25 / 27
25 私の大好きな人
しおりを挟む
フェルミア様に手を引かれヒュードリック様の研究所に連れて来られ、マリアさんの魔眼の正体を聞き…
気持ちの整理を付ける間もなく色々と物事が変動してしまって目が回ってしまいそうな気分でした。
思えば、昔フェルミア様と一緒に遊んでいた時も今と同じく置いてけぼりでしたね。
私がフェルミア様とお会いしたのは4才の時、ジークハルト兄様の婚約者候補を屋敷に招いた時です。
魔眼で運命の赤い糸を見て、兄様の婚約者に最も相応しい女性を決め婚約成立まで導こう、と考えた私は皆さんが居る部屋に忍び込みました。
兄様を囲む婚約者候補には糸が見えず、残念に思って自室に帰ろうとすると不意に抱き付かれました。
『あなた可愛いわね!婚約者決めとか面倒だったけど、天使みたいな子に会えて幸運よ!』
それがフェルミア様との初対面です。
兄様よりも私に興味深々な彼女は結局、その日別れの挨拶をする時まで私としか話されませんでした。
そして、その別れの挨拶の時に魔眼で2人の間に糸を見付けました。情熱的な赤い色の糸を。
私も初めてお話する同年代の女の子、それも私に直球な好意を向けるフェルミア様が大好きになり、全力で兄様との婚約成立を押したものです。
そうして無事に成立した後は兄様とフェルミア様、私の3人で仲良く遊びました。
庭で駆けっこするのが多かったと思います。
当時体の成長が少し遅めだった私は2人と外で遊ぶ時ついていけず、何度も置いてけぼりにされました。
ですが、そういう時はいつもフェルミア様が私のそばに走って戻ってきてくれました。
『ごめんなさい、置いていっちゃって。今度同じことをしてしまった時は遠慮なく名前を呼んでね。大好きなセラフィム様のもとにすぐ戻るから。』
本当に、昔から私のことが大好きな方なのです。
アルビオン殿下と婚約し、妃教育に苦戦する私を休憩に誘い『よく頑張ったね』と言ってくれました。
先に学園へ通われるようになってからも兄様の倍以上の頻度で手紙を送ってくださいました。
生徒会を辞退させられた時も、後日お茶に招かれ『何もできなくてごめんなさい』と謝り、乙女の園の会長になったことを伝えると『頑張ってください』と応援してくださいました。
本当に私のことが大好きな方で、私も大好きな方…
アルビオン殿下との赤い糸が無いことを悲しんだ日は無いけど、フェルミア様との糸は何度も願いました。
だから、そんなフェルミア様が私以外の人のために自分を犠牲にするなんて許せません。
「…ち、違います!私はマリアさんのためにしているわけでは無くて、セラフィム様の幸せのために彼女の幸せを壊す罪滅ぼしのつもりで…!」
私の説教を受けている最中、フェルミア様がそんなことを言い出しました。
私の幸せのため、それ自体は嬉しいです。ですが、
「マリアさんが魔眼を失い、絶賛彼女の魔眼の能力や魔眼中毒で正気では無いアルビオン殿下が元に戻ることができたら私が幸せになる、と…?」
「ええ。アルビオン殿下は賢い方ですから元に戻れば再びセラフィム様を最も愛する方になる筈です。」
殿下が私を…?そんな素振り今まで1度も見たことがありませんし、信じられないです。
そんな不確かな愛なんて今更求めません。
「フェルミア様の言う通りの未来になったとしても、私は決して幸せになんてなれないです。」
私が断言すると、フェルミア様は困惑されます。
「だって、そこには貴方がいないじゃないですか。」
「そ、それは…仕方のないことです。セラフィム様の本当の幸せのためには…」
仕方がない、その言葉が無性に苛立たせました。
ええ、もう良いでしょう。
王太子の婚約者や公爵令嬢でいるために我慢してきた気持ちを貴方にぶつけます。
貴方を止めるためにはこれも仕方のないことです。
「私はですね、フェルミア様。貴方がいないと幸せになれないと言っているのです。アルビオン殿下に愛されず婚約破棄されようとも、他の誰が私のまわりから立ち去ろうとも関係ありません。私は、私が大好きなフェルミア様さえ居ればそれで良いのです!」
私の言葉を聞いてフェルミア様が顔を真っ赤にされていますが、構いません。
「何度貴方をミアと愛称で呼ぶ兄様に嫉妬したか分かりません!私だってミア様、ミア義姉様とお呼びしたかったのに王妃教育で禁止されたのです!初めて愛称で呼ぶ人は殿下にしなさいと!なぜですか!?なぜ好きでもない、私を好きかも分からない方を先に愛称で呼ばないといけないのです!」
言い切った、と私は清々しい気分になりました。
一方、フェルミア様は顔を隠されていますが、隠せていない耳が真っ赤で照れているのが丸分かりです。
ちらっと、そう言えば研究所にいた2人に視線を向けると、ヒュードリック様は興味深そうにこちらを見つめ、マリアさんは青かった顔を真っ赤にしています。
…これはやり過ぎましたね。
♣︎お知らせ
今作品は次回でひとまず最終回を迎えます。その後、いくつかの視点でエピローグをしていく予定です。
どうか最後までお付き合いください。
気持ちの整理を付ける間もなく色々と物事が変動してしまって目が回ってしまいそうな気分でした。
思えば、昔フェルミア様と一緒に遊んでいた時も今と同じく置いてけぼりでしたね。
私がフェルミア様とお会いしたのは4才の時、ジークハルト兄様の婚約者候補を屋敷に招いた時です。
魔眼で運命の赤い糸を見て、兄様の婚約者に最も相応しい女性を決め婚約成立まで導こう、と考えた私は皆さんが居る部屋に忍び込みました。
兄様を囲む婚約者候補には糸が見えず、残念に思って自室に帰ろうとすると不意に抱き付かれました。
『あなた可愛いわね!婚約者決めとか面倒だったけど、天使みたいな子に会えて幸運よ!』
それがフェルミア様との初対面です。
兄様よりも私に興味深々な彼女は結局、その日別れの挨拶をする時まで私としか話されませんでした。
そして、その別れの挨拶の時に魔眼で2人の間に糸を見付けました。情熱的な赤い色の糸を。
私も初めてお話する同年代の女の子、それも私に直球な好意を向けるフェルミア様が大好きになり、全力で兄様との婚約成立を押したものです。
そうして無事に成立した後は兄様とフェルミア様、私の3人で仲良く遊びました。
庭で駆けっこするのが多かったと思います。
当時体の成長が少し遅めだった私は2人と外で遊ぶ時ついていけず、何度も置いてけぼりにされました。
ですが、そういう時はいつもフェルミア様が私のそばに走って戻ってきてくれました。
『ごめんなさい、置いていっちゃって。今度同じことをしてしまった時は遠慮なく名前を呼んでね。大好きなセラフィム様のもとにすぐ戻るから。』
本当に、昔から私のことが大好きな方なのです。
アルビオン殿下と婚約し、妃教育に苦戦する私を休憩に誘い『よく頑張ったね』と言ってくれました。
先に学園へ通われるようになってからも兄様の倍以上の頻度で手紙を送ってくださいました。
生徒会を辞退させられた時も、後日お茶に招かれ『何もできなくてごめんなさい』と謝り、乙女の園の会長になったことを伝えると『頑張ってください』と応援してくださいました。
本当に私のことが大好きな方で、私も大好きな方…
アルビオン殿下との赤い糸が無いことを悲しんだ日は無いけど、フェルミア様との糸は何度も願いました。
だから、そんなフェルミア様が私以外の人のために自分を犠牲にするなんて許せません。
「…ち、違います!私はマリアさんのためにしているわけでは無くて、セラフィム様の幸せのために彼女の幸せを壊す罪滅ぼしのつもりで…!」
私の説教を受けている最中、フェルミア様がそんなことを言い出しました。
私の幸せのため、それ自体は嬉しいです。ですが、
「マリアさんが魔眼を失い、絶賛彼女の魔眼の能力や魔眼中毒で正気では無いアルビオン殿下が元に戻ることができたら私が幸せになる、と…?」
「ええ。アルビオン殿下は賢い方ですから元に戻れば再びセラフィム様を最も愛する方になる筈です。」
殿下が私を…?そんな素振り今まで1度も見たことがありませんし、信じられないです。
そんな不確かな愛なんて今更求めません。
「フェルミア様の言う通りの未来になったとしても、私は決して幸せになんてなれないです。」
私が断言すると、フェルミア様は困惑されます。
「だって、そこには貴方がいないじゃないですか。」
「そ、それは…仕方のないことです。セラフィム様の本当の幸せのためには…」
仕方がない、その言葉が無性に苛立たせました。
ええ、もう良いでしょう。
王太子の婚約者や公爵令嬢でいるために我慢してきた気持ちを貴方にぶつけます。
貴方を止めるためにはこれも仕方のないことです。
「私はですね、フェルミア様。貴方がいないと幸せになれないと言っているのです。アルビオン殿下に愛されず婚約破棄されようとも、他の誰が私のまわりから立ち去ろうとも関係ありません。私は、私が大好きなフェルミア様さえ居ればそれで良いのです!」
私の言葉を聞いてフェルミア様が顔を真っ赤にされていますが、構いません。
「何度貴方をミアと愛称で呼ぶ兄様に嫉妬したか分かりません!私だってミア様、ミア義姉様とお呼びしたかったのに王妃教育で禁止されたのです!初めて愛称で呼ぶ人は殿下にしなさいと!なぜですか!?なぜ好きでもない、私を好きかも分からない方を先に愛称で呼ばないといけないのです!」
言い切った、と私は清々しい気分になりました。
一方、フェルミア様は顔を隠されていますが、隠せていない耳が真っ赤で照れているのが丸分かりです。
ちらっと、そう言えば研究所にいた2人に視線を向けると、ヒュードリック様は興味深そうにこちらを見つめ、マリアさんは青かった顔を真っ赤にしています。
…これはやり過ぎましたね。
♣︎お知らせ
今作品は次回でひとまず最終回を迎えます。その後、いくつかの視点でエピローグをしていく予定です。
どうか最後までお付き合いください。
0
お気に入りに追加
82
あなたにおすすめの小説
貴方が選んだのは全てを捧げて貴方を愛した私ではありませんでした
ましゅぺちーの
恋愛
王国の名門公爵家の出身であるエレンは幼い頃から婚約者候補である第一王子殿下に全てを捧げて生きてきた。
彼を数々の悪意から守り、彼の敵を排除した。それも全ては愛する彼のため。
しかし、王太子となった彼が最終的には選んだのはエレンではない平民の女だった。
悲しみに暮れたエレンだったが、家族や幼馴染の公爵令息に支えられて元気を取り戻していく。
その一方エレンを捨てた王太子は着々と破滅への道を進んでいた・・・
猛禽令嬢は王太子の溺愛を知らない
高遠すばる
恋愛
幼い頃、婚約者を庇って負った怪我のせいで目つきの悪い猛禽令嬢こと侯爵令嬢アリアナ・カレンデュラは、ある日、この世界は前世の自分がプレイしていた乙女ゲーム「マジカル・愛ラブユー」の世界で、自分はそのゲームの悪役令嬢だと気が付いた。
王太子であり婚約者でもあるフリードリヒ・ヴァン・アレンドロを心から愛しているアリアナは、それが破滅を呼ぶと分かっていてもヒロインをいじめることをやめられなかった。
最近ではフリードリヒとの仲もギクシャクして、目すら合わせてもらえない。
あとは断罪を待つばかりのアリアナに、フリードリヒが告げた言葉とはーー……!
積み重なった誤解が織りなす、溺愛・激重感情ラブコメディ!
※王太子の愛が重いです。
《完結》私好みのあなた。もう離しませんよ。
ポカポカ妖気
恋愛
※一部百合チックな表現が出てきます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
授業中ふと窓の外を見ていた。
すると中庭の花壇を眺めている1人の人物を見つけた。
その人はいつもとは違い頰を赤くさせ目をキラキラさせていた。
その瞬間私はーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
とある可愛いモノ好きの自称普通な女子高生が、今まで全く気にして居なかった人物に興味を抱き、次第にのめり込んで行く日々を描く。
そんな青春の物語。
ーーとかいいながら彼女は無意識に周りをたらし込み骨抜きにして行くばかり。
さぁ彼女は誰を捕まえるのか。。。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
なろう様にも掲載しております。
誤字脱字日々修正しております。
2021.4月より奇数日投稿予定。
あなたが望んだ、ただそれだけ
cyaru
恋愛
いつものように王城に妃教育に行ったカーメリアは王太子が侯爵令嬢と茶会をしているのを目にする。日に日に大きくなる次の教育が始まらない事に対する焦り。
国王夫妻に呼ばれ両親と共に登城すると婚約の解消を言い渡される。
カーメリアの両親はそれまでの所業が腹に据えかねていた事もあり、領地も売り払い夫人の実家のある隣国へ移住を決めた。
王太子イデオットの悪意なき本音はカーメリアの心を粉々に打ち砕いてしまった。
失意から寝込みがちになったカーメリアに追い打ちをかけるように見舞いに来た王太子イデオットとエンヴィー侯爵令嬢は更に悪意のない本音をカーメリアに浴びせた。
公爵はイデオットの態度に激昂し、処刑を覚悟で2人を叩きだしてしまった。
逃げるように移り住んだリアーノ国で静かに静養をしていたが、そこに1人の男性が現れた。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※胸糞展開ありますが、クールダウンお願いします。
心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。イラっとしたら現実に戻ってください。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
【完結】悪役令嬢エヴァンジェリンは静かに死にたい
小達出みかん
恋愛
私は、悪役令嬢。ヒロインの代わりに死ぬ役どころ。
エヴァンジェリンはそうわきまえて、冷たい婚約者のどんな扱いにも耐え、死ぬ日のためにもくもくとやるべき事をこなしていた。
しかし、ヒロインを虐めたと濡れ衣を着せられ、「やっていません」と初めて婚約者に歯向かったその日から、物語の歯車が狂いだす。
――ヒロインの身代わりに死ぬ予定の悪役令嬢だったのに、愛されキャラにジョブチェンしちゃったみたい(無自覚)でなかなか死ねない! 幸薄令嬢のお話です。
安心してください、ハピエンです――
【完結】転生地味悪役令嬢は婚約者と男好きヒロイン諸共無視しまくる。
なーさ
恋愛
アイドルオタクの地味女子 水上羽月はある日推しが轢かれそうになるのを助けて死んでしまう。そのことを不憫に思った女神が「あなた、可哀想だから転生!」「え?」なんの因果か異世界に転生してしまう!転生したのは地味な公爵令嬢レフカ・エミリーだった。目が覚めると私の周りを大人が囲っていた。婚約者の第一王子も男好きヒロインも無視します!今世はうーん小説にでも生きようかな〜と思ったらあれ?あの人は前世の推しでは!?地味令嬢のエミリーが知らず知らずのうちに戦ったり溺愛されたりするお話。
本当に駄文です。そんなものでも読んでお気に入り登録していただけたら嬉しいです!
嫌われ者の側妃はのんびり暮らしたい
風見ゆうみ
恋愛
「オレのタイプじゃないんだよ。地味過ぎて顔も見たくない。だから、お前は側妃だ」
顔だけは良い皇帝陛下は、自らが正妃にしたいと希望した私を側妃にして別宮に送り、正妃は私の妹にすると言う。
裏表のあるの妹のお世話はもううんざり!
側妃は私以外にもいるし、面倒なことは任せて、私はのんびり自由に暮らすわ!
そう思っていたのに、別宮には皇帝陛下の腹違いの弟や、他の側妃とのトラブルはあるし、それだけでなく皇帝陛下は私を妹の毒見役に指定してきて――
それって側妃がやることじゃないでしょう!?
※のんびり暮らしたかった側妃がなんだかんだあって、のんびりできなかったけれど幸せにはなるお話です。
死ぬはずだった令嬢が乙女ゲームの舞台に突然参加するお話
みっしー
恋愛
病弱な公爵令嬢のフィリアはある日今までにないほどの高熱にうなされて自分の前世を思い出す。そして今自分がいるのは大好きだった乙女ゲームの世界だと気づく。しかし…「藍色の髪、空色の瞳、真っ白な肌……まさかっ……!」なんと彼女が転生したのはヒロインでも悪役令嬢でもない、ゲーム開始前に死んでしまう攻略対象の王子の婚約者だったのだ。でも前世で長生きできなかった分今世では長生きしたい!そんな彼女が長生きを目指して乙女ゲームの舞台に突然参加するお話です。
*番外編も含め完結いたしました!感想はいつでもありがたく読ませていただきますのでお気軽に!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる