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4 告白(悲劇)
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その刹那です。
「よーし!、合格!、いいじゃないか!」
私から離れた親分の大声が社務所に響きました。
その声で、周りにいた多くの大人たちが一斉にわさわさと動きだし、会議を始める者や電話をかける者などが喧騒を巻き起こします。
私は訳が分からず呆然としていました。私の顔に?マークがついていたのを認識した親分が、改めて私に向かい言いました。
「合格だよ、お嬢ちゃん、いい演技だった」
「ご、合格って…何のことですか?…」私は依然、きょとん顔です。
「だからあ、オーディション。子役の。あれ?聞いてないの?マジか?おーい誰か、ちゃんと説明してやれよ!」
親分はそう言うと、仕方ねえなと呟いて、説明を始めました。
「今ここで撮影中の映画でさ、今日出演予定の子役ちゃんが急に体調不良でダメになって、でも撮影は延期できないから、急遽、ここでスカウトした女子のオーデションをやっていたわけだが、なかなかいい子がいなくてね。最後に君が来てくれて、なかなかいいから合格、となった訳。ホントになにも聞いていなかったのか?それにしちゃ、いや、それだからか、凄い迫真の演技で、役どころにぴったりだったよ。是非これから、一緒に撮っていこうよ」
私は事情が分かり、余りの恐怖から一転、虚脱状態になってしまい、へなへなと崩れ落ちてゆきました。
そう、その時なのです、悲劇が起きたのは。
私は余りの精神的な弛緩から、気付かぬうちに、おしっこを大量に漏らしてしまったのです。
生ぬるい感触を太腿に感じて、ようやく私は事の重大さに気が付きました。
「いやあああああああああ…」
私は恥ずかしさのあまり失神しそうでした。運悪く、すぐに亨君も気が付いて駆け寄ってきました。
「は、華ちゃん…」
「だ、だめ…、亨君、見ないで…、お願い、見ないで…」
周りにいた大人たちも何事かと集まってきました。私はただただ恥ずかしく、ワンワンと泣くことしかできませんでした。
ええ、ええ、そうです…。
私は6年生になりながらも、お漏らしをしてしまったのです。しかも亨君の目の前で。亨君は私を庇い、汚れた床を拭いたり、私の濡れたパンティを洗ったりして、泣き呻く私を介抱してくれました。
こんなことがあったためか、私のオーディション合格は、無残にも取り消されてしまいました。まあ別に、役者さんになりたかったわけではないのでいいのですが。
それからの私の一番の悩み事は、このことがみんなに知れ渡ってしまうのではないか、ということでした。こんな恥ずかしいことが知れ渡ってしまったら、もう生きていけない、とも思いました。
特に亨君には、私の恥ずかしい全てを目撃されてしまいました。亨君がみんなに言いふらしたら、どうしようって…。
でも亨君は、私から何もお願いもしてないのに、今までずっと黙っていてくれたのです。ありがとう、亨君…。
これが、私が内緒にしていた秘密です。でも、もういいんです。あんなこと、もう何でもないんです…。私、強くなります。
「よーし!、合格!、いいじゃないか!」
私から離れた親分の大声が社務所に響きました。
その声で、周りにいた多くの大人たちが一斉にわさわさと動きだし、会議を始める者や電話をかける者などが喧騒を巻き起こします。
私は訳が分からず呆然としていました。私の顔に?マークがついていたのを認識した親分が、改めて私に向かい言いました。
「合格だよ、お嬢ちゃん、いい演技だった」
「ご、合格って…何のことですか?…」私は依然、きょとん顔です。
「だからあ、オーディション。子役の。あれ?聞いてないの?マジか?おーい誰か、ちゃんと説明してやれよ!」
親分はそう言うと、仕方ねえなと呟いて、説明を始めました。
「今ここで撮影中の映画でさ、今日出演予定の子役ちゃんが急に体調不良でダメになって、でも撮影は延期できないから、急遽、ここでスカウトした女子のオーデションをやっていたわけだが、なかなかいい子がいなくてね。最後に君が来てくれて、なかなかいいから合格、となった訳。ホントになにも聞いていなかったのか?それにしちゃ、いや、それだからか、凄い迫真の演技で、役どころにぴったりだったよ。是非これから、一緒に撮っていこうよ」
私は事情が分かり、余りの恐怖から一転、虚脱状態になってしまい、へなへなと崩れ落ちてゆきました。
そう、その時なのです、悲劇が起きたのは。
私は余りの精神的な弛緩から、気付かぬうちに、おしっこを大量に漏らしてしまったのです。
生ぬるい感触を太腿に感じて、ようやく私は事の重大さに気が付きました。
「いやあああああああああ…」
私は恥ずかしさのあまり失神しそうでした。運悪く、すぐに亨君も気が付いて駆け寄ってきました。
「は、華ちゃん…」
「だ、だめ…、亨君、見ないで…、お願い、見ないで…」
周りにいた大人たちも何事かと集まってきました。私はただただ恥ずかしく、ワンワンと泣くことしかできませんでした。
ええ、ええ、そうです…。
私は6年生になりながらも、お漏らしをしてしまったのです。しかも亨君の目の前で。亨君は私を庇い、汚れた床を拭いたり、私の濡れたパンティを洗ったりして、泣き呻く私を介抱してくれました。
こんなことがあったためか、私のオーディション合格は、無残にも取り消されてしまいました。まあ別に、役者さんになりたかったわけではないのでいいのですが。
それからの私の一番の悩み事は、このことがみんなに知れ渡ってしまうのではないか、ということでした。こんな恥ずかしいことが知れ渡ってしまったら、もう生きていけない、とも思いました。
特に亨君には、私の恥ずかしい全てを目撃されてしまいました。亨君がみんなに言いふらしたら、どうしようって…。
でも亨君は、私から何もお願いもしてないのに、今までずっと黙っていてくれたのです。ありがとう、亨君…。
これが、私が内緒にしていた秘密です。でも、もういいんです。あんなこと、もう何でもないんです…。私、強くなります。
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