渓谷の悪魔と娘

 太古より幾度となく噴火し、隆起し、砕けては噴火して出来た渓谷の底、陽の光も届かない奥底でソレは生まれた。
 火山灰と大地の奥底から噴き出すガス、触れた蝶が瞬時に地に落ちる瘴気だけが存在するその淀みで、ソレは足を滑らせて上から落ちてくる生き物の死骸を食べ、瘴気に染まって泥のようになった川の水を啜り、長い年月を生きた。そうして暗闇と瘴気の中で過ごして幾星霜。ソレは代わり映えのない陰鬱な世界に飽き、谷底から上へと這い出た。
 ソレは己と同じ命持つものを見つけて喜び、近付いた。しかしソレはあまりに大きく、小さな命持つものにとって異形だった。畏怖と嫌悪によって拒絶されたソレは渓谷に戻ろうかと考えたが、みなしごを拾う。
 孤独な異業の者と身寄りのない子供。
 彼らは異種族でありながら固い絆で結ばれた家族となっていく。
 あまりにかけ離れた種族であるがために問題は毎日のように起こるが、彼らは愛しみあう日々を過ごす。
 孤独な異形の生き物が父親となり、身寄りのない人間の子供が異形の娘として成長していく物語。

※シリアス皆無
※ふんわりファンタジー
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