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5 ヒロインの登場
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王家の紋章が入った馬車に乗り、私たちはヘブンライト学園に向かっています。
窓から差してくる暖かい春の日差しや馬車の揺れは眠気を誘う魅力を持っていますが、私は緊張してしまってそれどころではありません。
本日から始まる学園生活で私はアルビオン殿下の婚約者として隙を見せることを許されず、一方で殿下の運命の人を見つけ出し2人が結ばれるようにお手伝いする必要があります。
ですが、果たして私に成し遂げられるか不安です。
ふと、私の正面に座り入学式の答辞文に目を通す殿下の姿が意識に入ってきました。
私と違って緊張など一切している素振りを見せず、与えられた使命を万全にこなす準備を怠らない殿下の姿は本当にご立派です。
殿下の幸せのために私が出来ることがあるのなら完璧に成し遂げないとですね。
そうして私は一度息を吐き、自らを鼓舞しました。
そのまま馬車に揺られ数刻。学園に着きました。
先に下車された殿下に手を引かれ私も降り、学園に向けて仲睦まじい婚約者の距離で連れ添って歩きます。
殿下の婚約者が私であることを周囲に分かりやすい形で見せるためとは言え少し恥ずかしいですね…
やがて学園に到着すると見覚えのある方々がいらっしゃいました。ジークハルト兄様に婚約者のフェルミア様、パータム様も分かりますが他の男性お2人は誰でしょう?
「久しぶりだね、皆。元気そうで何よりだ。」
殿下が声をかけると皆様一様に頭を下げられました。頭を上げていいよ、と続けるとそれに従います。
「おはよう、アル。セラも元気そうだな。」
「おはようございます、お2人とも。」
兄様とパータム様がまず殿下の挨拶に答え、続けて他の男性お2人も挨拶をされます。
「王太子殿下に挨拶を申し上げます。私はジークハルトの友人でグリフォン・オルトランデです。」
「同じくヒュードリック・オルスタインです。」
お2人は兄様の学友だったみたいです。そういえばお手紙にも書かれていた気がしますね。
皆様の挨拶が終わったので、私とフェルミア様もそれぞれ挨拶をしました。
「はじめまして、私はアルビオン殿下の婚約者であるセラフィム・バーンスタインです。」
「私はジークハルト様の婚約者フェルミアです。」
挨拶が済んだ私たちはその後も少々お話しましたが、殿下が入学式の挨拶のため離れようとすると何かに気付いた様子のグリフォン様に止められました。
「どうしたのかな、グリフォン君?」
「お止めして申し訳ありません、王太子殿下。実は本日入学する妹が今学園に到着したみたいで、出来れば妹も殿下に挨拶させていただきたいのです。」
そう口にすると、グリフォン様は手を振って大きな声で妹さんを呼ばれました。
私たちが目を向けると走ってこちらに向かってくる女性がいらっしゃいました。
その時です。
「えっ…?」
私の魔眼が発動した感覚がしました。
慌てて殿下の方に目を向けると、色がなぜか薄いですが運命の赤い糸が見えます。
そして殿下のすぐ後ろにいる兄様にも、いえそれだけではありません。パータム様も、グリフォン様も、ヒュードリック様も殿下と同じく色の薄い赤い糸が現れています。
混乱しながらも皆様の赤い糸の先を見ると息を切らせている様子の女性がいました。
「では皆様に紹介させていただきますね。彼女は私の妹マリア・オルトランデです。」
窓から差してくる暖かい春の日差しや馬車の揺れは眠気を誘う魅力を持っていますが、私は緊張してしまってそれどころではありません。
本日から始まる学園生活で私はアルビオン殿下の婚約者として隙を見せることを許されず、一方で殿下の運命の人を見つけ出し2人が結ばれるようにお手伝いする必要があります。
ですが、果たして私に成し遂げられるか不安です。
ふと、私の正面に座り入学式の答辞文に目を通す殿下の姿が意識に入ってきました。
私と違って緊張など一切している素振りを見せず、与えられた使命を万全にこなす準備を怠らない殿下の姿は本当にご立派です。
殿下の幸せのために私が出来ることがあるのなら完璧に成し遂げないとですね。
そうして私は一度息を吐き、自らを鼓舞しました。
そのまま馬車に揺られ数刻。学園に着きました。
先に下車された殿下に手を引かれ私も降り、学園に向けて仲睦まじい婚約者の距離で連れ添って歩きます。
殿下の婚約者が私であることを周囲に分かりやすい形で見せるためとは言え少し恥ずかしいですね…
やがて学園に到着すると見覚えのある方々がいらっしゃいました。ジークハルト兄様に婚約者のフェルミア様、パータム様も分かりますが他の男性お2人は誰でしょう?
「久しぶりだね、皆。元気そうで何よりだ。」
殿下が声をかけると皆様一様に頭を下げられました。頭を上げていいよ、と続けるとそれに従います。
「おはよう、アル。セラも元気そうだな。」
「おはようございます、お2人とも。」
兄様とパータム様がまず殿下の挨拶に答え、続けて他の男性お2人も挨拶をされます。
「王太子殿下に挨拶を申し上げます。私はジークハルトの友人でグリフォン・オルトランデです。」
「同じくヒュードリック・オルスタインです。」
お2人は兄様の学友だったみたいです。そういえばお手紙にも書かれていた気がしますね。
皆様の挨拶が終わったので、私とフェルミア様もそれぞれ挨拶をしました。
「はじめまして、私はアルビオン殿下の婚約者であるセラフィム・バーンスタインです。」
「私はジークハルト様の婚約者フェルミアです。」
挨拶が済んだ私たちはその後も少々お話しましたが、殿下が入学式の挨拶のため離れようとすると何かに気付いた様子のグリフォン様に止められました。
「どうしたのかな、グリフォン君?」
「お止めして申し訳ありません、王太子殿下。実は本日入学する妹が今学園に到着したみたいで、出来れば妹も殿下に挨拶させていただきたいのです。」
そう口にすると、グリフォン様は手を振って大きな声で妹さんを呼ばれました。
私たちが目を向けると走ってこちらに向かってくる女性がいらっしゃいました。
その時です。
「えっ…?」
私の魔眼が発動した感覚がしました。
慌てて殿下の方に目を向けると、色がなぜか薄いですが運命の赤い糸が見えます。
そして殿下のすぐ後ろにいる兄様にも、いえそれだけではありません。パータム様も、グリフォン様も、ヒュードリック様も殿下と同じく色の薄い赤い糸が現れています。
混乱しながらも皆様の赤い糸の先を見ると息を切らせている様子の女性がいました。
「では皆様に紹介させていただきますね。彼女は私の妹マリア・オルトランデです。」
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