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厄色亭・至宙

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3 告白(危機)

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 私達が近道しようと境内に入ると、そこには大きな車が何台もあって、ガラの悪い大人が大勢たむろしていたのです。嫌な感じがした私達は、手を繋いで駆け足で通り過ぎようとしました。
 その時、男の一人が「待てよ小僧!」、と言って行く手を阻み凄まれました。
「ここは今、立ち入り禁止なんだぜ、立て札に書いてあっただろう?」
 亨君が私を庇うようにして、「すみません、ゴメンなさい」と謝りましたが、
「ごめんで済むなら警察はいらねえ!、すっこんでろ!」
 その男はさらに詰め寄ってきました。
 でも違う男が、
「まあガキンチョ相手ににそんなにいきり立つなよ、大人気ねえな」
と取りなしてくれました。
 でもその男は私をしげしげと見て、いやらしい声で、
「この女子、いけるんじゃないか?なあ、いい感じだろ?、うひひひ…」
と周りの男達に同意を求めるのです。周りも
「うん…確かにちょっとませてる感じだし、身体もまあまあできかけてる感じだし…」
「もうちょっと胸やクビレが欲しいところだけど、たぶん親分好みっすよね…」
「俺もいいと思います、案外このくらい素朴なこの方が、実はナニが凄かった、てこと多いっす」
などと私を見てニヤニヤしながら勝手なことを言うのです。
「じゃあお前ら、この子を親分のところへ連れて行け」
 私は、怖くて溜まらなくなって亨君にしがみつきました。亨君は立ち塞がって
「やめてください、暴力はやめてください」
と言ってくれましたが、男達はお構いなしに私たちを掴み、社務所に向かいました…。

「親分、イケそうな子を見つけました。たまたまそこを通りがかった子ですがね…、うひひ…」
 社務所の中には数人の男がいて、中央に親分と呼ばれる、黒い背広の髭の濃い怖いおじさんがいました。
 そのおじさんは私に近寄り、私の全身を舐めまわすように凝視して、冷たい声で言いました。
「ほう、お嬢ちゃんか…、なるほど、いいねいいね…うひひひ…」
 至近距離で私を見つめるおじさんに私は恐怖を感じました。
「華ちゃんにへんなことをしないで!、僕は何でもします!」
 亨君がかばってくれましたが、「悪いが、坊やには用がないんだよ」と突き放されてしまいました。
「じゃあ、お嬢ちゃん、俺からいくつか質問するから正直に答えるんだ、いいな」
「は、はい…」
 私は亨君と引き離されて心細さでいっぱいでした。
「お嬢ちゃん、何年生だ?」
「小学校六年生です…」
「12歳か?」
「はい…」
 私は震えて答えました。
「もう生理とかは始まったかい?」
「は、はい…、今年の初めから…」
「そうか、じゃあもう大人なんだな、うひひひ…。じゃああそこの毛なんかも、うひひひひ…。ちなみに、そこのダサい坊やは彼氏か?」
「い、いえ…、クラスのお友達です…」
「ふーん、お友達ね…。キスとかしちゃったか?」
「ま、まだです…、私まだ何も知らないんです…」
 ボスの嫌らしい質問に、私は恥ずかしかったですが、それでも言われた通り正直に答えました。
「何も知らない、か…いい答えだ。ではお嬢ちゃん、何でもいいから踊ってみてくれ、ちゃんと真面目に踊るんだぞ!」
と凄まれました。
 私は仕方なく、半分泣きながら、覚えたてのヒップホップを踊りました。男達の手拍子に合わせて。
 5分ほど踊ったところで、
「よし、なかなかのセンスだ。じゃあ次は歌でも歌ってくれや!」
と言われたので、十八番の「津軽海峡冬景色」を熱唱しました。
「…♪…つがるかいきょう、ふゆげーしきいいいいー♪…」
 パチパチパチ、と周囲から拍手がわきました。
「ほほう、お嬢ちゃん、ちゃんとコブシまで効かしてるじゃねえか、なかなかだ」
 親分はニヤつきながら褒めてくれました。でもその眼光は鋭く、私を捉えて離しません。
「じゃあ、次はアドリブで寸劇でもやってもらおうか。うひひひひ…。俺が今からやる所作に合わせてアドリブでなんか演じて見ろ」
「そ、そんなことできません…」私はうろたえました。
「できない?じゃあなんで、ここにお前はいるんだ?、はあ?」
 親分は私に近づくと、私の襟元を掴んで凄んできました。私の身体が宙に浮きました。
「や、いや…、やめてください…」
 亨君も駆け寄って私を助けようとしてくれました。
「やめてくれよ!、華ちゃんにヘンなことするのは、やめて!」
 しかし「お前はすっこんでろっ、てのが分からんか!、これからイイところなんだから!」と別の大人に羽交い絞めされてしまいました。もう私を誰も助けてくれません。
 私は恐怖心は最高潮に達しました。そして気が付くと親分の頬をピシッと平手打ちしていたのです。
「大人に何をするか!こらしめてやる!」怒り心頭の親分は、私を床に押し倒し、押しかかってきました。
「いやああああああ!、やめて!、誰か助けて!」
 私は悲鳴を上げて全身をばたつかせ抵抗しました。もうだめ…、まさか亨君の目の前で…

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