18 / 32
第一章
018:浄化作業
しおりを挟む【Side:主人公】
「ビフォーアフター?」
ボクは玄関を見て、開口一番に疑問口調で言葉が漏れた。
前世の記憶に引っ張られて、匠の腕による劇的ビフォーアフターを見て見たかったんだ。まぁ、リフォームの話なんて一切聞いて無いんだけどね。
ボクは『 `・ω・´)フンス!』と家の奥へと探索してみると、以前と変わりない状態であった。
病院では結構色々な物を壊したという話を聞いていただけに、ここまで全く同じ状態に戻っているとはそれはそれで驚いた。家具や雑貨の1つでさえ代替品が使われていない。
リビングのソファーに座れば、正面は大きなガラス張りのダイナミックパノラマウインドウ、そこに広がる世界は見事な絶景だ。
以前のボクは、よく平気な顔で此処に住めていたなぁと良くも悪くも関心した。なんか、前世の高級ホテルにあるというペントハウスみたいなんだ。
「出来る限り以前同様に修繕されているのですが、問題ありませんでしたでしょうか?」
「青山隊長、一切問題ありません。正直驚きました。全く以前と同じです」
「であれば、良かったです。それでは我々護衛官はこれにて失礼致します」
「その、お礼をお伝えするのが遅くなりましたが、改めてボクを我が家まで送り届けて頂きありがとうございました」
「いえ、お気になさらず。今後も出掛ける際や何かあった際には気軽にお呼び下さい。我々はいつでも掛けつけます。では」
青山隊長はそういって胸に右手を当て、優雅な一礼をし、他の護衛官を引き連れ去っていった。
◆◆◆◆◆
「さて、浄化作業しますか」
ボクは1人になって早々、予定していた浄化作業に取り掛かることにした。
まるで何処ぞの大怪盗気分で我が家の金庫のダイヤルを回し、金庫の扉を少し開けてみれば、黒き瘴気が漏れ出す(幻覚)。
―――この金庫の中にあるのは全て不浄の物ぞぉ!
中にあるのは、どれもこれも『藤原優斗』さんの物ばかり。
完全に金庫の扉を開いてみれば、その中では正面に置かれているガラスケースが特に異彩を放っていた。
飽くまで、『嘗て』1番気に入っていたブロマイドだ。
以前のボクは本当に頭がどうかしていた…………。
こんな風に男が『バナナ(果物様)』を舌で『ペロペロ』、『チュパチュパ』しているものを気に入っていたなんて、例え『生サイン』入りの物だったとしても、信じらんないよッ!
ボクは確りと軍手を両手に付けて、丁寧に1つ1つを品を取り出していった。これから写真を撮って転売する予定なんだ。
男女ともに藤原さんは人気だからね、ネットで転売すれば買い手は直ぐ見つかると思うんだ。
「あッ! これって、藤原さんが『新人アナウンサー』だった頃の記念ポスターだ~。懐かしい~」
作業を進めていると、ボクは時より手を止めてコレクションに見入ったりした。
「この雑誌の表紙なんて水着姿でゾクゾクする!」
「これは伝説のシャワーシーン!! 洋服を着てても全身濡れているのが最高!! 特にこの羞恥心で染まった表情が大好き!」
「この写真集の上目遣いなんて反則的だよ~。胸がドキドキする~」
「この藤原さんM字開脚フィギュアなんて、もう堪ら……………Σ(,,ºΔº,,*)ハッ!!」
ボクは浄化作業しながら1人で盛り上がっていると気付いてしまった。
「――――なんという不浄な魔力ッッ!」
これが藤原さんの魅力。ボクはあまりの恐ろしさに冷や汗が出てきたので腕で拭った。
危うく以前の自分にトランスする所だった…………。これは超危険な劇物だ。
ボクは事前に転売でもしようかと思っていたけど、そんな時間的猶予はないのかもしれない。
ボクは走ってキッチンへと向かい、流し台の下からゴミ袋を持って来た。
行動とは裏腹に後ろ髪を引かれつつ、ボクは全ての元コレクションをゴミとして処分することにした。
「これも、それもポイポイポイッ!」
「あっちも、こっちもポイポイポイッ!!」
「藤原さんコレクションはポイポイ、のポイッ!!!」
「あ!!こ、これは、秘蔵コレクションッ…………。う゛~~、ポイッ!」
時より強大な魔力を秘めたアイテムもあって、ボクは涙を流す場面もあったけど、顔を背けながら激レア品も含めてゴミ袋へと捨てて行った。
ただ、我が家にある金庫は1つではなく、残り4つもあるので大忙しだ。勿論、その金庫たちも全部が藤原さんコレクションの為に用意された物で、かなりの量が詰め込まれている。
でも綺麗に整理整頓されていたから、じっくり眺めるなんて事をしなければ2時間で浄化作業は終了した。
全てのゴミ袋にはA4用紙に『絶対封印』という文字を書いて貼り付けておいた。
御札なんて『鎮火祭』の物しか我が家にはないからさ、仕方ない。
「うんしょ、うんしょ…………」
大きなゴミ袋は家の外の通路に並べて置いた。
これでゴミの日には管理人さんが来て、回収にしていってくれる。
こうして、漸くボクにとって心穏やかに暮らせる状況が整ったのだった。
0
お気に入りに追加
299
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

シン・三毛猫現象 〜自然出産される男が3万人に1人の割合になった世界に帰還した僕はとんでもなくモテモテになったようです〜
ミコガミヒデカズ
ファンタジー
気軽に読めるあべこべ、男女比モノです。
以前、私がカクヨム様で書いていた小説をリメイクしたものです。
とあるきっかけで異世界エニックスウェアに転移した主人公、佐久間修。彼はもう一人の転移者と共に魔王との決戦に挑むが、
「儂の味方になれば世界の半分をやろう」
そんな魔王の提案に共に転移したもう一人の勇者が応じてしまう。そんな事はさせないと修は魔王を倒そうとするが、事もあろうに味方だったもう一人の勇者が魔王と手を組み攻撃してきた。
瞬間移動の術でなんとか難を逃れた修だったが、たどり着いたのは男のほとんどが姿を消した異世界転移15年後の地球だった…。

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜
水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。
その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。
危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。
彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。
初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。
そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。
警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。
これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。

男女比1/100の世界で《悪男》は大海を知る
イコ
ファンタジー
男女貞操逆転世界を舞台にして。
《悪男》としてのレッテルを貼られたマクシム・ブラックウッド。
彼は己が運命を嘆きながら、処刑されてしまう。
だが、彼が次に目覚めた時。
そこは十三歳の自分だった。
処刑されたことで、自分の行いを悔い改めて、人生をやり直す。
これは、本物の《悪男》として生きる決意をして女性が多い世界で生きる男の話である。


男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にいますが会社員してます
neru
ファンタジー
30を過ぎた松田 茂人(まつだ しげひと )は男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にひょんなことから転移してしまう。
松本は新しい世界で会社員となり働くこととなる。
ちなみに、新しい世界の女性は全員高身長、美形だ。
PS.2月27日から4月まで投稿頻度が減ることを許して下さい。

男女比1:10。男子の立場が弱い学園で美少女たちをわからせるためにヒロインと手を組んで攻略を始めてみたんだけど…チョロいんなのはどうして?
悠
ファンタジー
貞操逆転世界に転生してきた日浦大晴(ひうらたいせい)の通う学園には"独特の校風"がある。
それは——男子は女子より立場が弱い
学園で一番立場が上なのは女子5人のメンバーからなる生徒会。
拾ってくれた九空鹿波(くそらかなみ)と手を組み、まずは生徒会を攻略しようとするが……。
「既に攻略済みの女の子をさらに落とすなんて……面白いじゃない」
協力者の鹿波だけは知っている。
大晴が既に女の子を"攻略済み"だと。
勝利200%ラブコメ!?
既に攻略済みの美少女を本気で''分からせ"たら……さて、どうなるんでしょうねぇ?
転生したら男女逆転世界
美鈴
ファンタジー
階段から落ちたら見知らぬ場所にいた僕。名前は覚えてるけど名字は分からない。年齢は多分15歳だと思うけど…。えっ…男性警護官!?って、何?男性が少ないって!?男性が襲われる危険がある!?そんな事言われても…。えっ…君が助けてくれるの?じゃあお願いします!って感じで始まっていく物語…。
※カクヨム様にも掲載しております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる