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父の日
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「ねえ、ユーリ。お父様へのプレゼントは何がいいと思う?」
花々が咲き誇る庭園を散策していたエマは、亜麻色の艶やかな髪をふわりと靡かせ、後ろを歩いているユーリの方を振り向いた。
午後の暖かな日差しが降り注ぐ中、微笑をたたえたユーリはいつも以上に優しい印象をエマに与えた。
もうすぐ父の日。
当時のアメリカ合衆国ワシントン州に住んでいたソノラ・スマート・ドッド夫人が『母の日』にならって、他界した父親に感謝の気持ちを伝えるために白い薔薇を贈ったのが始まりだと伝えられている。
「赤い薔薇の花束とご一緒に、お手紙や似顔絵を贈られてはいかがでしょうか?」
「手紙と絵なら去年もその前の年もプレゼントしたし、もう子どもじゃないからちゃんとしたものがいいわ」
まだ十分子どもと呼べる年齢のエマだったが、心はそうではないようだ。
ユーリは即座に別の提案をした。
「では、贈り物としてよく選ばれていたハンカチはいかがでしょうか?」
「ハンカチ?」
エマは存在こそ知っていたが、ハンカチに馴染みがなかった。
日常生活で、ハンカチを使う機会がないためだ。
いたる所に自動手洗い機や再生可能なペーパータオルが設置されているので、わざわざハンカチを持ち歩く必要がないし、それらがあまり普及していない地区に赴いても自立型機械を連れてさえいれば事足りる。
「はい。ハンカチとは主に洗った手を拭いたり汗を拭うなど日常的に用いられる正方形や長方形の布のことで、ハンカチーフの省略形です」
「お父様、喜んでくださるかしら?」
「旦那様はハンカチの収集もなさっているので、お喜びになるはずです」
大昔の紙の本や、珍しい文房具などを収集している父親。
やはり自分の懐古趣味は父親譲りなのかもしれない、と思うと何だか嬉しくなってエマは口元を緩める。
「ハンカチはどこで手に入るの?」
「インターネットや店頭で購入することが可能です」
「それじゃ、すぐに出かけましょう」
「かしこまりました」
エマは早々と身支度を済ませると豪奢な自動四輪馬車に乗り込み、ユーリと共に華やぐ街へと繰り出した。
♢♢♢
高品質な紳士服を取り扱う老舗の店で、ハンカチを一枚購入したエマ。
屋敷に戻ると、ショッパーからハンカチを取り出した。
ショッパーの表面はホログラム映像加工が施されており、クラシカルな店名のロゴやエレガントな衣装に身を包んだモデルの広告が一定時間、映されては切り替わる。
「このハンカチ、とても柔らかくて肌触りがいいわ」
エマはどれにするか悩んだが店員のアドバイスを受け、父親が好きな青色を基調としたブロックチェックのハンカチに決めた。
ラッピング用品は屋敷にたくさんあるのでプレゼント用のラッピングは断り、ハンカチのみを受け取った。
「――でも何か物足りないのよね」
もちろんメッセージカードは添えるつもりだった。
けれど、これまで手紙や似顔絵をプレゼントしていたエマは、店に並んでいたものをそのまま渡すことに味気なさを感じていた。
「それでしたら、ハンカチに旦那様のイニシャルを刺繍されてはいかがでしょうか?」
「ししゅう?」
「はい。専用の針と糸で布地に文字や模様を入れるもので、お嬢様が選ばれたハンカチは綿素材で刺繍に最も向いている布地です」
エマは少しの間、考えてから返事をする。
「刺繍のやり方を教えてもらえるかしら?」
「はい。道具をご用意いたしますので少々お待ちください」
そう言い、ユーリは規則正しい足取りで部屋を出て行く。
ユーリが戻ってくるまでの間、エマはショッパーの広告を何と無しに眺めていた。
こちらに視線を向けながら肩を寄せ合う美男美女が、幸せそうに笑っている。
その姿に離れて暮らす両親を重ねてしまい、不意に寂しさがエマの胸を締め付けた。
(――大丈夫よ、私にはユーリがいるもの)
「お待たせいたしました」
タイミングよくユーリが声を掛けてくれたお陰で、エマはネガティブな思考に飲み込まれずに済んだ。
広告を映さないようショッパーに指示して顔を上げるなり、ユーリが抱えているものを見て目を丸くする。
「まあ、その大きな木箱は?」
「こちらは裁縫箱でございます」
ユーリは裁縫箱を机の上に置くと蓋を開け、エマに教えるための準備を始めた。
「今回は青い布地に映えるよう白、ベージュ、グレー、黒、オレンジ、または黄色の刺繍糸のご使用をお勧めいたします。何色がよろしいですか?」
「――黒色にするわ」
「分かりました。では、これから簡単にできる『バックステッチ』のやり方をお教えいたします」
「ええ、お願い」
「まずは刺繍糸の末端を玉結びしたら、線の端から一目先に針を出します。そして一目戻って針を刺します」
見えやすくするために、白い布地に黒色の刺繍糸を通した刺繍針を刺すユーリ。
エマは決して見逃すまいと、彼の手元を注視していた。
「二目分先に針を出し、一目戻って針を入れます。これと同じことを繰り返します。一目先に針を出したら一目戻って針を刺し、二目分先に針を出したら一目戻って――」
「わあ、すごい!」
ユーリはあっという間に刺繍を終えた。
父親のイニシャルが見事にステッチされており、エマは感動する。
「こちらの刺繍枠を使われると、やりやすいかと思います」
「?」
エマはメロンのような形をした木製の刺繍枠を、まじまじと見た。
「外枠と内枠をバラしてまずは内枠を布地の下にセットし、刺繍を入れる部分が中央の刺しやすい所にくるようにします。布地が置けたらその上から外枠を被せて押し込みます。この時、布地がピンと張っているようにします。刺しているうちに布地がたわんでこないよう、金具をしっかり止めて準備完了です」
ユーリは刺繍枠に張った白い布地に、桃色のペンらしきもので父親のイニシャルをさらりと書いた。
「これはチャコール・ペンシル、通称チャコペンといって、裁縫や手芸などで布を裁断する際に線や印を付けるための道具です。このチャコペンはブラシやアイロンや水で簡単に落とせます。また空気との接触によって自然に消えます」
「まるで魔法みたい……」
古くからあるものに心惹かれるエマは、マホガニー色の瞳に好奇心の色を浮かべる。
あらゆることを機械が人間の代わりに行う現代。
刺繍も自立型機械のユーリに頼めば、先ほどのように短時間で完璧に仕上げてくれるだろう。
もっとも、エマは彼のことを擬人化しているのだが。
(――私が心を込めてやることに意味があるのよ)
エマはユーリから刺繍針を受け取ると刺繍枠をしっかり持ち、教えられた手順でやってみる。
けれど思うようにできず、いびつなステッチになってしまう。
(ユーリはあんなに上手くできていたのに――)
エマは自身に対して、苛立ちを覚える。
焦燥感を抑えられないまま、刺繍を続けていると――
「いたっ!」
「大丈夫でございますか?」
鋭い針先で、左手の中指を誤って刺してしまう。
すぐさまユーリが絆創膏を貼ってくれた。
ジンジンと傷口が痛んだが、絆創膏の効能で明日の朝までには治っているはずだ。
「お嬢様、少し休まれてはどうでしょうか?」
「大丈夫よ。早く上手になりたいの」
「承知いたしました」
その日からエマは時間が許す限り、刺繍の練習に励んだ。
何度も指を刺して絆創膏だらけになっても気にせず、納得のいくステッチができるまで忍耐強く続けた。
「――できた!」
一週間後、ついにエマはステッチを習得した。
念の為、ハンカチと同じ色の布地にチャコペンで下書きをして刺繍を試みる。
すると最初の頃とは比べ物にならないほど、エマは刺繍針を使いこなせていた。
「とてもお上手になられましたね」
「これならお父様にプレゼントしても恥ずかしくないわ」
ユーリが気を利かせ、紅茶とチョコレートを持って来た。
大好物のチョコレートを口に含むと上品な甘さが緊張と疲れを和らげてくれ、エマは大きく伸びをしてリラックスする。
「さあ、いよいよ本番よ」
青色のハンカチを刺繍枠に固定し、チャコペンで父親のイニシャルを書き、刺繍針と刺繍糸で焦ることなく丁寧にステッチしてゆく。
開始してから、数十分後。
「――完成したわ!」
後ろでユーリが静かに見守る中、エマは綺麗な刺繍をすることに成功したのだった。
♢♢♢
ユーリが手際良くアイロン掛けをして、ハンカチを折り畳んでくれた。
エマは色鮮やかなガラスペンのペン先にエメラルドグリーンのインクを付け、メッセージカードにゆっくりとメッセージを綴る。
『お父様へ
いつもありがとう。愛してるわ。
エマより』
手紙と比べたら随分と短い文だったが、気持ちは伝わるはずだ。
エマは満足そうな顔をしながら、ハンカチとメッセージカードを紺色のギフトボックスの中に入れた。
仕上げに茶色いリボンを十字掛けに結ぶ。
プレゼントは本物そっくりに作られた鳥型ドローンが、赤い薔薇の花束と一緒に父親の元へ届けてくれるだろう。
「ユーリ、本当にありがとう。あなたがいなければ何もできなかったわ」
「いえ、お嬢様が努力なさったから成し得たのです」
「ふふ、ユーリったらいつも謙遜するんだから。ねえ、今度は編み物を教えてもらえない? クリスマスに手編みのマフラーをお父様とお母様にプレゼントしたいの」
「はい。お嬢様のご都合のよい時にお申し付けください」
(それと、いつも頑張ってくれてるユーリにもプレゼントさせてちょうだいね)
エマは心の内で呟き、彼が淹れてくれた美味しい紅茶を一口飲むと、優しさに包まれながらにっこりと微笑んだ。
花々が咲き誇る庭園を散策していたエマは、亜麻色の艶やかな髪をふわりと靡かせ、後ろを歩いているユーリの方を振り向いた。
午後の暖かな日差しが降り注ぐ中、微笑をたたえたユーリはいつも以上に優しい印象をエマに与えた。
もうすぐ父の日。
当時のアメリカ合衆国ワシントン州に住んでいたソノラ・スマート・ドッド夫人が『母の日』にならって、他界した父親に感謝の気持ちを伝えるために白い薔薇を贈ったのが始まりだと伝えられている。
「赤い薔薇の花束とご一緒に、お手紙や似顔絵を贈られてはいかがでしょうか?」
「手紙と絵なら去年もその前の年もプレゼントしたし、もう子どもじゃないからちゃんとしたものがいいわ」
まだ十分子どもと呼べる年齢のエマだったが、心はそうではないようだ。
ユーリは即座に別の提案をした。
「では、贈り物としてよく選ばれていたハンカチはいかがでしょうか?」
「ハンカチ?」
エマは存在こそ知っていたが、ハンカチに馴染みがなかった。
日常生活で、ハンカチを使う機会がないためだ。
いたる所に自動手洗い機や再生可能なペーパータオルが設置されているので、わざわざハンカチを持ち歩く必要がないし、それらがあまり普及していない地区に赴いても自立型機械を連れてさえいれば事足りる。
「はい。ハンカチとは主に洗った手を拭いたり汗を拭うなど日常的に用いられる正方形や長方形の布のことで、ハンカチーフの省略形です」
「お父様、喜んでくださるかしら?」
「旦那様はハンカチの収集もなさっているので、お喜びになるはずです」
大昔の紙の本や、珍しい文房具などを収集している父親。
やはり自分の懐古趣味は父親譲りなのかもしれない、と思うと何だか嬉しくなってエマは口元を緩める。
「ハンカチはどこで手に入るの?」
「インターネットや店頭で購入することが可能です」
「それじゃ、すぐに出かけましょう」
「かしこまりました」
エマは早々と身支度を済ませると豪奢な自動四輪馬車に乗り込み、ユーリと共に華やぐ街へと繰り出した。
♢♢♢
高品質な紳士服を取り扱う老舗の店で、ハンカチを一枚購入したエマ。
屋敷に戻ると、ショッパーからハンカチを取り出した。
ショッパーの表面はホログラム映像加工が施されており、クラシカルな店名のロゴやエレガントな衣装に身を包んだモデルの広告が一定時間、映されては切り替わる。
「このハンカチ、とても柔らかくて肌触りがいいわ」
エマはどれにするか悩んだが店員のアドバイスを受け、父親が好きな青色を基調としたブロックチェックのハンカチに決めた。
ラッピング用品は屋敷にたくさんあるのでプレゼント用のラッピングは断り、ハンカチのみを受け取った。
「――でも何か物足りないのよね」
もちろんメッセージカードは添えるつもりだった。
けれど、これまで手紙や似顔絵をプレゼントしていたエマは、店に並んでいたものをそのまま渡すことに味気なさを感じていた。
「それでしたら、ハンカチに旦那様のイニシャルを刺繍されてはいかがでしょうか?」
「ししゅう?」
「はい。専用の針と糸で布地に文字や模様を入れるもので、お嬢様が選ばれたハンカチは綿素材で刺繍に最も向いている布地です」
エマは少しの間、考えてから返事をする。
「刺繍のやり方を教えてもらえるかしら?」
「はい。道具をご用意いたしますので少々お待ちください」
そう言い、ユーリは規則正しい足取りで部屋を出て行く。
ユーリが戻ってくるまでの間、エマはショッパーの広告を何と無しに眺めていた。
こちらに視線を向けながら肩を寄せ合う美男美女が、幸せそうに笑っている。
その姿に離れて暮らす両親を重ねてしまい、不意に寂しさがエマの胸を締め付けた。
(――大丈夫よ、私にはユーリがいるもの)
「お待たせいたしました」
タイミングよくユーリが声を掛けてくれたお陰で、エマはネガティブな思考に飲み込まれずに済んだ。
広告を映さないようショッパーに指示して顔を上げるなり、ユーリが抱えているものを見て目を丸くする。
「まあ、その大きな木箱は?」
「こちらは裁縫箱でございます」
ユーリは裁縫箱を机の上に置くと蓋を開け、エマに教えるための準備を始めた。
「今回は青い布地に映えるよう白、ベージュ、グレー、黒、オレンジ、または黄色の刺繍糸のご使用をお勧めいたします。何色がよろしいですか?」
「――黒色にするわ」
「分かりました。では、これから簡単にできる『バックステッチ』のやり方をお教えいたします」
「ええ、お願い」
「まずは刺繍糸の末端を玉結びしたら、線の端から一目先に針を出します。そして一目戻って針を刺します」
見えやすくするために、白い布地に黒色の刺繍糸を通した刺繍針を刺すユーリ。
エマは決して見逃すまいと、彼の手元を注視していた。
「二目分先に針を出し、一目戻って針を入れます。これと同じことを繰り返します。一目先に針を出したら一目戻って針を刺し、二目分先に針を出したら一目戻って――」
「わあ、すごい!」
ユーリはあっという間に刺繍を終えた。
父親のイニシャルが見事にステッチされており、エマは感動する。
「こちらの刺繍枠を使われると、やりやすいかと思います」
「?」
エマはメロンのような形をした木製の刺繍枠を、まじまじと見た。
「外枠と内枠をバラしてまずは内枠を布地の下にセットし、刺繍を入れる部分が中央の刺しやすい所にくるようにします。布地が置けたらその上から外枠を被せて押し込みます。この時、布地がピンと張っているようにします。刺しているうちに布地がたわんでこないよう、金具をしっかり止めて準備完了です」
ユーリは刺繍枠に張った白い布地に、桃色のペンらしきもので父親のイニシャルをさらりと書いた。
「これはチャコール・ペンシル、通称チャコペンといって、裁縫や手芸などで布を裁断する際に線や印を付けるための道具です。このチャコペンはブラシやアイロンや水で簡単に落とせます。また空気との接触によって自然に消えます」
「まるで魔法みたい……」
古くからあるものに心惹かれるエマは、マホガニー色の瞳に好奇心の色を浮かべる。
あらゆることを機械が人間の代わりに行う現代。
刺繍も自立型機械のユーリに頼めば、先ほどのように短時間で完璧に仕上げてくれるだろう。
もっとも、エマは彼のことを擬人化しているのだが。
(――私が心を込めてやることに意味があるのよ)
エマはユーリから刺繍針を受け取ると刺繍枠をしっかり持ち、教えられた手順でやってみる。
けれど思うようにできず、いびつなステッチになってしまう。
(ユーリはあんなに上手くできていたのに――)
エマは自身に対して、苛立ちを覚える。
焦燥感を抑えられないまま、刺繍を続けていると――
「いたっ!」
「大丈夫でございますか?」
鋭い針先で、左手の中指を誤って刺してしまう。
すぐさまユーリが絆創膏を貼ってくれた。
ジンジンと傷口が痛んだが、絆創膏の効能で明日の朝までには治っているはずだ。
「お嬢様、少し休まれてはどうでしょうか?」
「大丈夫よ。早く上手になりたいの」
「承知いたしました」
その日からエマは時間が許す限り、刺繍の練習に励んだ。
何度も指を刺して絆創膏だらけになっても気にせず、納得のいくステッチができるまで忍耐強く続けた。
「――できた!」
一週間後、ついにエマはステッチを習得した。
念の為、ハンカチと同じ色の布地にチャコペンで下書きをして刺繍を試みる。
すると最初の頃とは比べ物にならないほど、エマは刺繍針を使いこなせていた。
「とてもお上手になられましたね」
「これならお父様にプレゼントしても恥ずかしくないわ」
ユーリが気を利かせ、紅茶とチョコレートを持って来た。
大好物のチョコレートを口に含むと上品な甘さが緊張と疲れを和らげてくれ、エマは大きく伸びをしてリラックスする。
「さあ、いよいよ本番よ」
青色のハンカチを刺繍枠に固定し、チャコペンで父親のイニシャルを書き、刺繍針と刺繍糸で焦ることなく丁寧にステッチしてゆく。
開始してから、数十分後。
「――完成したわ!」
後ろでユーリが静かに見守る中、エマは綺麗な刺繍をすることに成功したのだった。
♢♢♢
ユーリが手際良くアイロン掛けをして、ハンカチを折り畳んでくれた。
エマは色鮮やかなガラスペンのペン先にエメラルドグリーンのインクを付け、メッセージカードにゆっくりとメッセージを綴る。
『お父様へ
いつもありがとう。愛してるわ。
エマより』
手紙と比べたら随分と短い文だったが、気持ちは伝わるはずだ。
エマは満足そうな顔をしながら、ハンカチとメッセージカードを紺色のギフトボックスの中に入れた。
仕上げに茶色いリボンを十字掛けに結ぶ。
プレゼントは本物そっくりに作られた鳥型ドローンが、赤い薔薇の花束と一緒に父親の元へ届けてくれるだろう。
「ユーリ、本当にありがとう。あなたがいなければ何もできなかったわ」
「いえ、お嬢様が努力なさったから成し得たのです」
「ふふ、ユーリったらいつも謙遜するんだから。ねえ、今度は編み物を教えてもらえない? クリスマスに手編みのマフラーをお父様とお母様にプレゼントしたいの」
「はい。お嬢様のご都合のよい時にお申し付けください」
(それと、いつも頑張ってくれてるユーリにもプレゼントさせてちょうだいね)
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