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第一章
変身、斬心の魔法少女・クアンタ-08
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鞘から刃を抜き放ったクアンタ。しかし刃の方を一度見定めると、反対側へ握り直す。斬り込む面を棟側へとしたのだ。
「殺さず、奴らを捕らえ、然るべき機関へと連行する。それが解決手段だ」
「で、でもそれが簡単に出来る相手じゃないんだってばっ!
だって、大の男三人が、剣で武装してんだよ!? どんだけアンタが強くても、殺さないなんて条件じゃ絶対に圧し負ける!」
「出来る。弟子を信じろ、お師匠」
クアンタが放つ言葉には、重みが無い。
彼女の言葉には力量も無く、熱意も無く――しかし故に、それが「出来るのだ」と言う説得力さえ与えてくれるようで、リンナはグッと息を呑んだ。
「舐めてんじゃねぇぞこのアマぁッ!」
バカの一つ覚え、とでもいえばいいか。
男たちは構えもせず、連携も考える事も無く剣を振るい、リンナが下がって巻き込まれ無い事を確認したクアンタが、刀を乱雑に、振るう。
バスタードソードの刃と、刀の棟がそれぞれを弾き合う。
男は例え技術が劣っていたとしても、鉄の比率が多く重みのあるバスタードソードに合わせ、力で圧せば何とかなると踏んでいた事だろうが、しかしそれは叶わない。
大の男が上段から振るった刃の圧を、その刀が押しのけて振り切られると、男は数メートル程吹き飛ばされる。
「その程度か」
「が……ッ、な、何だテメェ、その怪力……!」
あまりの力強さに困惑する間に切りかかる二者の刃。それを全て寸での所で回避すると、一人の腹部に柄の頭を、もう一人には棟で殴打すると、数歩後ずさりながら距離を取る。
男たちの動きが止まった瞬間、クアンタが動く。
刀を中段で構えつつ三人へ向け突撃し、振られる剣を刀の棟で受け流しつつ、一人一人の腹部に、胸部に、棟や柄で殴っていく姿を見据え、リンナは思わず歓声を挙げた。
「強い……ッ」
力も、技術も、敵を見据え適切に行動できる冷静さも持ち得る彼女に、男たちは防戦どころか、ただ鉄の塊で殴りつけられるのを待つだけだ。
そしてクアンタは、今日の刀匠においても汗一つ流さず、疲れさえ見せない体力すら持ち得る。
これなら、勝てる。そうリンナが喜んだ、その時。
「貴様ら、何を小娘一人に圧されてる!?」
「し、しかしダンナぁ……っ」
「もうよい――【ゴルタナ】の使用を許可する!」
ヴァルブの放つ言葉に、リンナは見えかけていた希望を打ち砕かれたような絶望に叩き落される。
「ゴ……ゴルタナぁ!? アンタら、もしかして刀一本の為に、ゴルタナまで持ち出したッての!?」
「使う羽目になるとは思わなかったがな……っ」
男たちは、懐にしまい込んでいた掌サイズの小さな正方形状の何かを取り出し、不敵に笑う。
クアンタはその三つを見据え、何かを判断しようにも、それがサイコロのような物にしか見えず、リンナへと「ゴルタナとは何だ」と問いかける。
その問いに、答えを示すかのように、男たち三人は一斉に、声をあげた。
『ゴルタナ、起動!』
声と共に、発光したゴルタナと呼ばれる正方形の物体が、溶けだしていく。
それは男たちの肉体を覆う様に展開されていくと、薄い銀色の鎧にも似た形となり、まとった男たちは腕を回して「こりゃあいい!」と歓喜の声をあげつつ――剣をクアンタへと向け、振るう。
三人の剣劇は相変わらず連携も考えぬバラバラな動き。
しかし先ほどまでと異なる点としては「明らかに動きが機敏になり、また力強さも桁違いに上がっている」という事。
先ほどは弾き返せた一撃を、今度はクアンタの方が圧し負け、弾き飛ばされる勢いを利用して距離を取ろうとするも、残る二者が疾く駆け、切り掛かる。
唯一の救いとしては、身体能力が上がっていたとしても剣の腕が上がっているわけではない事。
その剣筋を見極め、避け、棟を叩きつけるも――あまりに強固な鎧によって男たちはびくともせず、ただ振り込まれた剣の一閃を棟で受けたが、クアンタは姿勢を崩し、男は剣を弾き飛ばされてしまう。
姿勢を崩し、地面へ背中を付けたクアンタの隙を逃さぬと、剣を弾き飛ばされた男は拳を彼女の顔面へ向けて振り込み、クアンタはそれを甘んじて受けようかと考えるも。
「――ッ!」
しかし視線から無数の入る情報に、思わず首を傾げるようにして、拳を避ける。
地面へ倒れ込んでいたクアンタが避けた拳は地面へ叩き込まれるが、しかし男の勢いよく振り込まれた拳は地面に亀裂を走らせるばかりか、一瞬とはいえ周辺の地面がゴゴッと揺れる。
クアンタもその衝撃の中では満足に動く事も出来ず、拳を振り込んだ男を押しのけて立ち上がった瞬間、残る二者が振るった刀の起動を読み切る事が出来ず、刀の棟で受けきりながらも体ごと弾き飛ばされ、再び地面へ転がった。
「ク、クアンタッ」
すぐに起き上がり、駆け寄ってきたリンナを守るように刀を構える。
その様子に気分を良くしたのか、ヴァルブが「知らんなら教えてやろう」と笑いながら口を開く。
「ゴルタナは、カルファス第二皇女様とアルハット第四皇女様が共同で開発を行った魔術式身体補助システムだ。
ヒトの持つ身体能力を魔術による補助で底上げし、また外部装甲としての役割も果たす事から、皇国軍を中心に配備された最新鋭装備である。
まあこのゴルタナは旧世代型だが――ゴルタナを持たぬ貴様らに、打ち破る術はない」
「なるほど。確かに先ほどと比較して八割以上のパワー増加、五割以上の機動力増加を確認。またゴルタナ展開後は鋼並の堅牢さを持つ装甲が展開されている事から、通常の刃で切る事も不可能、という事か」
「リンナより物分かりがいいではないか、女。ならばどちらが不利か、分かっている事だろう?
――これが最後の警告だ。刀を渡せ。それ以上使用されて、価値を下落されては流石に困るのでな」
「断る。お師匠はそれを望んでいない」
「いいや望んでいるともさ! 折角できた弟子を殺される位ならば、そのような刀一本安いものだろうリンナ!」
声を張り上げるヴァルブの言葉に。
リンナは頭を垂れながら、コクリと頷く。
「……そうだ、お前さんが殺されていい理由にはならない。
せっかく、アタシに出来た大切な弟子だ。それを守る為なら、遺作だろうが何だろうが、刀なんか惜しくはねぇよ」
「お師匠」
「無理なんだ。ゴルタナを使用した男に、アタシやお前さんみたいな女が、叶う筈が無い。
……認めたくないけど、これが事実だ、これが現実だ……受け入れるしか、無い」
「殺さず、奴らを捕らえ、然るべき機関へと連行する。それが解決手段だ」
「で、でもそれが簡単に出来る相手じゃないんだってばっ!
だって、大の男三人が、剣で武装してんだよ!? どんだけアンタが強くても、殺さないなんて条件じゃ絶対に圧し負ける!」
「出来る。弟子を信じろ、お師匠」
クアンタが放つ言葉には、重みが無い。
彼女の言葉には力量も無く、熱意も無く――しかし故に、それが「出来るのだ」と言う説得力さえ与えてくれるようで、リンナはグッと息を呑んだ。
「舐めてんじゃねぇぞこのアマぁッ!」
バカの一つ覚え、とでもいえばいいか。
男たちは構えもせず、連携も考える事も無く剣を振るい、リンナが下がって巻き込まれ無い事を確認したクアンタが、刀を乱雑に、振るう。
バスタードソードの刃と、刀の棟がそれぞれを弾き合う。
男は例え技術が劣っていたとしても、鉄の比率が多く重みのあるバスタードソードに合わせ、力で圧せば何とかなると踏んでいた事だろうが、しかしそれは叶わない。
大の男が上段から振るった刃の圧を、その刀が押しのけて振り切られると、男は数メートル程吹き飛ばされる。
「その程度か」
「が……ッ、な、何だテメェ、その怪力……!」
あまりの力強さに困惑する間に切りかかる二者の刃。それを全て寸での所で回避すると、一人の腹部に柄の頭を、もう一人には棟で殴打すると、数歩後ずさりながら距離を取る。
男たちの動きが止まった瞬間、クアンタが動く。
刀を中段で構えつつ三人へ向け突撃し、振られる剣を刀の棟で受け流しつつ、一人一人の腹部に、胸部に、棟や柄で殴っていく姿を見据え、リンナは思わず歓声を挙げた。
「強い……ッ」
力も、技術も、敵を見据え適切に行動できる冷静さも持ち得る彼女に、男たちは防戦どころか、ただ鉄の塊で殴りつけられるのを待つだけだ。
そしてクアンタは、今日の刀匠においても汗一つ流さず、疲れさえ見せない体力すら持ち得る。
これなら、勝てる。そうリンナが喜んだ、その時。
「貴様ら、何を小娘一人に圧されてる!?」
「し、しかしダンナぁ……っ」
「もうよい――【ゴルタナ】の使用を許可する!」
ヴァルブの放つ言葉に、リンナは見えかけていた希望を打ち砕かれたような絶望に叩き落される。
「ゴ……ゴルタナぁ!? アンタら、もしかして刀一本の為に、ゴルタナまで持ち出したッての!?」
「使う羽目になるとは思わなかったがな……っ」
男たちは、懐にしまい込んでいた掌サイズの小さな正方形状の何かを取り出し、不敵に笑う。
クアンタはその三つを見据え、何かを判断しようにも、それがサイコロのような物にしか見えず、リンナへと「ゴルタナとは何だ」と問いかける。
その問いに、答えを示すかのように、男たち三人は一斉に、声をあげた。
『ゴルタナ、起動!』
声と共に、発光したゴルタナと呼ばれる正方形の物体が、溶けだしていく。
それは男たちの肉体を覆う様に展開されていくと、薄い銀色の鎧にも似た形となり、まとった男たちは腕を回して「こりゃあいい!」と歓喜の声をあげつつ――剣をクアンタへと向け、振るう。
三人の剣劇は相変わらず連携も考えぬバラバラな動き。
しかし先ほどまでと異なる点としては「明らかに動きが機敏になり、また力強さも桁違いに上がっている」という事。
先ほどは弾き返せた一撃を、今度はクアンタの方が圧し負け、弾き飛ばされる勢いを利用して距離を取ろうとするも、残る二者が疾く駆け、切り掛かる。
唯一の救いとしては、身体能力が上がっていたとしても剣の腕が上がっているわけではない事。
その剣筋を見極め、避け、棟を叩きつけるも――あまりに強固な鎧によって男たちはびくともせず、ただ振り込まれた剣の一閃を棟で受けたが、クアンタは姿勢を崩し、男は剣を弾き飛ばされてしまう。
姿勢を崩し、地面へ背中を付けたクアンタの隙を逃さぬと、剣を弾き飛ばされた男は拳を彼女の顔面へ向けて振り込み、クアンタはそれを甘んじて受けようかと考えるも。
「――ッ!」
しかし視線から無数の入る情報に、思わず首を傾げるようにして、拳を避ける。
地面へ倒れ込んでいたクアンタが避けた拳は地面へ叩き込まれるが、しかし男の勢いよく振り込まれた拳は地面に亀裂を走らせるばかりか、一瞬とはいえ周辺の地面がゴゴッと揺れる。
クアンタもその衝撃の中では満足に動く事も出来ず、拳を振り込んだ男を押しのけて立ち上がった瞬間、残る二者が振るった刀の起動を読み切る事が出来ず、刀の棟で受けきりながらも体ごと弾き飛ばされ、再び地面へ転がった。
「ク、クアンタッ」
すぐに起き上がり、駆け寄ってきたリンナを守るように刀を構える。
その様子に気分を良くしたのか、ヴァルブが「知らんなら教えてやろう」と笑いながら口を開く。
「ゴルタナは、カルファス第二皇女様とアルハット第四皇女様が共同で開発を行った魔術式身体補助システムだ。
ヒトの持つ身体能力を魔術による補助で底上げし、また外部装甲としての役割も果たす事から、皇国軍を中心に配備された最新鋭装備である。
まあこのゴルタナは旧世代型だが――ゴルタナを持たぬ貴様らに、打ち破る術はない」
「なるほど。確かに先ほどと比較して八割以上のパワー増加、五割以上の機動力増加を確認。またゴルタナ展開後は鋼並の堅牢さを持つ装甲が展開されている事から、通常の刃で切る事も不可能、という事か」
「リンナより物分かりがいいではないか、女。ならばどちらが不利か、分かっている事だろう?
――これが最後の警告だ。刀を渡せ。それ以上使用されて、価値を下落されては流石に困るのでな」
「断る。お師匠はそれを望んでいない」
「いいや望んでいるともさ! 折角できた弟子を殺される位ならば、そのような刀一本安いものだろうリンナ!」
声を張り上げるヴァルブの言葉に。
リンナは頭を垂れながら、コクリと頷く。
「……そうだ、お前さんが殺されていい理由にはならない。
せっかく、アタシに出来た大切な弟子だ。それを守る為なら、遺作だろうが何だろうが、刀なんか惜しくはねぇよ」
「お師匠」
「無理なんだ。ゴルタナを使用した男に、アタシやお前さんみたいな女が、叶う筈が無い。
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