超ショートショート インスタントフィクション

ヒーローの誕生

　立派に蓄えた白鬚を撫でながら、壇上の老人が口を開いた。
「では発表する。レッド、田中健太」
　拍手と歓声に送られ、田中はレッドスーツと変身ベルトを受け取った。
　田中がレッドに選ばれるのは分かり切っていた。厳しい戦闘訓練で並外れた成績を残していたからだ。
　ブルーもきっとあいつだろう。俺が選ばれるとしたら、グリーンしかない。
　ブルーも予想通りの結果になり、ついにグリーンの発表だ。
「グリーンは…」
　大きく歓声が上る。視線が一斉に自分に集まり、ようやく気付いた。俺が選ばれたんだ。天にも昇る気持ちだった。イエローが誰になったのかも分からなかった。
「最後にピンクは、真由だ。よくやったな真由」
　一瞬の沈黙の後、どよめきが広がる。　
　やっぱ校長とできてんじゃん。
　モブにやられろよ。
　周囲の心無い声が聞こえる。隣の真由は耐え切れず、俯いてしまっている。
　俺は真由の手を強く握った。驚いて見上げた真由に言った。
「絶対に帝国を倒そう」