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第三章

アメリア・ヴ・ル・レアルタ-01

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 薄暗い照明だけが、彼女達三人の肌を艶やかに照らしている。

  ベッドに横たわる二人の少女と、その二人を見定めるように、間に入り込んで膝でベッドの上に立つ。

  クアンタの腹部に右手をやりながら、左手でリンナの尻を撫でる、アメリアの細い指がスッ――と動かされるだけで、リンナがビクリと身体を震わす。


「ふふん、愛いのぅ、愛いのぅ。リンナはこういう事に慣れておらん……いや、初めてかえ?」

「ひゃ、ひゃい……っ」

「安心せい。女同士は凄いぞ。そりゃあもう、乱れる事が出来る。下手な麻薬よりも規制すべきもんかもしれんぞ」

「あ……あの、アタシ……っ、は、初めては、その……っ」

「ん? 吾輩とでは、気が乗らんとでもいうかえ?」

「そ、そういうわけじゃ、無いんですが……」


 チラリと。視線を僅かに横へズラすリンナの目線が、クアンタの目線と重なった。

 そうして顔を赤くした彼女を見据え、アメリアは二人から身体を放し、近くにあった椅子へ、既に下着なのか紐なのかもわからぬ衣服を付けた状態で臆面もなく堂々と腰かけ「ならばまずは二人で交われば良い」と言い切った。


「吾輩は二人の情事を見させてもらい、興奮を高ぶらせて貰うとする。――クアンタ、お前はどうじゃ?」

「……命令という事ならば、それに従います」


 共に横たわるリンナの柔肌をぎゅっ……と抱き寄せ、その豊満な乳房に彼女の顔を埋めさせたクアンタは、彼女の耳元で、囁く。


「私は、こうした行為の方法も、意味もわからん。……お師匠に委ねる」

「く……クアンタ、いい……の?」

「私にとっての良いも何もない。お師匠に委ねるのだから、私の身体を好きにすればいい」


 彼女の言葉に、リンナは思わず彼女の胸から顔を離し、クアンタの肩に手をやって馬乗りになる。

  まるでクアンタをベッドに押し倒したような格好となったが――しかし、そこで頭が真っ白になった。


(え、え、え、大丈夫? アタシ今クアンタの身体を自由に出来るっていってもこの子アタシの弟子よ!? 弟子に手ぇ出しちゃうってお師匠として一番やっちゃいけない事なんじゃないの!? 

 でもこの子の大きい胸、いつも見てたけどマジでデカいんだよなぁ……アメリア様の胸もデカいけどあっちは身長と体格に見合った大きさというか、でもこの子の場合は身長こそアタシよりデカいけど体格としては華奢だからデカい胸がより強調されてるというか……。

 う、うん。よく考えろアタシ。この子は宇宙人で、元々チキューって所を侵略しに行って、アタシ達と似たヒトの形を模したもの、ってこの子も神さまも言ってたわけじゃん? つまりそう言う事に関して、ヒト様の常識を教えてあげるのも師匠の役目ってわけじゃないの?

  ああ、でも普通常識と言ったら男女によっての行為なわけだし……ん、アタシは自分の事を男だと思ってるから別にいいのか? んー、認めたくないけどアタシ身体は女だしなー……胸は無いけど)

「リンナ、考え過ぎじゃ。素直になって、その娘を抱きたいと思うかどうかで行動せい」


 背後よりかかる声に、リンナが震えながら「でも……っ」と声を漏らすと、リンナの頬に手をやる、クアンタ。


「お師匠に委ねる。考える事も重要だが、しかし、アメリアの言う通り、感情のままに行動する事も、時には重要なのだろう」

「……アンタには、感情が無い、のに?」

「少しずつだが、感情を認識している。先ほどのようにな――そして、他の誰でもない、お師匠に抱かれるのであれば、気分が高まる、とでもいえばいいか」


 クアンタは、何時ものように無表情だが――しかし、顎を僅かに上げ、まるでキスを待つように、目を閉じた。

  こうした行動の節々に、彼女の感情が僅かながらに垣間見えた気がして、リンナは(ええい、ままよっ)と心中覚悟を決めた瞬間。


  クアンタが急に起き上がり、リンナの身体を突き飛ばした。
  
  
  **
  
  
  時は一日前に遡る。

  クアンタがリンナの弟子となり、一週間の時が過ぎた。

  リンナ刀匠鍛冶場には殆ど依頼と言う依頼は無く、既に刀を持っている者からの手入れ希望等が来て掃除を行ったり、この間は鍋の補修を請け負っていた。


「さて――じゃあ色々勉強していくわよ」


 この日も、同様に暇だった。故にリンナは作業着を脱いだ上で薄い灰色の貫頭衣に身を包み、メガネをかけた格好となり、紙の本を持った。


「メガネ」

「ん? ああ。昔から暗い所で作業してたから近眼になっちゃってさぁ。そこまで酷い訳じゃないから普段は付けないけどね。本読む時位」


 クアンタはリンナから貰った紙と鉛筆、そして消しゴムを用意した。

 この辺りの製品に関しても問うてみたが、リンナは「ん? 紙はどうやって作るの? アタシも知らない。鉛筆? 確かそう言う鉛があるんでしょ? よく知らんけど。 消しゴム? パンが昔使われてたって聞いた事あるけど知らねー」と概ね知らないが回答だったので、諦めた。


「んじゃ、コレから刀の作り方を学んでいくわね。ただ一つ先に言っとくと、これから説明すんのはあくまでアタシが主流で使ってる製法だから、他に刀作ってる所があってもまた別の方法があったり、邪道なやり方とかあるかもしれない。アタシ以外の奴に弟子入りする時は気を付けなさいよ」

「そんな事は無い。故に安心してくれ」

「……そ。そう言われるのは、嬉しいモンね?」


 平静を装いつつも、しかし僅かに表情を赤めて口元が動いている事に気付いていないリンナは、その内心を隠しつつ「じゃあ行くわよ」と話を逸らす。
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