NPCでもスローライフを送りたい~ギルドを追放された俺、NPCに転生したのでスローライフを目指したいと思います~

七瀬ねこ男

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Ⅰ章:叡智の塔攻略編

6:叡智を求めて

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クルスさんの治療生活が始まって約2週間。

だいぶクルスさんの精神は安定してきていた。

クルスさんが倒れた原因、それは『精神病』。

恐らくクルスさんのもう一つの人格が『泣く』と言う行動に出たため、本来のクルスさんの人格に何かしらの障害が起きたのだと俺は推測している。

もしくは―――



「レン君!

ここに来たならクルスちゃんのお見舞いだけじゃなくて少しくらい手伝ってもらえれば助けるんだけど…いいかな?」



この医療センターで働いているおじさん、『オリビア・ユーラス』さん。

周りの人からは通称、『オリさん』と呼ばれいている。

とても優しい人で、仲間思い。

俺を含むこの医療センターの皆さんの兄貴分的な存在だ。



「全然いいですよ!」

「本当!?

ありがとう!

助かるよ!!」



たまには‥人助けもいいな。

‥‥‥



「本当に‥無事で良かった」

「レン、無駄口叩いてないでオリさんの手伝いをしなさい」



紫紺の瞳、髪色は黄色でショートの髪の彼女は『フィルス・リリアン』さん。

周りからは通称『フィルさん』と呼ばれているが彼女自身はあまり言われたくはないらしい。



「すみません!」

「たく‥」



怒ったらすっごく怖い人だけど、根は普通に優しい人だ。

こんな俺でも怪我などをしたら家族のように心配してくれる。

その対応は俺だけでは無く、この医療センターの人全員に対しての行動だ。

人を見た目で決めつけないとはこの事だな。



俺がなぜこの人たちの事をこんなに知っているかと言うと…

2週間連続でこの医療センターに来ているからだ。

さすが覚える。

と言うか、覚えてしまう。

時にはまさに今のように医療センターで働く人をサポートしたりもするし、話をしたりもする。



「ふー。

運び終わったー!」

「レン君!

手伝ってくれてありがとうな!!」

「いえいえ!全然大丈夫ですよ!!」

「レン。ありがとね」

「いやいや、フィルさんまで。

全然いいですよ!」

「おい!

何回言ったら分かるんだ!?

『フィル』って言い方やめろって言ってんだろ!」

「あ。いつものフィルさんだ」

「だからやめろって!」



これの通り、フィルさんはフィルさんと呼ばれるのが嫌らしい。



そしてレン、オリビア、フィルスの前にある一人の男が現れた。

青い髪色、白衣を着た彼はこの医療センターで唯一の医者、そしてクルスの担当の医者の彼の名は―――

『エベルス・ブエルスト』。



「エベルスさんじゃないですか!

どうされました?」

「レン様‥非常に申し出にくい話となりますが‥よろしいでしょうか?」

「全然いいですけど…」

「実は…現在のクルス様の健康状態が良くないんです…」

「え?」



俺は戸惑った。

普通にクルスさんは喋ることも出来る。

笑うことも。



「もう少し、詳しく教えてくれませんか?」

「はい…実はクルス様は『エルデンズ』と言う名のウイルスを持っていたことが判明しました。

恐らく原因は『エルデンズ』を持っていた人から移ってしまったのだろう。

『エルデンズ』に感染してしまうと治療は不可能となり、感染した約1週間後には…

死亡を‥してしまいます」

「そんな…」



信じたくはなかった。

クルスさんは咳をたまにしていた。

「まさかな‥」程度に思っていたが…

もう覚悟を決めないといけないな。



「覚悟は決めて‥あります」

「……………」

「どうしました?」

「いや‥本当にこれは危険な手段なんですけど…もしかしたら、クルスさんを救えるかもしれません」

「え?」

「ですが本当にこれは危険で―――」

「やります!」

「え?」



レンの顔は正にやらせてくださいを表現していた。



「………分かりました‥でも、本当に危険ですから、注意してくださいね」

「はい、クルスさんを救えるなら…

何でもします」

「分かりました。

ではその手段を説明させていただきます。

アース大国と言う国には『叡智の塔』と言う塔があります。

そこの最上層にはアース大国、国王及び、叡智の王『ルージュラー・アース』が住んでいます。

ルージュラーは叡智の王、全てを知っています。

誰もがルージュラーに知恵を貸してもらいたいと願っている程、ルージュラーは全てを知っています。

なのでルージュラーに『エルデンズ』の治療法を聞けば答えが出るのかも知れません」



確かに、そんなに知恵を貸してもらいたいと願っている人がたくさんいるなら信憑性も出てくるな…



「で。その叡智の王、ルージュラーが住んでいる『叡智の塔』の最上層ってどうやって行けるんですか?」

「…………攻略です」

「え?」

「叡智の塔を攻略して行くんです。

第0層から」

「え…攻略って…」

「はい。各層の魔物を倒していき、上の層へ登っていくんです」

「ちなみに…最上層って第何層なんですか?」

「第100層です」

「―-俺、たどり着くまでに死んじゃいそうなんだけど‥」

「あのさ‥レン、俺も…レン君と一緒に叡智の塔の攻略、手伝うよ」



そう発言をしたのはオリビアだった。



「オリさん!?

別に無理しなくても良いんですよ!?」



「いや‥俺はレン君と一緒に行きたいんだ。

これまでの恩返し的な理由でね。

それに‥君は良いNPC‥いや、『良い人』だからさ、死んでほしくないんだ」



それに連なってフィルスも喋り始めた。



「私も‥レンと一緒に叡智の塔の攻略、手伝うよ」

「フィルさんまで!?」

「このレンとの2週間さ、いろいろあったけど…なんだかんだレンには助けてもらったりしたからさ。

オリと同じようにこれまでの恩返し的な理由だよ。

それに‥レンはなんだかんだ私の言う事聞いてくれたじゃん。

嬉しかったんだよ。

だから‥その感謝の気持ちも込めて…私とオリはレンの望む事に協力するよ」



涙が溢れた。

ポツンと流れ始めた一滴の涙がこぼれた。
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