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第一章
011:キラキラした女の子(?)が向かいます
しおりを挟む【Side:リディア】
「ねぇねぇ、マミー。私さっき凄い女の子に会ったわ!」
私は先程の英語を話せる女の子との出会いが嬉しすぎてルンルン気分でマミーのいる所へ戻って来た。
今の此の感動をどう言えばマミーに上手く伝わるのかしら。
ここに来る前にも歩きながら考えていたけど、結局答えは出て来なかった。
こういう時は考えるんじゃなくて、感覚で突っ走るしかないわよね。マミーにもきっと今の私の気持ちが伝わる筈だわ。
「その娘ね、ハルカっていう名前なんだけど英語が話せるの。私、同年代の子とは久しぶりに英語で会話をしたわ」
「ふふふ、良かったわねリディー」
「名前からして多分日本人だと思うんだけど、ハルカはクイーンズ・イングリッシュの綺麗な英語を使うのよ。実は私ね、困っているところをハルカに助けてもらっちゃった」
「まぁまぁ、そのハルカちゃんっていう娘には感謝しなきゃね。リディーはちゃんと『ありがとう』って言えたのかしら?」
「勿論、言えたわよ。レディーの嗜みとして当然だもの。ハルカは私のヒーローだわ!」
この病院の庭に行って、ハルカに会った時の状況を今でも鮮明に思い出せる。
彼女の温かくて優しい笑顔はとても眩しかった。
助けに入ってくれた時から最後まで私を安心させてくれるような気遣いをずっと感じた。
「ハルカはね、英語だけじゃなくてスッゴク綺麗な子なんだよ。顔がマスクで隠れていて上半分が見えなかったけど、『スター性』って言うのかしら、持って生まれた物が普通じゃなかったの!」
「あらあら、そんなに凄い女の子と会ったのね~。リディーがお世話になったみたいだし私も会ってみたいわ~」
「マミーもハルカに会ってみれば絶対私と同じ印象を抱く筈よ。スッゴイ存在感なんだから!」
彼女とその周囲の空間だけが、私たちと住んでいる世界とは違うっていうのかしら。
常人ではあり得ないオーラを纏っていたように見えたのよね。しかも風に靡くプラチナブロンドの髪からは光の粒が零れてキラキラしていた。
自分の語彙力がどうしようもなくなるぐらいに圧倒されるレディーだったわ。
もしかして、ステイツのハリウッドスターなんかもあんな普通じゃないオーラを纏っているのかしら。見た事ないから比較できないわね。
「私、今とっても嬉しいって感情で溢れているわ。初めて日本に来て良かったって思ってるの」
そういえば彼女、顔にマスクを着けていたけど何でなんだろう。
患者衣を着ていたから入院しているって事よね。顔に怪我でもしたのかしら。
それとも何処か、身体が悪いのかしら。会ったのは今回が初めてだけど、とても心配だわ。
これからマミーが入院して、私も足繁く通ったり、時々寝泊まりするから、1回以上は会うことができるわよね。
その時に、聞いてみようかしら。でも、失礼があってはいけないわよね。そんなのレディーとしてダメダメよ。でも気になるわ。どうしたら良いのかしら。
そんな事を考えていると、漸く病院のスタッフが声を掛けて来た。
『長らく、お待たせ致しました。先に入院する部屋へ案内します。入院手続きはそちらの部屋でしますので、ついてきて下さい』
◆◆◆◆◆
【Side:主人公】
ムフ~、もうボクの目には英語が日本語にしか見えないよ。
英語と日本語の違いとは何ぞや? 前世の努力や苦労なんかを丸飲みして、あっという間に先に行っちゃう今世のボク。
これがチートボディー。前世でも欲しかったなぁ………。そしたら、あんな時やこんな時、助かったのになぁ。
お仕事しながらそんなことを考えていると、再び三宮先生が事務室に駆けこんで来た。
「ハルカく~ん、お願い助けてーーー!」
三宮先生が、まるで某アニメのノビオ君みたいだよ。パタパタと慌てて机に縋りついてきた。ボクは青いネズミ型ロボットのドツエモンじゃないよぉ。
取りあえず、ボクは外向きの表情でキリッとして三宮先生の方を見た。入院してから大体こんな感じで真面目な表情しているから、いい加減に肩が凝ってくるよ。早く我が家に帰りたいなぁ。
「えっと、……どうかされたのですか?」
「頼むことが増えて申し訳ないんだけど、とある外国人の方との通訳をして欲しいの!」
「英語ですか?」
「そうよ。だから、ハルカ君お願いッ!」
「もしかして、午前中に会ったリディアさんの通訳ですか?」
「その娘のお母さん」
「ボク男ですけど、また院長先生に確認しなくて大丈夫ですか?」
「そのマスクが院内フリーパスよ、それにハルカ君だから大丈夫!」
「まぁ、それなら大丈夫なのですかね?……その、引き受けても構いませんよ」
「ハルカ君、ありがとーーッ!」
本来はこうポンポンと仕事を安請け合いするべきではないんだろうけど、今回も仕方ないよね。三宮先生が困っているみたいだし、ボク自身も放っておけない。
前世で留学して思ったことだけど、外国人が来ることを想定されてない病院って大きな不安感を抱くんだ。唯でさえ異国の地という事で頼れる人なんて殆どいるわけもなく、まして今回言葉が通じてないからボクに通訳して欲しいと頼んできているのでしょ。きっとリディアさんやそのお母さんも不安に思っているんじゃないかな。助けてあげたい。
「ちょっと向かう前に着替えて良いですか?」
「その方がいいわね。私、部屋の外で待ってるわ」
ボクは三宮先生が部屋を出た後、上下の患者衣を脱いで身支度を整えていく。この衣擦れの音だけでもセクシーシーンとして、きっと多くの女性を興奮させることだろう。
もし何処かに盗撮カメラが仕込まれていたら、容赦なくスチル回収されて、大罪の乙女はグヘグヘ鼻血もん待ったなし。この世界のイケメンは中々大変だぁ! キョロキョロ((`ω´≡`ω´≡`ω´))キョロキョロ
まぁ、ここは男性病棟だからそういった事は確りと点検されていて問題ないだけどね………。
そうして、ボクはチャチャっと着替えが終わり、ベネチアンマスクを顔に着けて鏡を見る。やっぱり凄く良い感じだよ。患者衣とは違って、より魅力が増し増し黒毛和牛だね。女性が男装したような仮面の貴公子然としたキラキラオーラがある。
髪型オッケー、顔オッケー、服も靴もオッケー。完璧だよッ!
ボクは元気よくスライドドアを開けて廊下に出る。
「三宮先生、お待たせしましたッ。さぁ、行きましょう!」*.☆(´ω` *)*。:☆*。.☆*。
なんか三宮先生、『部屋の外で待っている』とか何と言っていたけど、結構離れた場所で待っていた。
ボクは声を出して部屋を出たから若干恥ずかしさを感じる。あ、三宮先生が手を振ってる………。
男性のお着替えする音を聞くのもNGなのかな―――音だけの世界って、エッチィもんね………。
こうして、ボクは三宮先生に案内してもらい男性病棟から移動した。
結構離れているみたいで滅茶苦茶歩く。歩いて歩いて、歩きまくる。迷路でも進んでいるように歩き続けたよ。これってボクが13歳だから歩幅が短いとか関係ないからね。
やっと辿り着いたと思ったら、産婦人科病棟に着いた。正直、少し息が上がっている。もしかすると男が無暗に近づけない様に離れた所に産婦人科病棟を構えているんじゃないかな。ボクは意図的なものを感じたよ!
ナースステーションの側に行くと新生児室があり、赤ちゃんたちがズラ~ッと並んでいた。
あ~、可愛いな。皆寝ているのか目を瞑ってスヤスヤしている。
ボクはここに来た目的を忘れて、少々見入ってしまった。
「可愛いですね」
「ハルカ君、赤ちゃんを見るのは初めて?」
「はい、ボク末っ子でずっと家にいたので、赤ちゃんを直接見ることはなかったんです。なんか、赤ちゃんって見ているだけで癒されますね。こう、胸が温かくなるというか、感極まるというか」
そんな事を呟く13歳の少年に違和感や不信感を抱くこと勿れ! 生命の神秘を前に感動するか否か、年齢は関係ないのだ。赤ちゃんは人類の希望。無垢なる天使様だよ。
なんか口をムニムニさせている赤ちゃんの仕草に母性ならぬ父性を感じる。愛くるしい~。
きっと、この赤ちゃんたちは皆『女の子』なんだろうな。
多分『男の子』だったら、こういう風に並んでいないと思う。360度、彼方此方にカメラが展開されて、護衛官も常駐し、“超”監視体制が敷かれて見守りされてたりするんじゃないかな。知らないけど………。ボクの時はどうだったんだろう。
「すいません、目的を忘れていました。向かいましょう」
「ごめんなさいね。後でゆっくり見て良いから」
そして、ボクはナースステーションの先に進むと、三宮先生から『ここの部屋よ』と案内され入室した。
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