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聖女の失墜

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真の聖女の力を奪っていた。
王子の友人に嫉妬し危害を加えた。
教会への寄付金を私利私欲のため使った。
他国のスパイ疑惑。国民への洗脳。腐敗した貴族との癒着。危険思想の布教。などなど…
それらが聖女を捕らえるのに用意された理由です。
9割以上身に覚えが無いのですけれど。

事の発端は王子の友人ことフレンダが何者かの襲撃を受け、それを嫉妬した聖女の仕業に違いないと王子が断定したのが始まりだそうです。
実際は、王子の同情を誘い近付いたフレンダの存在を疎んだ貴族の仕業でしょう。
何人か心当たりはあります。

まあ、聖女を捕らえると言っても教会に居るのは魔法人形で、私自身はにいましたけどね。
そんなわけで魔法人形が連れて行かれた場所は特級犯罪者を収監する監獄でした。
人形から送られてくる情報からは、監獄の劣悪な環境がひしひしと伝わってきたのを覚えています。

建物は古く、いつ崩壊しても不思議ではない。
人形が収監されていた間はずっと冬で、暖房設備など一切ないため普通なら凍え死んでしまう。
食事は毎日提供される予定が、看守の職務怠慢か罪人に対する罰のつもりか出されない日もある。
収監されてからあの処刑の日までは100日ほどでしたが、普通の人間ならまず生きられませんでした。

けれど、魔法人形は所詮人形。
私が魔力を送り続ける限りその活動が停止することはありません。
だから、たまに訪れてくる人たちも意外と平気そうな聖女の姿を見て好き放題言えたのでしょう。

「はっ、この死に損ないの偽聖女が。どうせ生き延びようとも貴様は処刑されるのみなのだ。潔く、我々の手を煩わせることなく、さっさと逝け。」

「ああ、可哀想な姉様。大丈夫です、聖女の役目は私が引き継ぎましたから。だから、安心してください。きっと姉様のように落ちぶれることなく、皆に好かれる素敵な聖女になってみせます。」

「くく、これが私たちに偉そうな態度をとった愚かな聖女の末路か。おとなしく癒やしの魔法で金を稼ぎ、貢ぐだけの人形になっておけば少しくらいは庇ってやったものを。実に哀れだな。」

訪ねてきた人たち以外にも、国中が失墜した聖女の噂で持ちきりでした。
ある者は聖女を責め、ある者は聖女の無罪を主張し、またある者は聖女を捨てた王族や教会に対する不信感を募らせました。

そうして国中が混乱したまま冬が終わり、春の温かさで雪が溶けた頃。

「国を混沌に陥れた偽聖女リュミエラ・セレナーデの処刑を執行することをここに宣言する!」

私の処刑が決まったのです。


ここまでが過去のお話。
癒やしの魔法を使い聖女と崇められた私が失墜し処刑されるという一見BAD END。
でも、処刑されたのはただの人形。
本物の私はで生きている。

「さあ、それでは愚かな王族と腐敗した貴族・教会に侵された私の祖国を救いましょうか。」

さあ、ここまで全て私の計画通りよ。




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