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煙の火種は噂の人にあると限らない
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結局、伊里奈さんの言った通り早苗ママは私の存在を受け入れてくださいました。
代わりにママと呼ぶことを義務付けられましたけど。
「それにしてもママの娘ながら美人だわ。ダサダサの伊里奈ちゃんも、あれはあれで好きだったけどね。」
早苗ママ、たいへん上機嫌ですわね。
一方で伊里奈さんの方は、散々からかわれてすっかりへそを曲げられてしまったみたいです。
機嫌が戻るまでの間に気になったことでも早苗ママに聞いておきましょうか。
「お尋ねしたいのですが、早苗ママが伊里奈さんだとすぐに分かったのは、今の容姿が整った彼女を知っていたからなのでしょうか?昔はその、早苗ママの言うダサダサではなかったとか?」
この質問に別段意味はありません。
強いて言うなら、伊里奈さんへの理解を深めるための質問といったところでしょうか。
「イーリスちゃんの考えている通りよ。伊里奈ちゃんが変わっちゃったのは小学生の頃かしら。」
早苗ママは懐かしそうな、それでいて悲しそうな顔をして伊里奈さんの過去を語ります。
昔の伊里奈さんは今と違って明るかったそうです。
加えて元々容姿も優れていたため、男女問わず人気者で毎日を楽しく過ごされていました。
楽しい日常が崩れた原因は痴情のもつれ。
初等部6年生の時、伊里奈さんに告白し呆気なく断られた男子生徒が逆恨みであらぬ噂を流したそうです。
星野伊里奈は自分たちを見下している。
誰も友達と思っていないし、バカにしている。
もちろん根も歯も無い噂でした。
ですが、彼女にこれまでフラれてきた男子生徒や彼らを好きだった女子生徒が復讐のため噂に便乗。
気付けば伊里奈さんは孤立させられたそうです。
最初は伊里奈さんも関係を修復しようと奔走したそうですが、諸悪の原因を知りその醜さに愕然。
逆恨みや嫉妬で簡単に人を傷付ける人間と関わり合いを持とうと思えず、何もかも諦めてしまいました。
皮肉にも噂通りになってしまったわけです。
「この頃よね、ダサダサ伊里奈ちゃんに変貌を遂げてしまったのは。見た目をダサくして性格も暗くすれば同じ過ちを繰り返すことはないから、って。」
それは、どうなのでしょうね。
その手の人間への対処に逃げの選択をしてしまうことは果たして正しいのでしょうか。
私が伊里奈さんと似た経験をした時には誇り高き侯爵令嬢に相応しく、叩きのめして差し上げました。
自分を変える、なんて考えられませんでしたから。
ですが、伊里奈さんは無力な少女です。
仕方がないと諦めたことを責めるのは私には無理。
「ふふ、それにしてもイーリスちゃんは本当に優しい悪魔さんね。娘が良い契約をできたみたいで安心♪」
あ、その部分への訂正を忘れていました。
「早苗ママ。実は私悪魔では無くて、こちらとは違う世界から召喚されただけの一般人ですの。」
まあ、召喚の際に悪魔の力的なものを手に入れたので厳密には現在一般人と言えそうにありませんが。
と言うよりも、あら?
私のことはまだ名前くらいしか教えていないのになぜ私が召喚された悪魔だと思ったのかしら?
「え、でもイーリスちゃんから悪魔の力を感じるし。それに、伊里奈ちゃんそっくりだし…あれ?」
代わりにママと呼ぶことを義務付けられましたけど。
「それにしてもママの娘ながら美人だわ。ダサダサの伊里奈ちゃんも、あれはあれで好きだったけどね。」
早苗ママ、たいへん上機嫌ですわね。
一方で伊里奈さんの方は、散々からかわれてすっかりへそを曲げられてしまったみたいです。
機嫌が戻るまでの間に気になったことでも早苗ママに聞いておきましょうか。
「お尋ねしたいのですが、早苗ママが伊里奈さんだとすぐに分かったのは、今の容姿が整った彼女を知っていたからなのでしょうか?昔はその、早苗ママの言うダサダサではなかったとか?」
この質問に別段意味はありません。
強いて言うなら、伊里奈さんへの理解を深めるための質問といったところでしょうか。
「イーリスちゃんの考えている通りよ。伊里奈ちゃんが変わっちゃったのは小学生の頃かしら。」
早苗ママは懐かしそうな、それでいて悲しそうな顔をして伊里奈さんの過去を語ります。
昔の伊里奈さんは今と違って明るかったそうです。
加えて元々容姿も優れていたため、男女問わず人気者で毎日を楽しく過ごされていました。
楽しい日常が崩れた原因は痴情のもつれ。
初等部6年生の時、伊里奈さんに告白し呆気なく断られた男子生徒が逆恨みであらぬ噂を流したそうです。
星野伊里奈は自分たちを見下している。
誰も友達と思っていないし、バカにしている。
もちろん根も歯も無い噂でした。
ですが、彼女にこれまでフラれてきた男子生徒や彼らを好きだった女子生徒が復讐のため噂に便乗。
気付けば伊里奈さんは孤立させられたそうです。
最初は伊里奈さんも関係を修復しようと奔走したそうですが、諸悪の原因を知りその醜さに愕然。
逆恨みや嫉妬で簡単に人を傷付ける人間と関わり合いを持とうと思えず、何もかも諦めてしまいました。
皮肉にも噂通りになってしまったわけです。
「この頃よね、ダサダサ伊里奈ちゃんに変貌を遂げてしまったのは。見た目をダサくして性格も暗くすれば同じ過ちを繰り返すことはないから、って。」
それは、どうなのでしょうね。
その手の人間への対処に逃げの選択をしてしまうことは果たして正しいのでしょうか。
私が伊里奈さんと似た経験をした時には誇り高き侯爵令嬢に相応しく、叩きのめして差し上げました。
自分を変える、なんて考えられませんでしたから。
ですが、伊里奈さんは無力な少女です。
仕方がないと諦めたことを責めるのは私には無理。
「ふふ、それにしてもイーリスちゃんは本当に優しい悪魔さんね。娘が良い契約をできたみたいで安心♪」
あ、その部分への訂正を忘れていました。
「早苗ママ。実は私悪魔では無くて、こちらとは違う世界から召喚されただけの一般人ですの。」
まあ、召喚の際に悪魔の力的なものを手に入れたので厳密には現在一般人と言えそうにありませんが。
と言うよりも、あら?
私のことはまだ名前くらいしか教えていないのになぜ私が召喚された悪魔だと思ったのかしら?
「え、でもイーリスちゃんから悪魔の力を感じるし。それに、伊里奈ちゃんそっくりだし…あれ?」
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