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貧民街の孤児院…1
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城下町端の第四騎士団庁舎から城下寄りのアルカナ教団施設孤児院はとても近い。歩いて行ける距離でもあるが、マタザは毎回…「歩くのヤじゃ、面倒臭い。」…と我が儘を言って馬車を出している。
前方に第四・百人隊に所属する騎士オストの騎馬一頭が先導、マタザとネレスが乗る馬車の馭者を騎士バース。背後の警護を女騎士ニキータが着いて貧民街へ入る。
華やかな城下とは違い、貧民街は城下よりも貧しく、そして犯罪者が身を隠しとても治安が悪い。浮浪者が当たり前の様に通り端にゴロ寝をしてチンピラ同士の喧嘩も目立つ街であった。
孤児院は二十年程前にヴェルトール王国とアルカナ教団共同による戦災孤児救済の為に作られたが、実際には王国側は運営責任を教団に丸投げにし、御布施…運営資金を教団に払うだけであった。
マタザはそこに王国と教団の怪しい関係を感じはするのだが、孤児院の子供達が健やかでいるならどうでも良かった。今はネレスとシスター・レェナの仲違いを清算である。
「ネレス、孤児院に帰ったらしっかりシスター・レェナと話をするんじゃぞ。今のお前がいるのは確実にシスターのお陰なのだからな。
あの娘が訴え出なければお前は犯罪奴隷として鉱山に送られていたのだからな。」
「…分かっているよ。」
ネレスはまだふてくされた態度でいるがその表情には不安だけではなく期待の様なものを滲ませていた。
「団長、着きましたよ。」
馭者の騎士バースが馬車の中の二人に声をかけ、ネレスが先に降りてマタザが続いて降りた。
孤児院の建物は修繕がされてない箇所が多く、かなり老朽化が進んでいた。窓からは灯りが漏れて…、女性の嫌がる叫び声と男の脅声が聞こえた。
「いやあ、離してえ!!」
「大人しくしてろ、お前が我慢すりゃあ生活も今より良くなるんだぜ。
…もう覚悟きめちまえよ。」
マタザとネレスが扉の前に立つと女性の悲鳴が建物に響いた途端、ネレスが扉を乱暴に開けたかと思った瞬間に俊敏に侵入、背後から男の短髪を鷲掴み、喉元に短剣を押し当てた。男はズボンを脱いでおりだらし無く“竿”を丸出しにしていた。
男の下には服を引き裂かれた修道女レェナが惚けた表情で涙を流しながらネレスの顔を見つめていた。
「…ネス?」
「レナ…。」
二人は愛称で呼び合うがネレスは服を引き裂かれ剥き出しになる乳房…めくれた長いスカートからは太ももが見えてしまいネレスは下を向く。レェナは右手で隠し、スカートを直すと悔しげにポロポロと泣きながら呟いた。
「お願い、見ないで…。」
そして開いたままの扉をガツン!と蹴飛ばして両肩を怒らせながら荒い鼻息を鳴らしながらマタザが入って来た。
「団長、此奴殺したい。」
ネレスが掴んだ髪を引っ張り短剣の刃を更に押し付けて喉元に僅かな切れ目を付けた。傷端からは血が細く流れ、男は目尻に涙を溜める。
「や、、やだぁ、殺さないで⁉」
男の命乞いを聞いてマタザの青筋が蜘蛛の巣の様に浮き上がる。
「儂も殺したいが、今は殺すな。」
ネレスは苦虫を噛む様な顔になり男の喉元から短剣を離し、上着を脱ぎレェナに寄り添い肩にかけてやる。レェナはネレスの上着で体を隠すとネレスの胸に寄り掛かり泣きじゃくる。
「レナ、ごめん。」
ネレスは彼女を包む様に抱き締めた。マタザはそんな二人を見守るがその隙を突いたつもりか、男が立ち上がり開けっ放しの扉へと駆け出した。
…だが扉にはオストとニキータが立ち塞がってオストが右腕、ニキータが左腕を掴み取り、二人同時に捻り上げた。
“ボキッ。”
「ギイヤアアアッ⁉」
「オスト、右腕からイヤな音したわよ。」
「…折っちまったかな?」
二人は無造作に手を離し、男は地べたに倒れ込み右腕を押さえて涙を流して謝り出した。
「ごめんなさい御免なさいゴメンナサイ…、お願い、許して…」
そこにマタザが来て男の頭を踏みつけた。
「むぐふっ⁉」
「謝ったら許すとでも思うたか、このたわけめ!
オスト、バースと一緒にこの糞カスを建物裏の木にでも縛り付けて置け。折れた腕が痛む様きつくな。…ニキータ、ついて来い。」
マタザは足をどけ、ニキータを連れてまたレェナ、ネレスの二人の方へと行き、男はオストに乱暴に起こされ、折れた腕の激痛で悲鳴を上げていた。
住居部屋のドアを通り過ぎようとした時、向こう側から数人の子供の啜り泣く声が聞こえてマタザは静かにドアを開けると…、そこには三人の子供達が泣き顔でマタザを見上げた。
子供達はマタザを見た途端に“わっ”、と大声で泣き出してしまう。そんなマタザは先程の鬼の形相から憑き物が取れたかの様な穏やかな表情となる。
「おじちゃ…、おねえちゃんは?」
えっぐえっぐと嗚咽を繰り返しながら幼い少女がマタザに聞く。
「大丈夫だよミーア、シスター…おねえちゃんは無事だ。
安心して寝なさい。」
「うん…。」
マタザがミーアと呼んだ幼女は嗚咽を繰り返しながら泣き止もうと我慢の表情を浮かべ、もう一人の幼女が出っぷりしたマタザの腹に無言でしがみつく。マタザはその娘の頭を優しく撫でるとミーアと同じく優しく声をかける
「ヤナ、大丈夫。大丈夫じゃ。」
そして後ろで一番年長の男の子…ヴァイが涙を流しながら必至に口をへの字にして声が出るのを我慢していた。
「ヴァイ、コッチに来なさい。」
ヴァイは力なくマタザの前で立ち止まるとマタザはミーアと同じ様に涙を我慢するヴァイを優しく撫でた。ニキータはそんな光景を後ろで見ているとマタザが立ち上がり子供達に背中を見せた。
「ニキータ、子供達を寝かしつけろ。落ち着いたら建物裏まで来い。」
その顔はまた凄まじい鬼の物となっていた。ニキータは「はーい。」と気のない返事を返しながらも戦慄していた。
(団長の怒り顔、久々に見たわ。……怖すぎ!)
前方に第四・百人隊に所属する騎士オストの騎馬一頭が先導、マタザとネレスが乗る馬車の馭者を騎士バース。背後の警護を女騎士ニキータが着いて貧民街へ入る。
華やかな城下とは違い、貧民街は城下よりも貧しく、そして犯罪者が身を隠しとても治安が悪い。浮浪者が当たり前の様に通り端にゴロ寝をしてチンピラ同士の喧嘩も目立つ街であった。
孤児院は二十年程前にヴェルトール王国とアルカナ教団共同による戦災孤児救済の為に作られたが、実際には王国側は運営責任を教団に丸投げにし、御布施…運営資金を教団に払うだけであった。
マタザはそこに王国と教団の怪しい関係を感じはするのだが、孤児院の子供達が健やかでいるならどうでも良かった。今はネレスとシスター・レェナの仲違いを清算である。
「ネレス、孤児院に帰ったらしっかりシスター・レェナと話をするんじゃぞ。今のお前がいるのは確実にシスターのお陰なのだからな。
あの娘が訴え出なければお前は犯罪奴隷として鉱山に送られていたのだからな。」
「…分かっているよ。」
ネレスはまだふてくされた態度でいるがその表情には不安だけではなく期待の様なものを滲ませていた。
「団長、着きましたよ。」
馭者の騎士バースが馬車の中の二人に声をかけ、ネレスが先に降りてマタザが続いて降りた。
孤児院の建物は修繕がされてない箇所が多く、かなり老朽化が進んでいた。窓からは灯りが漏れて…、女性の嫌がる叫び声と男の脅声が聞こえた。
「いやあ、離してえ!!」
「大人しくしてろ、お前が我慢すりゃあ生活も今より良くなるんだぜ。
…もう覚悟きめちまえよ。」
マタザとネレスが扉の前に立つと女性の悲鳴が建物に響いた途端、ネレスが扉を乱暴に開けたかと思った瞬間に俊敏に侵入、背後から男の短髪を鷲掴み、喉元に短剣を押し当てた。男はズボンを脱いでおりだらし無く“竿”を丸出しにしていた。
男の下には服を引き裂かれた修道女レェナが惚けた表情で涙を流しながらネレスの顔を見つめていた。
「…ネス?」
「レナ…。」
二人は愛称で呼び合うがネレスは服を引き裂かれ剥き出しになる乳房…めくれた長いスカートからは太ももが見えてしまいネレスは下を向く。レェナは右手で隠し、スカートを直すと悔しげにポロポロと泣きながら呟いた。
「お願い、見ないで…。」
そして開いたままの扉をガツン!と蹴飛ばして両肩を怒らせながら荒い鼻息を鳴らしながらマタザが入って来た。
「団長、此奴殺したい。」
ネレスが掴んだ髪を引っ張り短剣の刃を更に押し付けて喉元に僅かな切れ目を付けた。傷端からは血が細く流れ、男は目尻に涙を溜める。
「や、、やだぁ、殺さないで⁉」
男の命乞いを聞いてマタザの青筋が蜘蛛の巣の様に浮き上がる。
「儂も殺したいが、今は殺すな。」
ネレスは苦虫を噛む様な顔になり男の喉元から短剣を離し、上着を脱ぎレェナに寄り添い肩にかけてやる。レェナはネレスの上着で体を隠すとネレスの胸に寄り掛かり泣きじゃくる。
「レナ、ごめん。」
ネレスは彼女を包む様に抱き締めた。マタザはそんな二人を見守るがその隙を突いたつもりか、男が立ち上がり開けっ放しの扉へと駆け出した。
…だが扉にはオストとニキータが立ち塞がってオストが右腕、ニキータが左腕を掴み取り、二人同時に捻り上げた。
“ボキッ。”
「ギイヤアアアッ⁉」
「オスト、右腕からイヤな音したわよ。」
「…折っちまったかな?」
二人は無造作に手を離し、男は地べたに倒れ込み右腕を押さえて涙を流して謝り出した。
「ごめんなさい御免なさいゴメンナサイ…、お願い、許して…」
そこにマタザが来て男の頭を踏みつけた。
「むぐふっ⁉」
「謝ったら許すとでも思うたか、このたわけめ!
オスト、バースと一緒にこの糞カスを建物裏の木にでも縛り付けて置け。折れた腕が痛む様きつくな。…ニキータ、ついて来い。」
マタザは足をどけ、ニキータを連れてまたレェナ、ネレスの二人の方へと行き、男はオストに乱暴に起こされ、折れた腕の激痛で悲鳴を上げていた。
住居部屋のドアを通り過ぎようとした時、向こう側から数人の子供の啜り泣く声が聞こえてマタザは静かにドアを開けると…、そこには三人の子供達が泣き顔でマタザを見上げた。
子供達はマタザを見た途端に“わっ”、と大声で泣き出してしまう。そんなマタザは先程の鬼の形相から憑き物が取れたかの様な穏やかな表情となる。
「おじちゃ…、おねえちゃんは?」
えっぐえっぐと嗚咽を繰り返しながら幼い少女がマタザに聞く。
「大丈夫だよミーア、シスター…おねえちゃんは無事だ。
安心して寝なさい。」
「うん…。」
マタザがミーアと呼んだ幼女は嗚咽を繰り返しながら泣き止もうと我慢の表情を浮かべ、もう一人の幼女が出っぷりしたマタザの腹に無言でしがみつく。マタザはその娘の頭を優しく撫でるとミーアと同じく優しく声をかける
「ヤナ、大丈夫。大丈夫じゃ。」
そして後ろで一番年長の男の子…ヴァイが涙を流しながら必至に口をへの字にして声が出るのを我慢していた。
「ヴァイ、コッチに来なさい。」
ヴァイは力なくマタザの前で立ち止まるとマタザはミーアと同じ様に涙を我慢するヴァイを優しく撫でた。ニキータはそんな光景を後ろで見ているとマタザが立ち上がり子供達に背中を見せた。
「ニキータ、子供達を寝かしつけろ。落ち着いたら建物裏まで来い。」
その顔はまた凄まじい鬼の物となっていた。ニキータは「はーい。」と気のない返事を返しながらも戦慄していた。
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