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第23話
しおりを挟む「私たちって本当相性いいですよね」
「俺もそう思う。でもももちゃんがそんな事言うとは想像つかなかったなぁ」
私たちはする事をして裸のままベットに入っていた。冬馬さんの肌質、抱き心地、匂いが私を癒してくれる。
「私この時間が一番好きです」
「事後が?」
冬馬さんが半分笑っていた。
「おかしいですか?」
「おかしくないよ!実は俺もだから」
「そうなんですか?私たちって気も合いますね」
「ふふっ、本当だね」
それからというもの、柊生の送りを理由をつけては断り、冬馬さんのアパートに泊まる事が多くなっていた。
そんなある日、とうとう断り文句もなくなっていた時、仕方なく柊生に送ってもらう事になった。
冬馬さんに後ろ髪を引かれながら、柊生と駅まで歩いていた。
「ももちゃん?聞いてる?」
「あ、ごめん。なんだっけ?」
「どうしたの?さっきからずっと上の空で、考え事でもしてるの?」
「最近勉強が結構厳しくてさ、疲れてるのかも」
本当はずっと冬馬さんの事を考えている。
そろそろ柊生に言わないと‥‥。
「そうだよね。学校行ってバイト行って、忙しいよね」
「あ、でも柊生は気にしなくていいよ!」
「俺は学校終わっても友達とフラフラ遊んでばっかだからさ、なんか手伝える事ない?」
「気持ちは嬉しいけど自分の事だから大丈夫だよ」
「あ!そうだ!じゃあこうしない?俺の姉貴に勉強の分からない所教えてもらうのはどう?」
「柊生のお姉さんに?それは気まずいよ」
「大丈夫だって!すぐ仲良くなれるって!」
そう言われてもなぁ。勉強の事は嘘だし、そんな暇あるなら冬馬さんと居たい。
「せっかくだけどバイトもあるし勉強は学校で友達に教えてもらうよ。ありがとね」
「そっか‥‥分かった」
「あのさ、ちょっと公園で話さない?」
「いいよ!賛成!」
喜んでいる柊生には悪いけどこれから私は別れを切り出すつもりだ。
「ここってほとんど人いないよね」
ベンチに腰掛けながら柊生が言った。
「私たちが来るのがいつも夜だからじゃない?」
「そっか!」
「ところでさ、柊生に話したい事があるんだ」
「なに?」
「別れてほしい」
ためると言いづらくなる為思い切って言った。
「え‥‥」
柊生の顔を恐る恐る見ると、私の方を呆然と見ていた。
「ごめんね」
「理由は?」
「好きな人が出来たの‥‥」
「なんで?」
「ごめん」
「無理」
「え?」
「俺別れないよ絶対」
「本当にごめん」
「好きな人って誰」
「それは言えない」
「なんで言えないの?もしかして店長?」
「‥‥違うよ」
「店長なんだ‥‥」
「だから違うって」
「そんな事言われてもそうとしか思えない。ももちゃんの近くにいる男って店長ぐらいしかいないじゃん」
「悪いと思ってる。でもこんな気持ちのまま付き合うのは無理だよ」
「酷いよ。俺はももちゃんしか見てないのに」
悲しい顔で私を見つめる柊生。
傷つけてごめん‥‥。
「本当ごめん」
「でも俺別れないから。ももちゃんいなくなったら生きていけない」
「そんな事ないよ。柊生にはもっといい人が見つかるって」
「無理‥‥嫌だ」
「柊生」
「分かった。店長の事好きでもいいよ。でも俺と別れるのはやめて」
「そんな事出来ないよ」
「俺にはももちゃんしかいないんだよ‥‥」
「お願い別れて‥‥柊生」
「お願い‥‥?そこまでして俺と別れたいの?俺の事そんなに嫌い?」
私は柊生の辛そうな姿を直視できなかった。
「嫌いじゃないよ。ただ気持ちが他の人に向いてしまっただけだよ」
「すっごく傷つく事平気で言うんだね」
「ハッキリ言わない方が傷つくと思って」
「ももちゃんにとって俺はその程度だったんだね」
「ごめん」
「わかった」
柊生はそう言うと私の顔を見ずに立ち上がり歩いて行った。
別れられたんだ。少し心は傷んだけどこれで冬馬さんと堂々と付き合えるんだ、そう思うと肩の荷が降りたような気分だった。
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