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第二章

40 紅茶 ト 雑談

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石の敷かれた道を馬車に揺られる事、半刻ほど。
王城に着くと馬車ごと城門をくぐり城壁を超え、堀を超え、正門前に止まってようやく馬車から身を出し顔パスとなった門番の横を過ぎてゆく。

建物に入るとさすが王城。
メイドとフットマンが揃って出迎え、その中の代表者がサンルームへと案内してくれる。

そこはいつもの様にアフタヌーンティーのセットが完璧に用意され、引かれた椅子に腰をかけると淹れたての紅茶が香りと共に現れる。

あー、紅茶おいしい。

·····普通はすぐに紅茶とか出ない。
何なら椅子にも座らない。
だってすぐに殿下が来るから。

馬車が城門を超えた辺りで連絡が入り、案内された場所に着くと時間差で殿下がお越しになるよう手配される。
殿下が部屋に来た時に、臣下が座って出迎えるなどあってはならない。だから椅子には座らずに立って待つのが普通。

でも私は座るし、紅茶もいただく。

「いい香りね。どちらの茶葉を使ってるの?」

しれっと紅茶を入れてくれた侍女に聞くと、彼女も最近は自然に答えてくれるようになった。

「南西の森林系ダンジョン産の一品でございます。」

「へぇ、これもドロップアイテムなのね。樹人トレントかしら?」

「いえ、花魄カハクと聞いております。
正確にはドロップアイテムを乾燥加工されたものですね」

花魄カハクは花に宿る魔物だ。
樹人トレント樹精ドライアドのような木に宿る魔物はドロップするものも材木や枝葉が多いが、花魄カハクはドロップアイテムも花系に特化しているらしい。

「どうりで花の香りがふくよかだわ。
花魄の住まうダンジョンは数が多くないと聞くけれど流石王宮ね。」

「近年は花魄に限らず国内のダンジョンが減少しているそうですわ。
冒険者たちも国外にまで出稼ぎに行くらしく全体的に品薄ですわね。」

マジか。
美味しいのに残念だ。

ダンジョンが全体的に減少しているなら、話は美味しい紅茶だけじゃ済まなくなりそうだな。
この世界は基本的に資源をダンジョンに依存してるから、農耕や畜産が発展してないんだよね。

ちょっとしょんぼりしながら紅茶を味わうようにちびちび飲んでるとコンコンとドアをノックする音が響く。

「どうぞ」

一応、立ち上がって迎えると現れたのは殿下ではなく伝令の執事だった。

「失礼いたします。
本日、殿下は大変お忙しくお会いできかねると仰せでございます。」

うん、知ってた。
最近ずっとこんな感じだし。

「わかりました。
どうぞ殿下にはよしなにお伝えください」

「かしこまりました。
重ねて、主の非礼をお詫び申し上げます。」

「いいわ。下がりなさい」

懐の扇子を取り出して床を掃くような仕草で執事さんを退出させる。
彼も嫌な役を押し付けられたものだ。
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