「ドゥーニア、僕と一緒に来てくれるね?」
「……はい」
二人は手を取り合い、神殿を抜け出した。黒猫はちゃっかりレオンの肩に乗っている。夜明けと同時にドゥーニアは街の人々を広場に集め、直に砂嵐がやって来ることを告げた。人々は大慌てで逃げる準備に取り掛かる。
「命が惜しけりゃ金目の物は置いていくんだ!」
「年寄りと女子どもを優先してラクダに乗せろ!」
こうして小国ヘリオホルスが怒り狂った砂嵐に飲み込まれる前に、人々と動物たちは安全な隣国へと逃げたのだった。ヘリオホルスはすっかり砂に埋まってしまったが、逞しい彼らならば神の助けを借りずとも、復興するのにそれほど時間は掛からないだろう。
レオンとドゥーニアは皆が無事であったことにほっと胸を撫で下ろし、笑顔で街の人々に別れを告げた。
♢♢♢
「さて、これからどこへ行こうか」
「レオン様となら私、どこへ行っても幸せですわ」
ラクダに揺られ、レオンとドゥーニアとリリーは広大な砂漠を進む。しばらくすると小さなオアシスが見えてきた。
「あそこで休憩しよう」
二頭のラクダに水を飲ませ、自分たちも水分補給をしながら会話をする。ドゥーニアが言うには、最初こそ太陽神は彼女の行いに対して怒りを爆発させたが、すぐに干渉してこなくなったらしい。
「太陽神はこうなることを知っていらっしゃったのでしょうね」
「それは君もかい?」
「いいえ、私には分からなかった。何もかもが予測されていた未来とはまるで違っていたのです」
二人は暫し、キラキラと光る水面を見つめていた。
「その、今さらだけど、巫女の君がいなくなってヘリオホルスは大丈夫だろうか?」
「ええ、私を解放されたということはもう巫女を必要となさっていないのでしょう。きっと、これからは神でなく人が国を治める時代になってゆくのですわ」
ドゥーニアは長く美しい黒髪を風に靡かせ、空があるべき場所を見上げる。彼女にとって、この世界はどんな色をしているのだろうか? もし単調な色だけならば、自分が色彩を豊かにしようとレオンは強く決意する。
「ねぇ、レオン様。私、来世は鳥になりたいんです」
二人の頭上では二羽のヒタキが飛んでいた。仲睦まじく大空を羽ばたく姿に、レオンも心を惹かれる。
「うん、僕もそう思うよ」
二人が微笑み合うとリリーはニャア、と鳴いた。
これからどんなに辛い出来事があろうとも、二人と一匹ならば乗り越えられるだろう。一度、ドゥーニアを連れて故郷へ戻ってみようか。両親に心配をかけてしまったことを謝罪するべきであったし、愛するドゥーニアを両親に紹介したかった。
レオンは鞄からデーツの入った紙袋を取り出し、ドゥーニアに手渡した。デーツは彼女の大好物なのだ。元々ドライフルーツが苦手なレオンだったがコク深く、甘みのある味わいも案外いいものだと考えを改めている。
そして今日もドゥーニアから睡蓮の良い香りがして、彼は目を細めるのだった。
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