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第十一章
作戦開始-02
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村上明久は、山岳地帯の移動訓練を終えると、確かに機体の接地圧調整が都度良くなっている事を実感していた。
元々明久は操縦自体がそこまで達者な方ではなかったが、しかし今のポンプ付きは、とても動かしやすい。
そして足場の悪い場所で動かす事に慣れた今、機体が自分の身体になったようで少し達成感を感じていたし、この後城坂聖奈理事長が合流した上での模擬戦が非常に楽しみと考える程だった。
だが――何か悪い予感がする。
明久は普段からとてもツイている。(そういうと全員が苦虫を噛み潰したような表情を浮かべるのだが気にしていない)
そんな彼が、悪い予感を感じると、その予感は必ず当たる。
けれど確証も無いのに悪い予感というだけで皆に警戒を呼び掛けるわけにもいかないので、機体のメインカメラとサブカメラ、そして機体に装備されているセンサー類の監視を怠らずに行う。
『どうした村上。急に周りを警戒したりして』
良司の言葉に、明久は「えっと」と若干言葉を濁しながらも、正直に言う事にする。
「なーんか悪い予感するんすよ。だからちょっと警戒を」
『それを先に言え!!』
『全員警戒怠らないでッ! その辺に敵いるかもっ!! もしかしたら地雷かも!!』
『……村上さんには悪いのですが、どうにもこうなってしまう事が納得出来てしまうので、警戒しましょう』
『どれだけアキヒサの不運は有名なのだ……?』
結果的に全員が警戒をしだして、何だか申し訳ない気分になりつつも、もし勘違いであれば良し、勘違いでなければそれはそれで警戒の意味があるとポジティブに気持ちを切り替え、模擬弾頭の装填された短機関銃をチェックする。
「ガントレット大佐、もしオレの悪い予感が当たってたら、なんすけど」
『その場合は無理せず、まずは撤』
と、そんなガントレットとの通信が――遮断された。
「え? あれ?」
通信を一度切った後、もう一度繋ぎ直そうとするも、しかし叶わない。通信は繋がらず、携帯端末を取り出して電話を試みようとするも、データ通信通話も音声通話も阻害されている事が分かった。
「もしかして、これ」
と、そこで。のどか機が明久の搭乗するポンプ付きの肩に触れた。
『明久、聞こえる!?』
「あ、うん。通信戻ったのかな?」
『違う! 通信妨害を受けてるよコレ! 接触回線だけが頼り!』
機体同士を接触させる事によりシステム通信を行う接触回線は、通信妨害時にも有効だと確かに授業で習った。明久は急ぎ、フルフレームに触れ、フルフレームも紗彩子機に触れる。
『冗談ではなく、状況は好ましくありませんね』
『だがどうする? こちらには模擬弾頭しかない。先ほどガントレット大佐が仰っていたように、一度帰投して』
『っ、』
途中で、のどか機が全員の機体を突き飛ばし、安全装置の取り付けられているダガーナイフを引き抜き、それを振り込んだ。
振り込まれたダガーナイフ。
しかしそれは、空を切らずに何かとぶつかる。
『――アルトアリス!』
『なんとまぁ、レーダーも阻害されている状況で、不意を突いた動きを読み切るとは』
のどかの言葉通り、そこにはアルトアリス一号機――オースィニの駆る機体があった。双剣の一振りを振り込んでいたので、それをダガーナイフで防いだのだ。
突如として現れた理由は、恐らく山岳地帯の非常に視認性の悪い状況だったから、という事が理由であろう。木々に隠れられてセンサーも阻害されている状況では、襲い掛かられてはひとたまりもない。
双剣を弾き、アルトアリスの腹部を蹴りつけ、距離を取ると同時にポンプ付きに接近、機体同士を触れ合わせる。
『明久、聞こえる!?』
「聞こえる!」
『このままだと全員お陀仏だから、アンタだけ先に戻って、状況を報告してっ』
「え、でも」
『この中で一番早く帰れるのアンタだからっ、アタシらも隙を見て逃げられるなら逃げるっ』
言うべき事は言い終えたとしたのどかが、ダガーナイフの安全装置に、先ほど一号機が入れた切れ込みに向けて拳を叩きつけ、安全装置を破壊し、取り外す。
ダガーナイフの刃に展開されるチェーンソーを起動させ、構える。
すると僅かな葛藤の後、明久のポンプ付きが、その推進力を活かした強引な加速を用いて、木々の隙間を縫うように撤退していく様子を、皆が確認していた。
『聞こえるかな? AD学園に所属する子供たち』
そんな通信妨害の最中、声が届いた。
良司ものどかも紗彩子も、通信妨害が解かれたのかと、指令室と通信を行おうとするも、それは叶わない。しかし、一号機を起点とした半径数百メートル間だけは、通信可能エリアになっている事を確認する。
『貴方は、機体の乗り換えなどが行われていなければ、オースィニというコードネームだと報告を受けておりますが』
良司は、先日の交流戦にて雷神と戦った者の名を呼ぶと、それに『そうとも』と同意したオースィニ。
『奇襲なんて手荒な事をして申し訳ない。しかしあの状況ならば、コックピットを傷つける事無く、君たちの機体を破壊できると踏んだのでね。信条を曲げてでも、そうさせて貰った』
『貴方達レイスは今回、私たちの機体を破壊する事が目的と――そういう事ですね』
『察しが良いね、神崎紗彩子君。先日の校舎内で君に暴力を働いた事も合わせて謝罪しよう』
『なんで明久のポンプ付きは見逃したの? アイツの機体も排除対象じゃないの?』
『いや、排除対象は君たち三人だけさ。あのポンプ付きには興味なんてない』
元々明久は操縦自体がそこまで達者な方ではなかったが、しかし今のポンプ付きは、とても動かしやすい。
そして足場の悪い場所で動かす事に慣れた今、機体が自分の身体になったようで少し達成感を感じていたし、この後城坂聖奈理事長が合流した上での模擬戦が非常に楽しみと考える程だった。
だが――何か悪い予感がする。
明久は普段からとてもツイている。(そういうと全員が苦虫を噛み潰したような表情を浮かべるのだが気にしていない)
そんな彼が、悪い予感を感じると、その予感は必ず当たる。
けれど確証も無いのに悪い予感というだけで皆に警戒を呼び掛けるわけにもいかないので、機体のメインカメラとサブカメラ、そして機体に装備されているセンサー類の監視を怠らずに行う。
『どうした村上。急に周りを警戒したりして』
良司の言葉に、明久は「えっと」と若干言葉を濁しながらも、正直に言う事にする。
「なーんか悪い予感するんすよ。だからちょっと警戒を」
『それを先に言え!!』
『全員警戒怠らないでッ! その辺に敵いるかもっ!! もしかしたら地雷かも!!』
『……村上さんには悪いのですが、どうにもこうなってしまう事が納得出来てしまうので、警戒しましょう』
『どれだけアキヒサの不運は有名なのだ……?』
結果的に全員が警戒をしだして、何だか申し訳ない気分になりつつも、もし勘違いであれば良し、勘違いでなければそれはそれで警戒の意味があるとポジティブに気持ちを切り替え、模擬弾頭の装填された短機関銃をチェックする。
「ガントレット大佐、もしオレの悪い予感が当たってたら、なんすけど」
『その場合は無理せず、まずは撤』
と、そんなガントレットとの通信が――遮断された。
「え? あれ?」
通信を一度切った後、もう一度繋ぎ直そうとするも、しかし叶わない。通信は繋がらず、携帯端末を取り出して電話を試みようとするも、データ通信通話も音声通話も阻害されている事が分かった。
「もしかして、これ」
と、そこで。のどか機が明久の搭乗するポンプ付きの肩に触れた。
『明久、聞こえる!?』
「あ、うん。通信戻ったのかな?」
『違う! 通信妨害を受けてるよコレ! 接触回線だけが頼り!』
機体同士を接触させる事によりシステム通信を行う接触回線は、通信妨害時にも有効だと確かに授業で習った。明久は急ぎ、フルフレームに触れ、フルフレームも紗彩子機に触れる。
『冗談ではなく、状況は好ましくありませんね』
『だがどうする? こちらには模擬弾頭しかない。先ほどガントレット大佐が仰っていたように、一度帰投して』
『っ、』
途中で、のどか機が全員の機体を突き飛ばし、安全装置の取り付けられているダガーナイフを引き抜き、それを振り込んだ。
振り込まれたダガーナイフ。
しかしそれは、空を切らずに何かとぶつかる。
『――アルトアリス!』
『なんとまぁ、レーダーも阻害されている状況で、不意を突いた動きを読み切るとは』
のどかの言葉通り、そこにはアルトアリス一号機――オースィニの駆る機体があった。双剣の一振りを振り込んでいたので、それをダガーナイフで防いだのだ。
突如として現れた理由は、恐らく山岳地帯の非常に視認性の悪い状況だったから、という事が理由であろう。木々に隠れられてセンサーも阻害されている状況では、襲い掛かられてはひとたまりもない。
双剣を弾き、アルトアリスの腹部を蹴りつけ、距離を取ると同時にポンプ付きに接近、機体同士を触れ合わせる。
『明久、聞こえる!?』
「聞こえる!」
『このままだと全員お陀仏だから、アンタだけ先に戻って、状況を報告してっ』
「え、でも」
『この中で一番早く帰れるのアンタだからっ、アタシらも隙を見て逃げられるなら逃げるっ』
言うべき事は言い終えたとしたのどかが、ダガーナイフの安全装置に、先ほど一号機が入れた切れ込みに向けて拳を叩きつけ、安全装置を破壊し、取り外す。
ダガーナイフの刃に展開されるチェーンソーを起動させ、構える。
すると僅かな葛藤の後、明久のポンプ付きが、その推進力を活かした強引な加速を用いて、木々の隙間を縫うように撤退していく様子を、皆が確認していた。
『聞こえるかな? AD学園に所属する子供たち』
そんな通信妨害の最中、声が届いた。
良司ものどかも紗彩子も、通信妨害が解かれたのかと、指令室と通信を行おうとするも、それは叶わない。しかし、一号機を起点とした半径数百メートル間だけは、通信可能エリアになっている事を確認する。
『貴方は、機体の乗り換えなどが行われていなければ、オースィニというコードネームだと報告を受けておりますが』
良司は、先日の交流戦にて雷神と戦った者の名を呼ぶと、それに『そうとも』と同意したオースィニ。
『奇襲なんて手荒な事をして申し訳ない。しかしあの状況ならば、コックピットを傷つける事無く、君たちの機体を破壊できると踏んだのでね。信条を曲げてでも、そうさせて貰った』
『貴方達レイスは今回、私たちの機体を破壊する事が目的と――そういう事ですね』
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『なんで明久のポンプ付きは見逃したの? アイツの機体も排除対象じゃないの?』
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