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第十九章

戦う訳-03

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 そんな二者のやり取りを聞きながら、援護射撃を受けたまま地面へ着地する、聖奈機とフルフレームは、双方別れて行動を開始。

  敵の残り機体数は九機。そして全機にはヴィスナーと呼ばれるヒューマン・ユニットが搭乗し、パイロットスキルが高いという事は今までの戦いで良く知っている。

  だが――関係ない。


『僕達は負けない――不当な暴力によって、人々の命を脅かす悪を、決して許す事は出来ないッ!!』


 115㎜砲が背後より放たれている中、しかし彼は迷うことなくキャタピラ走行でジグザグに駆け、一機のアルトアリスへ接敵した。

  向けられる掌速射砲。しかし身を低くして懐に入り込むと、そのまま四川を振り、右掌速射砲の射線を無理やりに変えたまま肩の電磁誘導装置を叩きつけ、CIWSを放ちながら右腕部に持つ四川を振り込む。

  敵の装甲を斬りつけながら、それを放棄してレーザーサーベルへと持ち替えて振り切ると、一機を撃墜。

  撃破された味方機ごと電磁砲を撃ち込んでくる光景が既に見えていたので、バックジャンプしながら建物の陰に入り込み、銃撃が止むと同時に再び駆けだす。

  フルフレームの進行方向には残る四機のアルトアリスが。無人機への指示を峰岸へと送信しつつ、真ん中で電磁砲の装填をしつつレーザーサーベルを構えたアルトアリスへと近づき、レーザーサーベル同士で鍔迫り合い、斬り結ぶ。

  左手に持つ四川の残る一本も放棄。右手に持つレーザーサーベルを左手に向けて投げ渡し、振り下ろされたレーザーサーベルもそれで受けながら、115㎜砲の砲塔を斬り合うアルトアリスへ向け、放つ。

  衝撃で僅かに後ろへと飛ばされるが、しかし関節部等は許容範囲内で駆動する。


『残り三機……ッ!』


 115㎜の次弾装填を行いつつ、残る三機へと集中している援護射撃の真っ只中を、駆け抜けるフルフレーム。

  銃撃を回避しながら、今振り下ろされたレーザーサーベルと、脚部パイルバンカー。

  舌打ちをしながらパイルバンカーへは自機レーザーサーベルを振り込み、フルフレームへと向けて降ろされたレーザーサーベルには――大型電磁誘導装置から一気に電磁波を展開する事で、一瞬だけ磁場を乱して光刃を消し、その隙にパイルバンカーを展開したアルトアリスを殴りつけて転がり、再度展開されたレーザーサーベルを避ける事に成功。

  今殴ったアルトアリスが、速射砲を向けようとした光景が見えた。

  それを好機と考えた良司は、すぐにアルトアリスの腕を掴んで脇に抱え、今自身の背後から切り掛かろうとしたアルトアリスへと腕部を向けさせる。

  放たれる速射砲。弾頭はレーザーサーベルを振ろうとするアルトアリスへ着弾。


『なぁ――ッ!』

『感謝する』


 接触回線で聞こえるヴィスナーの声にそれだけを言い残して、そのままコックピットにレーザーサーベルを刺し込み、すぐにサーベルを後方へ向け、投げた。

  先ほど速射砲を撃たれたアルトアリスが動きを止めていたが、コックピットに投げられたレーザーサーベルが刺し込まれ、そのままコックピットが融解、地面に倒れると同時に爆発四散し、視界を曇らせた。


 しかし――それが良司にとっては誤算だった。


『しま――!』


 爆風のせいで、残る一機の場所がわからない。

  急ぎCIWSを稼働させて爆風を散らせようとするも、しかし叶わない。

  爆風の向こうから、速射砲と電磁砲が放たれて、今フルフレームの右腕部関節部に命中し、どこかへと飛んでいく。

  今、フルフレームに残された武器は115㎜滑腔砲だけ。

  だが、それを構える為に必要な右腕部がない状況だ。

  援護射撃はあるが、これも爆風のせいで視認できない有人機と無人機の放つ銃弾が狙い打てるとは思えない。


  万事休す――そこで思わず捨て台詞の一つでも吐いてやろうとした良司だったが。


『諦めンなッ!!』


 60㎜機銃を撃ちながらフルフレームの背後に立った、明久機。

  何を、と声を出すより前に、60㎜機銃を乱雑に放棄した明久機が、フルフレームの115㎜滑腔砲を無理矢理稼働させ、その砲塔を爆風に向けた瞬間――良司はコックピット内の安全装置を解除し、声を張り上げる。


『撃て村上――ッ!!』

『ッ――!!』


 良司が安全装置を解除した事で、115㎜滑腔砲のトリガーが引けるようになる。

  それと同時に機体の指を稼働させた明久機がトリガーを引き、放たれる115㎜の弾頭が、煙の向こうから速射砲を構え、放つ寸前だったアルトアリスのコックピットに着弾。


  沈黙したアルトアリスに、ホッと息を付いた二者。

  だが良司は接触回線で繋がる部下へ、言わなければならない事がある。


『どうして持ち場を離れた!?』

『そうしなきゃアンタが死んでたからだよッ!!』


 叫び返された言葉に、良司は言葉を詰まらせる。

  湧き出る苦笑。明久の恐怖に塗れながらも平静を保とうとする息遣いだけが聞こえ、良司は心からの言葉を、彼へ送る。


『……ありがとう、村上。君の悪運に、また救われた』

『そろそろ幸運って言ってくれてもいいんですよ?』

『残念だが、それは無い』


 フルフレームはこれにて、行動不能となった。
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