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お嬢様陰陽師、心霊団地に立つ…
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ブチンッと黒獣の首が食い千切られて鮫の口元から転がり黒い煙になり消滅した。
巨大な空飛ぶホオジロザメ…富嶽が黒い獣達を全て食い殺し、負傷した警察官達は馬に死者はなく馬取《まとり》が呼んだ救急車で応急処置を受け病院に運ばれた。
「何だよ、あの“黒い犬”は⁉あんなのがいるなんて情報はなかったぞ!」
馬取は取り乱して怒鳴り散らすが、薙は獣が何かであるのかを見抜いた。
「恐らくは“犬神”でございます。しかもかなり多い。
…犬神は術師一人なら使役出来るのは1匹、なのに今の襲撃でも七匹程おりました。
この区域は確か心霊スポットになる前は“成神の会”と云うカルト集団が不法占拠されておられましたよね?」
「犬神はよく分からんが…、薙ちゃん成神の会知ってたのか。
この空庭団地は十年前に老朽化で取り壊しが決まり住居者も全員出たんだが、その後に何処から湧いて出たのか“成神の会”っつう男女50人程の集団が此処を不法占拠してな。
成神の会は国から宗教法人認定を認められなかったカルト集団で警察からの警告を無視して数ヶ月以上占拠は続いて一週間くらい機動隊とも睨めっこだったが、ある日50人全員が忽然と機動隊の前から消えちまった。」
「十年前…、怪異霊障災害が国から認定されましたのも十年前。
当時の機動隊では対処出来ない何かが起きた可能性がありますわね。」
「あぁ、だが今は調べてる暇はない。薙ちゃん、苦労かけてすまないが頼めるか?」
馬取に頭を下げられ、それを見た薙は少し困った顔をすると手にしていた長物を袋から出す。長物は鍔のないポン刀、彼女はポン刀をスラリと抜いて鞘を放り捨てた。
「頼まれました。依頼料はいつもの口座にお願い致します。」
「りょーかい。」
薙の傍らに宙を泳ぐ巨大な鮫…富嶽が寄り添い、彼女が左指をパチンッと鳴らし、「三原色!」と掛け声を上げる。すると彼女のセーラー服の襟の裏から軟式ボール程の大きさをした球体が3つ飛び出した。
赤青黄色の球体は3つとも五芒星…晴明判紋があり、薙の周りをポンポンと弾み回る。
「青魅、黄身、赤海、馬取さん達を守ってあげて。」
赤海、青魅、黄身は鬼閂薙の創り出した式神である。普段はセーラー服の襟の裏に隠れているが彼女の呼出に応じ、常時依頼時で薙のサポートに入る。戦闘にも参加する事も多い万能な鬼閂流の式神である。
彼女の指示で3つの色玉は警察の捜索チームの周囲を大きくを飛び跳ね始めた。
薙はポン刀の刀身の背を額にあて目を閉じる。
刀身をアンテナにし、空庭団地周辺区域に広がる中で瘴気が一番濃い場所に行方不明者達がいる可能性が高いと判断し、瘴気の濃い場所を探す。
(恐らくは濃い場所が行方不明者がいて犬神を祀る祭壇がある。其処を破壊すれば犬神を浄化出来る筈…。)
「お願い、夜霧。」
“夜霧”とは彼女の持つポン刀の名である。元々はとある暴力団の組長が家宝として所有していた物で、代々刃を抜く事が禁じられていた妖刀であった。…だが経緯は不明だが組頭がそのポン刀を抜いて組員数人を殺害、その場で他の組員により射殺されている。
組長はその事件でポン刀を鬼閂本家に預け、手放したそうだ。
しかし現在は彼女の手に握られ、妖しく刀身を煌かせる。
薙は更に意識を妖刀夜霧に集中し、瘴気の高い方角を感じ取った。
「ふふ、この手の厄災はやはり方角は決まっておりますわね。」
そう嗤って吐き捨て、薙は北東を睨み、身を低くすると妖刀夜霧を右腰に地面と水平に据える。
「鬼閂流陰陽師・鬼閂薙、推して参ります!」
そう呟き、薙は地を蹴り駆け出した。空庭団地周辺の瘴気が濃度を増し無数の黒犬が何処からともなく現れ、薙に襲いかかる。
「富嶽!」
彼女の呼び声に富嶽は前に出て迫り来る5体もの黒犬をその巨大な顎に咥え込み、ガツガツと上下に動かして呑み込んでしまうが3体を逃してしまい彼女に迫った。
薙は怯む事なく右腰に据えた妖刀夜霧を横薙ぎに一閃、黒犬の上顎から下顎が首までパックリと割れて霧散した。そして2体目を透かさず上段斬りで真っ二つに、3体目を切り返し斬り上げてやはり真っ二つにすると直ぐ様富嶽の左胸鰭に右足をかけて背中に飛び乗り背鰭に掴まる。
「犬神は美味しかったかしら、富嶽?」
薙の問いを聞いた富嶽は嫌嫌でもする様にぶんぶんと尖った鼻先を大きく右左に振り、薙は少し苦笑して見せる。
「それは残念。…でも出来るだけ平らげなさいな、残しても有害にしかなりませんから。」
富嶽は彼女を背に乗せたまま団地棟最上階までの高さまで上がり、薙は臆する事なく夜霧の切っ先を北東に向けて差し示す。
「目指すは最北東…鬼門に建つ五号棟ですわ、行け富嶽!」
富嶽は“グワアオオオウッ!!!!”と薙に応えて凄まじい咆哮を上げ、夜霧が指し示した鬼門へと向けた。
巨大な空飛ぶホオジロザメ…富嶽が黒い獣達を全て食い殺し、負傷した警察官達は馬に死者はなく馬取《まとり》が呼んだ救急車で応急処置を受け病院に運ばれた。
「何だよ、あの“黒い犬”は⁉あんなのがいるなんて情報はなかったぞ!」
馬取は取り乱して怒鳴り散らすが、薙は獣が何かであるのかを見抜いた。
「恐らくは“犬神”でございます。しかもかなり多い。
…犬神は術師一人なら使役出来るのは1匹、なのに今の襲撃でも七匹程おりました。
この区域は確か心霊スポットになる前は“成神の会”と云うカルト集団が不法占拠されておられましたよね?」
「犬神はよく分からんが…、薙ちゃん成神の会知ってたのか。
この空庭団地は十年前に老朽化で取り壊しが決まり住居者も全員出たんだが、その後に何処から湧いて出たのか“成神の会”っつう男女50人程の集団が此処を不法占拠してな。
成神の会は国から宗教法人認定を認められなかったカルト集団で警察からの警告を無視して数ヶ月以上占拠は続いて一週間くらい機動隊とも睨めっこだったが、ある日50人全員が忽然と機動隊の前から消えちまった。」
「十年前…、怪異霊障災害が国から認定されましたのも十年前。
当時の機動隊では対処出来ない何かが起きた可能性がありますわね。」
「あぁ、だが今は調べてる暇はない。薙ちゃん、苦労かけてすまないが頼めるか?」
馬取に頭を下げられ、それを見た薙は少し困った顔をすると手にしていた長物を袋から出す。長物は鍔のないポン刀、彼女はポン刀をスラリと抜いて鞘を放り捨てた。
「頼まれました。依頼料はいつもの口座にお願い致します。」
「りょーかい。」
薙の傍らに宙を泳ぐ巨大な鮫…富嶽が寄り添い、彼女が左指をパチンッと鳴らし、「三原色!」と掛け声を上げる。すると彼女のセーラー服の襟の裏から軟式ボール程の大きさをした球体が3つ飛び出した。
赤青黄色の球体は3つとも五芒星…晴明判紋があり、薙の周りをポンポンと弾み回る。
「青魅、黄身、赤海、馬取さん達を守ってあげて。」
赤海、青魅、黄身は鬼閂薙の創り出した式神である。普段はセーラー服の襟の裏に隠れているが彼女の呼出に応じ、常時依頼時で薙のサポートに入る。戦闘にも参加する事も多い万能な鬼閂流の式神である。
彼女の指示で3つの色玉は警察の捜索チームの周囲を大きくを飛び跳ね始めた。
薙はポン刀の刀身の背を額にあて目を閉じる。
刀身をアンテナにし、空庭団地周辺区域に広がる中で瘴気が一番濃い場所に行方不明者達がいる可能性が高いと判断し、瘴気の濃い場所を探す。
(恐らくは濃い場所が行方不明者がいて犬神を祀る祭壇がある。其処を破壊すれば犬神を浄化出来る筈…。)
「お願い、夜霧。」
“夜霧”とは彼女の持つポン刀の名である。元々はとある暴力団の組長が家宝として所有していた物で、代々刃を抜く事が禁じられていた妖刀であった。…だが経緯は不明だが組頭がそのポン刀を抜いて組員数人を殺害、その場で他の組員により射殺されている。
組長はその事件でポン刀を鬼閂本家に預け、手放したそうだ。
しかし現在は彼女の手に握られ、妖しく刀身を煌かせる。
薙は更に意識を妖刀夜霧に集中し、瘴気の高い方角を感じ取った。
「ふふ、この手の厄災はやはり方角は決まっておりますわね。」
そう嗤って吐き捨て、薙は北東を睨み、身を低くすると妖刀夜霧を右腰に地面と水平に据える。
「鬼閂流陰陽師・鬼閂薙、推して参ります!」
そう呟き、薙は地を蹴り駆け出した。空庭団地周辺の瘴気が濃度を増し無数の黒犬が何処からともなく現れ、薙に襲いかかる。
「富嶽!」
彼女の呼び声に富嶽は前に出て迫り来る5体もの黒犬をその巨大な顎に咥え込み、ガツガツと上下に動かして呑み込んでしまうが3体を逃してしまい彼女に迫った。
薙は怯む事なく右腰に据えた妖刀夜霧を横薙ぎに一閃、黒犬の上顎から下顎が首までパックリと割れて霧散した。そして2体目を透かさず上段斬りで真っ二つに、3体目を切り返し斬り上げてやはり真っ二つにすると直ぐ様富嶽の左胸鰭に右足をかけて背中に飛び乗り背鰭に掴まる。
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薙の問いを聞いた富嶽は嫌嫌でもする様にぶんぶんと尖った鼻先を大きく右左に振り、薙は少し苦笑して見せる。
「それは残念。…でも出来るだけ平らげなさいな、残しても有害にしかなりませんから。」
富嶽は彼女を背に乗せたまま団地棟最上階までの高さまで上がり、薙は臆する事なく夜霧の切っ先を北東に向けて差し示す。
「目指すは最北東…鬼門に建つ五号棟ですわ、行け富嶽!」
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