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第一話
しおりを挟む私は佐藤れい。
中学二年の夏、時刻は夜の十時。
私は友達のかおりの家にいた。
「ねえ、今から連れが遊ぼって言ってんだけど行かない?」
かおりが言ってきた。
「男?」
「うん、二人で来るって」
「えー、パスしたい。今そんな気分じゃない」
「まだひろくんの事引きずってんの?」
「だってぇ」
ひろくんとは私が最近振られた人だ。
告白こそしてないものの、しれーっと音信不通になったのだ。
「意外と傷つくんだねー」
「当たり前じゃん!めっちゃ好きだったんだから」
「どんまい。とにかく準備して!」
「えーだから嫌だってー」
「もうこっち向かってるって~」
「え、だるいって」
「じゃあそのまんまでいいじゃん、車持ちだよ?ドライブ行こうよ~」
「もー分かったよ」
私は仕方なく起き上がり、メイクを軽く直し、寝転んでボサボサになった髪をといた。
「夏の夜って独特の匂いするよねー」
玄関を出た時かおりが言った。
「もしかしてあれ?」
家の近くの路上に黒いセダンが止まっていた。
「もう着いてんじゃんー、おーい」
かおりがその車に向かって手を振った。
すると、運転席から人が降りてきた。
降りてきたのがかおりの連れらしく、話しかけてきた。
「かおり久しぶり~」
「久しぶりー、暇してたから誘ってくれてよかったよー!この子はれい」
「れいちゃんよろしくね!」
「どうも」
私は少し無愛想に挨拶した。
私たちが運転席側の外で話をしていると、窓を開けて、助手席の人が話しかけてきた。
「おーい、俺の事忘れてないー?」
「あ、わりーわりー、行こうぜ」
私とかおりが車の後ろに乗り込むと、助手席の人がこちらを振り返り挨拶してきた。
「どうもーこうきですー」
「かおりですー、よろしくね」
「かおりちゃんね!隣の子は?」
「れい?何無視してんの?」
「あぁ、れいです!」
「この子失恋したばっかでさーテンション低いの」
「そうなんだー、こんな可愛い子振るなんてどんな男だよー」
私はその助手席の人に釘付けになっていた。
一目惚れだった。
後で名前を聞いたが、運転席はしんじ。二人は18歳で、普段は仕事をしているらしい。
私は会った瞬間に失恋の事など忘れてしまう程、こうきに夢中になっていた。
「れい、急に元気になったね」
かおりが耳打ちしてきた。
「こうきくんめっちゃタイプ!」
「よかったじゃん!うちに感謝だね!」
「本当!ありがと!」
「後ろで何盛り上がってんのー?」
しんじが言ってきて、こうきもこちらを振り返る。
「こっちの話だよ~、ところでこうきくんは彼女いるの?」
かおりが聞いてくれた。
「いないよ!いたら来ないでしょ!」
そう言って笑うこうきは本当に笑顔が素敵な人だった。
「俺にも誰か聞いてよー」
しんじが拗ねたように言ってくるので、
「しんじは?彼女とかいるの?」
かおりが仕方なく聞いてあげた。
「いないよ!いたら来ないでしょ!」
「俺と同じ事言うなよ!」
「ハハハ!なんかカッコ良かったから!」
車内はとても盛り上がっていた。
私たちはこうきの地元にある夜景を見に行ったり、小腹が空いたので牛丼を食べたりして過ごした。
とても楽しかった。
「運転ありがと!また誘って!」
かおりがしんじに言い、私たちは最初の場所に降ろしてもらった。
帰り際、私は思い切って言った。
「こうきくん!LINE交換しない?」
「逆にいいの?なんか聞いたらまずいかなーって思って俺からは聞かなかったんだよね!」
私は嬉しかった。
LINEを交換し、その日は解散した。
「こうきくんめっちゃカッコよくない?」
私はまだテンションが上がったままだった。
「うちはタイプじゃないから~、てかこうきくんねずみみたいじゃね?」
かおりは正直だ。
「は?失礼な!」
「まぁよかったじゃん!さっそくLINEしてみたら?」
「そうだった!」
私は、
(お疲れ!また遊ぼ!)
とだけ送ったが、すぐに返事がきた。
(すぐLINEしてくれるとは思わなかった!ありがと!ちゃんと勉強するんだよ!そしたらまた遊んであげる!)
多分その時の私はニヤけていたと思う。
この時期の早朝5時は、明るい。
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