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第二章
022:動画投稿の準備に掛かる(1)
しおりを挟む【Side:主人公】
自宅に帰って来て2週間余りが経った。
ボクは今日も今日とて動画サイトの『Toutube』を見ていた。
時間が掛かったけど、ようやっと自分の中で踏ん切りがついた。
「決めた、動画投稿をしよう! この世界でチャレンジしてみたい。そして、沢山の人たちにもっと多くの男性曲に触れてもらいたい」
そんな宣言をした所で、当然返答してくれる者はいない。
でも、それでいい。
『ここから始めよう。千里の道も一歩からだ』
これまでに見たToutubeの動画では音楽関係は勿論のこと、様々なジャンルのものを閲覧し、Webの海を泳いで、大体の分析は済んでいた。
この世界『ならでは』の知識や手法を学び取り入れる必要があるかと思っていたけど、『男』の投稿・配信という点でジャンルのような扱いになっており、『人気を獲得しやすい』という以外は前世と然程変わらなかった。
幾つもあるジャンルの中で、ボクの場合は音楽だったら前世の知識や経験、技術を用いて継続して投稿して行ける自信がある。なにより、今世のボク自身もその方向で進みたいと思っている。
『前世の楽曲はどこまで通用するのかな? 少なくとも、ボク自身は一切の妥協をすることなく、真剣に全ての楽曲に向き合う必要があるよね。偉人たちが作った神曲を、駄作にして世界へ配信するなんて到底許されない冒涜だ。それだけは、何が何でも絶対にしちゃいけない』
これからToutubeで活動するに当たり、様々な物が必要になる。
そもそも現時点において、ボクは撮影機材なんて辛うじてスマホくらいしかない。楽器は言うに及ばず、1つもない。
『でも、真っ先に買う必要があるのは………パソコンかな』
スマホのアプリでも作曲はできるけど、高度な楽曲製作となるとパソコンソフトの方が格段に良い。
現代の楽曲って音色を融合させて新規作成したりもするんだけど、音源の豊富さやエフェクト、音の厚みなんかがスマホアプリだと出来る事に制限があって完成度が全然違う。
そういった問題から、パソコンは絶対にあった方がいいだろう。
『楽器を買うとしたら何にしよう? ボクが弾けるもの挙げるとすればアコースティックギター、エレキ、ベース、シンセサイザー、ドラム………』
前世の家族が音楽一家だったから、両親の影響を受けて、ボクは色々と弾ける。
でも、クラシック系は苦手なんだ。
音楽一家と言えば、クラシック系と思う人が一定数いるけど、残念ながらボクはそっち系じゃない。
両親が一番好きだったのはウイちゃんだ。
幼稚園時代から、両親に連れられて赤いタオルを首に巻き、ドームとか武道館とかに行っていた口だったりする。
『必要最低限で考えても、それなりの出費は必要かな………』
以前の環境に比べて、今世では揃えなければならない物が多い。
そもそも、我が家には防音室がないんだ。
このまま歌えば下の階の住民の方々に迷惑が掛かる。
そもそもボクは正体を出来る限り隠してToutubeに投稿する予定だから、出来れば音楽活動は極秘に進めたい。そんな思いなのに、歌声が聞こえてて『近隣住民、皆知ってました』とか恥ずかし過ぎる。片腹抉れるわ。
取りあえず、防音室だけで400万円は覚悟しなければならないだろう。
考えれば考えるほど、目が回りそう。
『大体で試算すると、前世の年収なんて軽く超えるなぁ………』
Sランク男性様様だ。
『まぁ、出来れば最高の物をオークションかフリマで “最安値” で欲しいけどさ………』
他はマイクや撮影機材なんかも必要だよね。
スマホやパソコンに内蔵されているマイクだと、どうなんだろう?
前世では収録で使用したことがないから分からないけど、ここは妥協せずに一式買いの一択だ。
『そういえば、アカウントは新規作成するとして、配信活動する際のチャンネル名は何にしよう?』
ボクは腕を組んで考えてみるがパッと良いものが浮かばない。
前世のチャンネル名はちょっとフザけた名前だったから参考にならない。
『ここは単純に考えてみよう。配信活動する目的からいえば…………』
―――『to everybody』
でも、そのままじゃ恥ずかしいから、捻って『TE』。
2文字で読み方も考えると、適当に名前を付けた様な『あああああ』さんと同じレベルな気がする。名づけセンスは絶望的かも。
じゃあ、『Tоe』にすると………直訳がアレだし。
更にちょっと弄って…………
―――『TоE』
これなんて、どうだろうか。
『案外……悪くない。 うん、良いんじゃないかな。“TоE”で行こう!』
こうして、ボクのチャンネル名は『TоE』で決まった。
正直、読み方とか諦めて、文字の見栄えで決めた。
今後、音楽活動するなら『運動』もしないとなぁ。
此処からは、糊巻いて頑張っていこう。
◆◆◆◆◆
後に、『TоE』は世界的アーティストの仲間入りをして、一大人気を博すことになるが、この時のボクはまだ知らない。
いつの間にやら『E』を『Emperor』と勝手に当て嵌められ、ボクは恥ずかしくて身悶えることになる。
ボクの音楽に触れた多くの人たちは心を打たれ、感動し、『TоE』のファンは急拡大する。
全米が涙し、『始まりの木曜日』と伝説の様に語られる日は、もう目の前まで迫っていた。
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