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第二章

46 手紙 ト 約束

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この世界に四季はない。
1年を通して気候は安定している。

土地柄によって寒冷な地域、温暖な地域、多湿な地域など様々だがそれも近くに氷雪型のダンジョンや火山型のダンジョンがあるからという理由だ。
もっとも、それらのダンジョンも近年は鎮静化の傾向にあり昔ほど極端な環境でもなくなっているとか。

そういった周囲の環境までもを変化させるような特殊ダンジョンは元より、そもそもダンジョン自体が少ない場所に拓かれた王都はとても過ごしやすい。

つまり何が言いたいかというと、気温も気候も全く変わらないけど月日は経ったよ、ってこと。

さて、そろそろ手紙をしたためようと思う。

手紙の内容は時節の挨拶とご機嫌伺いしか書かない。
手紙を送る理由はもちろん殿下に会いに行くよ!ってコトだけど、直接そんな事は書く必要はないし、書いてはいけない。

女性から男性に直接的に「会いたい」という内容の手紙を送るのはとされているし、更に王族に対して臣下たる貴族が一方的な要望を通達していると思われかねないからね。

だからこそ貴族社会では女性側の婚約者から「ご機嫌いかが?」とだけ書かれた手紙が届けば、十分「会いたい」という意味で受け取って貰えるのだ。

その手紙を受け取った相手方が「じゃあ○日にどう?」みたいな手紙を返してくれて、それに対する了承の返信を以て対面の約束が成立する。

前回、王宮に参じてから20日。
せっせと手紙をしたためているけれど、今までもずっと同じ方法で面会の約束を取り付けて来た。

もうさ、何が腹立つって「○日に来い」ってって事。
にも関わらず当日ドタキャンされるってあまりに理不尽じゃないかな?
まあ、本音は会いたいなんて毛ほども思ってない訳だけど婚約者の義務だしね。

それ以上に殿下を次期国王として導くという重すぎるお役目がのしかかっている。
一応、殿下とのやり取りをお父様経由で国王陛下に報告もしなきゃいけないんだよね。最近は全然できてないけどさ。


確かに貴族や王族には特権がある。
そりゃもう、平民に比べたらとんでもない優遇された特権だ。

でも、だからって約束を破ってはいけない。
下民を軽視する貴族は一定数いるけれども、約束を軽視するのは頂けない。

むしろ、貴族や王族であればこそ約束は守らなければならない。
何故ならこの国の法律ルールを決める存在がそれを破ることがあってはならないからだ。

もっとも、前世のような細かい法律じゃなくて、ゆるゆるの穴だらけな自分たちに都合のいい法律ではあるのだけど·····。
それでも1度決めたルールや約束を簡単に反故にしてしまえばルールや約束が意味を成さなくなる。

私たち貴族はもちろん、その頂点に立つ王族が決定事項を軽視する事は絶対に許されないのだ。
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