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母親の呼び方1つで色々分かるらしい
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「あ、あの…イーリス様。そう言えば、アナタはいつまでこちらの世界にいられるのですか…?」
唐突に伊里奈さんが尋ねてきました。
それは早く帰って欲しいということかしら?
「ちちち違います!わ、私をこんな素敵に変身させてくださったこととか、本当に感謝していますし!」
首を横に激しく振りながら否定されました。
そんなに激しく振ると、首を痛めますよ。
少し高圧的に聞き返してしまったことを軽く謝罪して落ち着かせてから、今度は優しく問いかけます。
「そ、そのぅ。イーリス様がまだしばらく滞在される予定でしたら、ママに紹介したいなって…」
「ママ?ああ、伊里奈さんのお母様ですか。」
私たちはお母様と呼ぶように教えられ、物心ついた頃には自然とそう呼ぶようになっていましたが、貴族でもない庶民は呼び方も自由なのでしょうね。
と、思いましたが伊里奈さんは顔が真っ赤です。
恥ずかしがっている様子から察するに、彼女にとってママと呼ぶのは本来隠すべきことなのでしょう。
「と、とにかく。そう、母!母にイーリス様のことを教えておかないと、お食事も準備できませんし。」
それは、困りましたね。
元の世界に帰る方法も分かりませんし、帰るまでの間何も食べられないのは流石にツラいです。
けれど、どうやって伝えるのかしら。
まさか正直に悪魔と間違って召喚したと?
「はい、そのつもりです。たぶん大丈夫だと思いますよ。母は何というか、寛容な人ですので。」
下からガチャ、という音が聞こえました。
それから女性が伊里奈さんの名前を呼びます。
「あ、母が帰りましたね。で、ではイーリス様。母にお会いしてくださいますか?」
私は腹を括り、うなずきました。
最悪の場合は悪魔の力で何とかしようと考えつつ。
…まあ、問題は別にあったのですけど。
「あら、そっくりな美人さんですこと。アナタたちは伊里奈のお友達かしら?はじめまして、私は伊里奈の母で早苗と言います。気軽に早苗ママって呼んで♪」
私の力で容姿が整えられた伊里奈さんは実の親ですら本人と分からなかったようです。
母親に認識されなかった伊里奈さんは涙目でした。
「違うよ、ママ!私!ママの娘の伊里奈!イーリス様のおかげで変身したけど、アナタのよく知る陰キャでぼっちな娘の伊里奈です!分かってー!」
早苗さんに抱きつき必死に自分が娘だと訴える伊里奈さんの姿は、申し訳ないのだけど可愛いわ。
愛玩動物的な種類の可愛らしさね。
そして、多分ですが早苗さんは分かっていますね。
伊里奈さんの頭を撫で、えー?本当?など言いながらからかっている顔が物語っています。
お母様とは全然違う方ですね。
容姿も娘である私と伊里奈さんがそっくりなのに驚くほど異なりますけど、そこではありません。
あの方は早苗さんのように笑いません。
いつも冷たくて、叱られたことこそあれどあの2人の様な微笑ましいやり取りなんて皆無でした。
…きっと私が居なくなっても、侯爵家の発展に有用な駒を無くしたくらいにしか思っていないでしょう。
唐突に伊里奈さんが尋ねてきました。
それは早く帰って欲しいということかしら?
「ちちち違います!わ、私をこんな素敵に変身させてくださったこととか、本当に感謝していますし!」
首を横に激しく振りながら否定されました。
そんなに激しく振ると、首を痛めますよ。
少し高圧的に聞き返してしまったことを軽く謝罪して落ち着かせてから、今度は優しく問いかけます。
「そ、そのぅ。イーリス様がまだしばらく滞在される予定でしたら、ママに紹介したいなって…」
「ママ?ああ、伊里奈さんのお母様ですか。」
私たちはお母様と呼ぶように教えられ、物心ついた頃には自然とそう呼ぶようになっていましたが、貴族でもない庶民は呼び方も自由なのでしょうね。
と、思いましたが伊里奈さんは顔が真っ赤です。
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「と、とにかく。そう、母!母にイーリス様のことを教えておかないと、お食事も準備できませんし。」
それは、困りましたね。
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けれど、どうやって伝えるのかしら。
まさか正直に悪魔と間違って召喚したと?
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下からガチャ、という音が聞こえました。
それから女性が伊里奈さんの名前を呼びます。
「あ、母が帰りましたね。で、ではイーリス様。母にお会いしてくださいますか?」
私は腹を括り、うなずきました。
最悪の場合は悪魔の力で何とかしようと考えつつ。
…まあ、問題は別にあったのですけど。
「あら、そっくりな美人さんですこと。アナタたちは伊里奈のお友達かしら?はじめまして、私は伊里奈の母で早苗と言います。気軽に早苗ママって呼んで♪」
私の力で容姿が整えられた伊里奈さんは実の親ですら本人と分からなかったようです。
母親に認識されなかった伊里奈さんは涙目でした。
「違うよ、ママ!私!ママの娘の伊里奈!イーリス様のおかげで変身したけど、アナタのよく知る陰キャでぼっちな娘の伊里奈です!分かってー!」
早苗さんに抱きつき必死に自分が娘だと訴える伊里奈さんの姿は、申し訳ないのだけど可愛いわ。
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そして、多分ですが早苗さんは分かっていますね。
伊里奈さんの頭を撫で、えー?本当?など言いながらからかっている顔が物語っています。
お母様とは全然違う方ですね。
容姿も娘である私と伊里奈さんがそっくりなのに驚くほど異なりますけど、そこではありません。
あの方は早苗さんのように笑いません。
いつも冷たくて、叱られたことこそあれどあの2人の様な微笑ましいやり取りなんて皆無でした。
…きっと私が居なくなっても、侯爵家の発展に有用な駒を無くしたくらいにしか思っていないでしょう。
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