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プロローグ
001:ちょっと未来の話をしよう
しおりを挟む【Side:????】
とある日の朝8時頃
テレビでは報道番組『特ダネブラボー』の放送が始まった。
「「「おはようございます」」」
番組の出出しは大倉さん、立井さん、谷崎さんの3人の女性アナウンサーによる挨拶から始まる。
「昨日、『ToE』様のアルバムが『世界』で初めて発売されました。ネットを介して行われた販売は“いつ”売りに出されるのか、その殆どが秘匿されていたにも拘らず、販売開始直後から僅か41秒で売り切れになったとの事です」
その言葉に番組の視聴者等の反応は様々であった。
『へー』と関心の薄い反応は一部だけ。………多くの女性たちは悲鳴を上げて崩れ落ち、発狂してバーサーカーとなり、悔しさのあまり血涙を流していた。
「ToE様は2年前に彗星の如くToutube界に現れ、テレビなどには一切出演することがなく、未だベールに包まれた謎多き人物ではありますが、ToE様の名は世界的トップアーティストの1人として誰もが認めている所でしょう」
『ToE』様――今やこの名前を知らない人間はこの世界に存在しない。
そう明言されるくらいには彼の名前は世界中に広がり、彼の作った神曲の数々はCMやドラマ、映画など様々な所で使われ、多くの人々に支持されていた。
Toutubeという動画配信サイトにて彼がアーティストとして活動したのは凡そ2年前からになるが、『ToE』という名前が本名か、ニックネームか、現在でも定かでない。
日本ではチャンネル名をローマ字読みして『トエ』と読み、人々からは『ToE様』と親しまれていた。
「ToE様の1つ1つにナンバリングされた限定1万枚のアルバムですが、その希少性から転売価格は高額な物となり、シングルナンバーについては優に1億円を超えるものと想定されています。 このたびのアルバムのジャケットによって、ToE様のその御身はこうして我々の前に顕現されました。視聴者の皆さんから見て、テレビ画面の右上……こちらの画像になります」
大倉さんの左手の先には1人の王子様が映った1枚のジャケット画像があった。
この方が、今を生きる伝説………
――『ToE』様である。
Toutubeでも本人から事前告知がなされていたが、このアルバムによって漸く彼の全身が世間に公開された。
腕や足はスラリと伸びて高身長である事が伺え、髪はプラチナブロンドのショートボブ。
肝心の顔面は上半分がベネチアンマスクで隠されていても、その御尊顔はいくらマスクをしたとて到底隠しきれないイケメン度を誇っていた。
正に『美』の頂点。あまりに人間離れした芸術的とも言えるイケメンの中のイケメン。
国宝……否ッ!! 世界の至宝が降臨されたのである。
ToE様の透き通るような白き美肌や顔の輪郭、優しく微笑む表情――テレビ越しであってもToE様の姿を拝む機会に恵まれた全ての視聴者は日本中で『ガタッ!』と挙動不審な動きをし、テレビを視線だけで貫き壊さんばかりに凝視した。
ちなみに、ToE様が配信してきた既存の曲たちは英語の歌詞である事から、住まう拠点はアメリカやイギリスなどの英語圏の男性ではないかと多くの者に推測されていた。
「ToE様の数々の神曲はどうして此れ程に我々を魅了する力があるのでしょう。『特ダネブラボー』ではこれまで何度もアプローチを試みていましたが、漸くToE様に『初』の独占インタビューする事に成功しましたッ!」
拳を握り力強く語られた大倉さんの言葉によって、霰もない姿と化していた多くの視聴者は完全にその体の動きを止め、呼吸すら忘れ、目を見開いて大きな衝撃を受けた。
視聴者は一斉に悪い子から良い子に戻り、姿勢を正してテレビの前に正座待機する。そして、テレビを食い入るように番組の続きを視聴した。
中には器用な強者がいて、視線は決してテレビから離さずスマホを片手で操作し、ネット掲示板に『特ダネブラボー』の快挙を拡散する者までいた。
この日、『特ダネブラボー』は過去最高の圧倒的視聴率を記録するのだった。
◆◆◆◆◆
所変わって、『日本』のとあるタワーマンションの最上階では
可愛い2頭身フィギュアのように化けた1人の男性が右手にコーラ、左手にポテチを抱え、着ぐるみパジャマ(兎様)を装備して朝の報道番組――『特ダネブラボー』を見ていた。
何を隠そう、この男性こそが『ToE様』………御本人である。
本名は『三井 遥』。普段の彼は180cmを超える高身長だ。プラチナブロンドの髪色を見れば分かるであろうが、彼は某国の白人の血が流れた所謂ハーフである。
目は少し垂れ目で、右目にはチャームポイントで泣き黒子があり、その顔立ちは女性寄りの中性的な甘いマスクをしている。
100万人の女性が見れば、100万人の女性が彼に一目惚れする程の超絶的な『イケメン』だ。
世界中の女性たちは音楽業界の第一線で活躍する彼に敬意を表し、こう呼―――
「――ハッ!?」(;゚ω゚)!?
「………誰かの気配を感じたぁ」(゚Д゚;≡;゚Д゚) ‼キョロキョロ
「今も、誰かの視線を感じる。誰かに見られてるよ……(プルプル)」
「えぇぇ、何だろぉぉ。怖いな、寒気が止まらないぃぃ(プルプル)。もしや、これは殺気かッ!?」
「もしかして盗聴器。それとも隠しカメラかな。………どこだろ、ここかな。こっちかな。それとも此処かな。ムム~ッ!!(ゴソゴソ、ゴソゴソ)」
『コホン』……まぁ、その、あれです。ToE様はこのような個性的な男性ではありますが、人々は彼をこう呼んだりもするんだ――――『音楽界の皇帝』ってね。
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