音楽無双――おかしな世界に転生したボクはSランク

結木 夏音

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第二章

026:動画投稿の準備に掛かる(5)

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【Side:主人公】


「ムフフフ、本日も晴天なり~」


徹夜明けの早朝、ボクは我が家の広い庭に佇んで腕を組み、日の出を拝んでいた。

早朝とは、何故こんなにも気持ちが良いのだろう。

マイナスイオンたっぷりかは知らないけど、空気も非常に美味おいしい。



「ふふふ、太陽も中々にやりよるわ!」


太陽の日差しが燦燦さんさん黄金おうごんに輝き非常に眩しい。しかしながら、ボクだって負けず劣らずキラキラと光り輝いている。

大雑把に評価するなら、太陽とボクは『互角』だろうか。



「ふふッ、ハァハハハハハハハ」


今はライバル、されどいずれはボクの方がより輝くことだろう。

世界を360度、あまねく全方位で照らせるのはボクだ。太陽にはそんなこと出来ないもんね。



「さて、運動しようか! せーの、ラジオ体操第イチーーッ! ちゃーんちゃら、ちゃちゃちゃちゃ、ちゃーんちゃら…………♪」


ここ最近、ボクはランニングを日課に取り入れた。

ラジオ体操はその前段階の準備運動だね。

ちゃんと口でリズムを取って、グ~っと身体を伸ばし、硬い身体をほぐしていくんだ。

やっぱり、これまでの引き籠り生活が影響してか、驚くほどにボクは体力がない。

数時間前に一曲を歌っただけでバテバテになる程だ。ハッキリ言って肺活量を鍛えるのは急務といえよう。

でもまぁ、我が家の庭でランニングして数日は経っているけど、全然効果を実感しない。ダイエットする皆さんの気持ちが曲がりなりにも理解できました。



『手っ取り早く、“マムシドリンク” みたいに即効でバッキバキに体力を上げる方法はないだろうか?』


深夜のノリで変なことを思っちゃった、へへへ。



「よぉーし、走りますか~!」


ランニングといえば、誰しもが最初は早く走るもんだよね。

でもさ、ボクは3分もしたらヘロヘロと歩いてしまう。シュワッチと同じく3分縛りだ。胸のカラータイマーが光を失って、スーパなハルカ君モードが強制解除されてしまうんだ。


別にヤル気がないわけじゃない。ヤル気だけはレジェンドな『松岡醸造』さん並みにある!

ただ、走ると直ぐに息が上がってフラフラになるんだ。

身体が精神に着いて来れないっていうのかな。日本の伝統お家芸、浪花節で『ナニが、いつでも、どこでも、奮い立つ』と思ったら大間違い。精神だけじゃあ、立つもんも立たんわぃ!


こういうのは先ず無理をせず、長期的に考えることが肝要なり。コレは決して言い訳じゃない。

運動が習慣化すれば、そう遠くない未来に体力不足なんて必然的に解決する筈さ。

そもそもボクは、アスリートを目指してないよ!



「………はぁ、はぁ、はぁ。……もう、家に帰ろう」


結構頑張った方だろう。運動は10分未満で終わり。

ボクは家の中に戻ると風呂場へと直行した。

浴槽には入らず、シャワーだけを浴び、シャンプーと石鹸でゴシゴシと雪だるまになって掻いたかどうか怪しい汗を流す。

そして、ちゃんと髪を乾かしてから自室に入った。



『あれ、何だろう? えっと、リディアからか…………』


机の上に放置していたスマホの電源が点いていたので確認してみれば、リディアからRineが入っていた。



『これは、…………不味いなぁ』


今更ながら、昨日の日本語の授業をすっぽかしていたことに気が付いた。

スマホのロックを解除して操作すれば、彼女からの着信履歴もズラ~っと並んでいる。



『やってもうた~。防音室にいたから聞こえてなかったょ。どうしよう…………』


気分的に寝坊して職場に行くのが気不味きまずい状況と似たものだろうか。

こういう時、正直に伝え謝った方が良いというのが通説だけど、『実はボク、昨日気絶してたんです!』なんて言って信じてもらえるのかな?

ボクだったら、『もっと笑える言い訳を準備して来い!』と思う。



『Rineの返信、何て返そう…………』


それにしても、こんな朝早くからRineを送って来てくれるなんて、嬉しいと思うボクは間違っているのだろうか…………。

リディアって、とても美人な女の子だからボクはロリコンじゃないのに脳内をお花畑にさせられる。

先生になったら、教え子とリア充になれるという都市伝説は本当だったんだね。

いやいや、精神年齢28歳の少年、確りしろ! ボクは紳士的なお姉様として今後も彼女の日本語の先生として頑張るんだ。



直近のRineの内容を確認すれば案の定な内容が書いてあった。

『休むなら、連絡くらいしなさいよ!』っていう有り難~い叱責だ。でも最後には『心配するでしょ。早く返信くらいしなさいよね………』という2段階構え。

なるほど、日本文化の萌えを学び始めたのかな。

この穴埋めは確りとしておこう! ツンデレは嫌いじゃない! ではなくて、………先生と教え子の関係にひびを入れるわけにはいかない!


取りあえず、ここは無難に『昨日は体調が悪くて、横になったら寝てしまってた。連絡が遅れてゴメン! 先生は大変反省してます。今後はこのような事がないように気を付けます』と書いてRineを送った。

返信が終わって、さぁ朝ご飯にしようと思った矢先、リディアから再びRineが送られてきた。



『メチャンコ早いなぁ…………。次の内容は何だろう、ってマジか!?』


次に送られて来たRineにはメッセージだけでなく写真が添付されていた。

どうやらアンジェリーナさんが2時間前に赤ちゃんを産んだらしい。



「可愛いなぁ~」


生まれてばかりの赤ちゃんの写真を見て、ボクは産後のお見舞いでもう一度病院に行きたくなって来た。


でも、どうしよう…………。

前世に比べて気軽に外に出れない。再び男性護衛官に来てもらうのもなんだかなぁ。

よくよく考えれば産後のお見舞いって、なんだか迷惑な気がするんだよね。アンジェリーナさん的にはどうなんだろう。流石に直接は聞けないか。


結局この件に関して、ボクはRineのビデオ通話で出産祝いの言葉を伝えることにした。

後日にはご祝儀袋もちゃんと送っておいたよ。

通販で買ったおいたんだ。(良い子は真似しちゃ駄目だよ!)





◆◆◆◆◆





「さて、どんどん作曲していこう」


Toutuberになっても、夜はちゃんとリディアの日本語の先生をする予定だ。でも同じ失敗は今後2度と繰り返さない。スマホの目覚ましを『毎日20時』でセットしておけば大丈夫。

ある意味、習慣というのは怖い物で、スマホの目覚ましアラームが鳴るとボクは未だにドキリとして反射的に上体を起こす。

だから、これでもし気絶していようと、死んでいようと、ボクは動き出す自信がある。今世でもボクのゾンビ化は健在だ。

社畜精神が完全に封印される日は、果たして来るのだろうか………。



『そういえば、赤ちゃんに何か送りたいな』


ここでロマンチックに曲をプレゼントしようなんて言える程、ボクは大した男じゃない。

『The Day』とか『Thank you』、『To you』とか偉人の曲を手掛けるなんて絶対無理。楽曲の解釈が未熟で駄作になるのが目に見えている。

いくら独身男の妄想が豊かとはいえ、そこまでの境地には手が届かない。



『物を送るとして、何が喜ばれるんだろう』


前世の経験がこの件に関しては、一切当てにならない。

赤ちゃんの為の出産祝いとか前世では貰った事もなければ、送った事もない。

皆は一体、どんな物を送っていたんだろう。



『オムツ1年分、それとも衣服の方が良いのかな? オヤツは流石に早過ぎる気がする。………何が良いんだろう』


ネットで『出産祝い、人気、贈り物』と調べてみると色々と検索に引っかかった。

ランキングサイトがトップに挙がっていたのでそれをクリックし、1位から順番に商品を見ていくと一際ひときわ目をくものを発見した。



『これが良いんじゃないかな』


簡潔に言えば、電化製品だね。

赤ちゃんの為の『撮影機材』なんだけど、写真や動画が撮れる。

しかも、事前の設定さえしておけば顔認証システムみたいに赤ちゃんが活動し始めたと機械が判断したら即スマホに通知もしてくれるんだ。勿論、スマホで遠隔操作もできて視聴および撮影も可能。

他の商品と比較しつつ考えれば考える程、この電化製品がより良く見えてきた。



『うん、この電化製品に決めた。これにしよう!』


赤ちゃんからは目を離してはいけないというし、こういう撮影機材は1台くらいあった方が良いだろう。

でも、実は同じ物を持ってましたとか後で言われたらどうしよう。

そんな時は、防犯で使って下さいとでも言おうかな。

玄関の外にでも置いておけば、お客さんがインターフォンを押す前にスマホに連絡くれるんじゃないかな? 結構、便利な気がする。

取りあえず、未だ名前も知らないアンジェリーナさんの赤ちゃんへの贈り物はこれに決定。

早速The MENにアクセスして、ポチポチっと購入する。

これも後日にちゃんと送っておく。



『喜んでくれると良いなぁ』


そういえば、リディアにToutuberになった件、言った方が良いのかな。

出来れば、この日本のアイドルの曲より聞いて欲しいって思う。

でもさぁ、自信満々で明かしておいて、それで閑古鳥が鳴いていたら恥ずかしいよね。

やっぱり、秘密の方が良いかなぁ………。

多少は言いたい衝動に駆られるけど、ここは我慢だ。

ちなみに、ボクのママや2人の姉にも秘密でことを進める。家族と言えど、秘密は早々簡単に漏らさない。


『男の子』というのは、こういう秘密系が大好きな生き物なんだよ。




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