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第50話

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 荷物の整理をしながら柊生が帰るのを待っていると、先日面接に行った所から電話がかかってきた。

 採用されたのだ。

 よかったとホッとした。

 面接を受けたのは飲食店で接客の仕事だ。柊生の家からは少し離れているが、時給が良かった為そこに決めた。

 そうこうしている間に柊生が帰って来た。

「ただいまー」

「おかえり、どこ行ってたの?」

「ん?野暮用だよ」

 ん?またとぼけてる‥‥。

「この前も教えてくれなかったし何か私に隠してる?」

「俺がももちゃんに隠し事するわけないじゃん」

 柊生の言い方的に嘘をついている感じには見えない。

「じゃあ野暮用って何?」

 柊生は少し考えて答えた。

「うーん‥‥‥。今は言う時じゃないよ」

「今は?」

「俺の事信じて?そのうち言うから」

「‥‥分かった」

 柊生は一体何をしようとしてるんだろう‥‥信じてとか、いかにも浮気してるやつが言いそうな言葉だし‥‥。

「そういえば服持って帰れたんだ!」

 この気まずい空気を変えようとしたのか柊生がいつものように明るく言った。

「あ‥‥うん。会わずに取ってこれたしよかったよ」

「重くなかった?姉貴に車出して貰えばよかったのに」

「悪いし頼めないよ」

「そっか!」

「あ、そうだ!そういえばさ、この前面接行ったとこから電話あったの!」

「なんて?」

「採用だって!」

「よかったじゃん!これで一安心だね」

「ほんとよかったよ。いつまでもここにお世話になるのも悪いしさ」

 何気なく言ったつもりだったが、柊生は私の言葉を聞いてキョトンとしていた。

「えっ?ももちゃん出て行くの?」

「えっ?だめだった‥‥?」

「だめっていうか、出ていかなくていいよ?ずっと居てよ」

「でも、ここは柊生とお姉さんの家だし」

「あー、姉貴いるとやっぱ気を使うもんね」

「そうゆうわけじゃないけど、やっぱり自分の力で生活していかないと」

「じゃあ俺と二人で暮らそうよ」

 正直柊生ならそう言うと思っていた、いや、むしろ言って欲しかったのかも‥‥。

「うーん、そうだね!」

「やったー!」

「でもいいの?お姉さん一人になっちゃう」

 一応聞いておかないと、嫌なやつにはなりたくないし。

「いいよ、遅かれ早かれ結婚したら二人で暮らす事になるんだし」

「そっか」

「ところでももちゃんお店はもう諦めたの?」

 柊生がちゃんと覚えてたんだと思うと少し嬉しかった。

「ううん、諦めてないよ。ただ色々あり過ぎて今はそれどころじゃないでしょ?それにお店が安定するまでの生活費も、もう少し貯めたいから今は貯金に専念するよ」

「やっぱももちゃんはしっかりしてるね。それに比べて俺は後先考えない行動ばっかりで。ほんとごめんね!」

「柊生はそのままでいいの。後先の事なんて私が考えるよ」

「ももちゃんって本当優しいね」

 そう、柊生はただ私の癒しでいてくれればそれだけでいい‥‥。ただ‥‥‥。

「うっ」

 やばい‥‥気持ち悪い。

「どうしたの?大丈夫?」

「ちょっとごめん‥‥」

 私はトイレに駆け込むと、嘔吐してしまった。柊生が心配するはずだと思い、なんて言おうか考えながらしばらくトイレにこもっていた。

「ももちゃん大丈夫?」

 トイレの外で柊生が心配そうに声をかけてきた。

「うん、大丈夫。多分ただの食あたりだと思うから後で胃薬飲むね」

「じゃあ薬用意しとくよ!」

「ありがとう」

 いつまで隠し通せるだろう。バレるのも時間の問題だ。
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