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第二章
41 徒労 ト 帰宅
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こうなるだろう事が予想できたのでメイドさんも当たり前のように紅茶を淹れてくれるし、お話に付き合ってくれる。
「お忙しいとの事でしたけど、体調はお変わりありませんの?」
「はい。お元気でいらっしゃいますよ」
でしょうね。
少しだけ、本当は体調が優れないのに私に気を使わせないように「忙しい」などと言付けたのでは·····と期待したけど一切そんな事ないらしい。
本当に忙しいのか、面倒だから会いたくないとかなのか。
どっちにしろ、私は振り回されただけじゃん。
せめて手紙の段階で断って貰えればわざわざ城まで来ないんだけどなー。
「恐れながら、殿下がお忙しいご様子なのは間違いないかと。」
お話に付き合ってくれてるメイドさんが紅茶を淹れ直しながらフォローしてくれる。
「そうなの?」
「はい。詳しい事は存じ上げませんが、何やら王宮魔法士の研究棟に熱心に通ってらっしゃるようで」
魔法!
マジで?!
私もやりたい!!
それ、私も一緒に行っちゃダメかな?
あんだけ魔法魔法って心弾ませてたのに、実は私、未だに魔法の「マ」の字にも触れてない。
お父様とお母様には魔法を学ぶ機会を与えて欲しいとお願いしたのだけど受け入れられなかった。
曰く「魔法を覚えてどうするの?」だそうだ。
ダンジョンに行くわけでもないし、生活魔法なら使用人がいるから必要ないでしょう、とバッサリだ。
ダンジョン行きたいんだよー!!と言っても魔法以上に必要ないと断じられて終了なのは目に見えてるからな·····。
私自身も「何故行きたいのか?」と問われれば「レベル上げたい」というよく分からない理由なので強く主張できずにいる。
誰か私に魔法教えてくれないかなー。
とにかく、殿下にお会いできないならここにいても仕方ない。
「私、そろそろ失礼しますわね」
「せっかくご足労いただきましたのに、誠に申し訳ございません」
心の底から申し訳なさそうにメイドさんが深々と頭を下げるけれど、どうしようもない。
いくら王族とは言え、思いっきり振り回されていい気分はしない。
ハッキリ言えばイラッとする。
そりゃあメイドさんだって居た堪れないよね。
「気にしないで、とは言えないけどとても美味しい紅茶でしたわ。」
「勿体ないお言葉です。」
部下の不躾が主の責任になるように、主人の失態も部下の不手際になる。
本来なら私は、アポイントを取った面会をきちんとセッティング出来なかったメイドや執事に責任を問わなくてはならない。
でもなー、可哀想じゃん。
いや、解ってますよ?
単なる同情心で立場に伴う責任を放棄していい理由にはならないって事くらい。
でもどうしようもないじゃない。
叱責して責任の所在を追求してどうなるよ。
「次回は気を付けてね」って彼らに何をどう気を付けろと言うのか。
彼らも私もそれが解っている。
だから私は強く言わないし、彼らも最上の茶葉を用意してもてなしてくれる。
私はあと何回この会えない面会を続ければいいんだろうと、途方に暮れながら今日も城を後にした。
「お忙しいとの事でしたけど、体調はお変わりありませんの?」
「はい。お元気でいらっしゃいますよ」
でしょうね。
少しだけ、本当は体調が優れないのに私に気を使わせないように「忙しい」などと言付けたのでは·····と期待したけど一切そんな事ないらしい。
本当に忙しいのか、面倒だから会いたくないとかなのか。
どっちにしろ、私は振り回されただけじゃん。
せめて手紙の段階で断って貰えればわざわざ城まで来ないんだけどなー。
「恐れながら、殿下がお忙しいご様子なのは間違いないかと。」
お話に付き合ってくれてるメイドさんが紅茶を淹れ直しながらフォローしてくれる。
「そうなの?」
「はい。詳しい事は存じ上げませんが、何やら王宮魔法士の研究棟に熱心に通ってらっしゃるようで」
魔法!
マジで?!
私もやりたい!!
それ、私も一緒に行っちゃダメかな?
あんだけ魔法魔法って心弾ませてたのに、実は私、未だに魔法の「マ」の字にも触れてない。
お父様とお母様には魔法を学ぶ機会を与えて欲しいとお願いしたのだけど受け入れられなかった。
曰く「魔法を覚えてどうするの?」だそうだ。
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ダンジョン行きたいんだよー!!と言っても魔法以上に必要ないと断じられて終了なのは目に見えてるからな·····。
私自身も「何故行きたいのか?」と問われれば「レベル上げたい」というよく分からない理由なので強く主張できずにいる。
誰か私に魔法教えてくれないかなー。
とにかく、殿下にお会いできないならここにいても仕方ない。
「私、そろそろ失礼しますわね」
「せっかくご足労いただきましたのに、誠に申し訳ございません」
心の底から申し訳なさそうにメイドさんが深々と頭を下げるけれど、どうしようもない。
いくら王族とは言え、思いっきり振り回されていい気分はしない。
ハッキリ言えばイラッとする。
そりゃあメイドさんだって居た堪れないよね。
「気にしないで、とは言えないけどとても美味しい紅茶でしたわ。」
「勿体ないお言葉です。」
部下の不躾が主の責任になるように、主人の失態も部下の不手際になる。
本来なら私は、アポイントを取った面会をきちんとセッティング出来なかったメイドや執事に責任を問わなくてはならない。
でもなー、可哀想じゃん。
いや、解ってますよ?
単なる同情心で立場に伴う責任を放棄していい理由にはならないって事くらい。
でもどうしようもないじゃない。
叱責して責任の所在を追求してどうなるよ。
「次回は気を付けてね」って彼らに何をどう気を付けろと言うのか。
彼らも私もそれが解っている。
だから私は強く言わないし、彼らも最上の茶葉を用意してもてなしてくれる。
私はあと何回この会えない面会を続ければいいんだろうと、途方に暮れながら今日も城を後にした。
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