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第二章

42 愚痴 ト 休息

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という訳で、帰宅しました。

「疲れたー」

『おつかれー』

「お帰りなさいませ、お嬢様。
やはり王族の方とのお話は気を遣われたでしょう。お疲れ様でした。」

自室に入った瞬間に椅子に座り込み、深いため息と共に本音を吐き出す。

部屋の中にはセフィドとリナだけなので気兼ねしないし、多少お行儀が悪くてもスルーしてくれるのが今は本当にありがたい。

「いいえ、現実には気を遣わせても貰えなかったわ」

『え?相手は王子様でしょ?』

「どういう事です?」

「実はここ最近、殿下にお会いできていないのよ。文字通りの無駄足ね。」

「???·····しかし、事前のお手紙では日時の約束や訪問の了承もいただいてますよね?」

リナの頭上にクエスチョンマークが大量発生する。
私も同意見だ。

「ええ、でも実際お城へ行くと忙しいと断られるの。」

『え、何それドタキャンじゃん』

それな。

「因みに、その事は旦那様はご存知なのですか?」

「いいえ、伝えてないわ。」

お父様に伝えれば王宮に対して何かしらの打診をするだろう。

セフィドの言う通り、正式な手順を踏んだ面会を一方的にドタキャンされてるのだ。
立場の違いはあれど、こうもあからさまに蔑ろにされてはこちらも立場がない。

まあ、とか言ってみても子供が子供に会うだけだ。
貴族と王族という立場が話をややこしくしてるけど、別に重要な会議をしようとしてる訳じゃない。

だからこそ今までは私が無駄足を踏まされただけで終わっていた。
早い話が「私が我慢すれば丸く収まる」的な理論ね。

一時的な問題なら別にそれでも構わないんだけど、2回、3回と重なるにつれて状況が常態化しつつあるのを感じる。
これが当たり前になってしまっては困るのだ。

「旦那様に相談された方がよろしいのでは?」

「わかってる。でもお父様に言えば確実に陛下にも伝わるでしょう?
殿下のお立場を考えると気が引けるわ」

『パパに告げ口しやがって!って事?
自業自得じゃん』

仰る通りです、セフィドさん。

「しかし、今回が初めてではないのならお嬢様の·····延いては公爵家の立場もございますし·····」

それも仰る通りです。

人の口にとは立てられないって言うじゃない?
お城ではメイドも執事も私に恐縮しきりで全力でもてなしてくれてるけど、それも不自然な状態だ。

「公爵家の令嬢が王太子に会ってもらえないらしい」という話が貴族たちに漏れたらどんな尾ヒレが付いた噂になるか分からない。

「令嬢が超ブス」なんて尾ヒレならまだマシだ。
下手したら「公爵家は王家に信用されてない」とか判断されかねない。

とりあえず、次回の面会での改善を期待しよう。
会えれば一番いいし、そうじゃなくても手紙の段階で断ってくれればそれでも良い。

そうじゃなきゃ·····やっぱお父様に相談かな。
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