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第二章
38 謁見 ト 箝口
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一応、初めての登城·····いや、正確にはわたしが生まれた時に先王陛下に内々の報告のために行ったことあるらしいけど、3歳までの記憶がないのでノーカウントでお願いします。
うん、初めての登城なのでお上りさんよろしくキョロキョロしたかったんだけど、貴族令嬢が自分の興味を優先して感情丸出しではしたない真似はできないからね。主君たる王族に失礼だし税を納めてくれる平民の方たちにも示しがつかない。
殿下との初顔合わせは、なんか、出会い頭の睨み。からの称号云々の会話だけで終了した。
お茶すら嗜まなかった。
その後、「よし帰ろう!」とサッパリした気分で部屋を後にした私は国王陛下に呼ばれたらしい。
宰相さんがいて謁見室に来るように言われたんだよね。
お父様も付いてきてくれて、謁見室に入ると陛下と宰相さん、更に王妃様までいらっしゃった?!
なんで?殿下の婚約者だから??
今さらお母さん面接とかすんの?!
顔には出さずに混乱してたら陛下のお声がかかる。
「久しいな。まずは楽にしてくれ」
「陛下直々にお目通り叶うとは我ら親子には望外の喜びでごさいます。
王妃様に置かれましては、ご機嫌麗しゅう·····」
お父様が挨拶してくれる。
ああ、空気になりたい。
「主がセレスティアか。 ご苦労であったな」
「恐れ入ります。この度は国王陛下、王妃様に置かれましてはご尊顔拝すこと叶い、恐悦至極にございます。」
かなり深めのカーテシーを決めた所で気付いた。
··········コレ間違えたー!!!
完っ全にやり過ぎた!
ただでさえ非公式の謁見に加え、たかだか7歳のお子様がガッツリ挨拶してしまった。
国王夫妻、ポカーンってしてるもん。
お父様お願いだからフォローして!
「··········陛下、やはり彼女に」
王妃様が陛下に何かを進言される。
私?何??
「ああ、そうだな。元より他に選択肢もない。」
陛下がため息混じりに一言呟くと、改めてこちらを見据える。
「ウォルフレーネ嬢、突然呼ばれて驚いたろう。
余は主に頼みがあってな。まずはこれを見てくれ」
陛下が宰相さんに視線で指示すると、宰相さんによってスっと1枚の羊皮紙が差し出される。
見てくれと言うからには見てもいいのだろう、と素直に受け取り何が書かれているのかとドキドキしながら目を走らせる。
そこに書いてあったのは2年前に殿下本人に見せてもらったまま、何一つ変わっていない殿下のステータスだった。
うん、1回見てるから特に感想とかないな。
「娘の事だ。公爵も見ておくといい」
「は。では遠慮なく」
陛下のお言葉にお父様が羊皮紙を覗き込む。
「これは·····」
「ああ、それがヴィンセントのステータスだ。」
途端にお父様の顔が難しくなる。
「この称号は·····」
「ええ、見ての通り『傾国の親王』·····。
もちろん、称号は運命ではありませんわ!傾国の称号があるからと言って本当に国を傾けると決まった訳ではないのです。」
「仰る通りでございます」
王妃様のお言葉にお父様が即座に肯定する。
だが、場の空気は変わらず重いままだ。
「ウォルフレーネ嬢、先ほどの挨拶は見事であった。とてもヴィンセントと同じ歳とは思えん。
そこでだ。主に頼みたい事とは婚約者としてヴィンセントを国王に相応しく導いて欲しいのだよ·····」
重い!!!!
空気以上に重いわ!!
まぁ、簡単に言うと「今後、婚約者として何度も顔を合わせる事になるから仲良くなるついでに勉強とかちゃんとするように言ってくれ」みたいな事らしい。
いや、言うだけなら言ってもいいけどさー。
結果に責任持てないよ?
しかも取って付けたように「お前の婚約者なんだし、将来的にお前も困るぞ」というニュアンスも含めてきやがった。知るか。
家族や大人に出来ない事がイタイケな幼な子に出来ると思うなや。
って言えたら楽しいだろうなーー。
しかし悲しいかな、私は臣下たる貴族の生まれ。
何より国が傾いて1番割を食うのは私以上に何の関係もない国民だしな。
「かしこまりました。
浅学の身ではございますが、微力を尽くさせていただきます。」
やるだけやるけど、あんまり期待しないでね、と匂わせたつもりだけど伝わったかな?
そうじゃなくても年齢的1桁の女子に責任を問う真似はしないだろうけど。
「うむ、よろしく頼む。
それに加えて王太子の称号については他言無用にせよ。これは頼みではなく命令だ。」
「「かしこまりましてございます」」
当たり前だ。
国に唯一の王太子が不穏な称号持ってるって知られたら中央は荒れる。
変な野心家なんかは適当な嫡子を担ぎあげてこないとも限らないし、そこまで行かなくとも噂が独り歩きしただけで人口流出や景気低下は免れないよね。知ってる。
アラサー舐めんな。
私は2年前から知ってた事だけど、よく考えたらとんでもない秘密を抱えてたんだなー。
改めて冷静に身を引き締めよう。
うん、初めての登城なのでお上りさんよろしくキョロキョロしたかったんだけど、貴族令嬢が自分の興味を優先して感情丸出しではしたない真似はできないからね。主君たる王族に失礼だし税を納めてくれる平民の方たちにも示しがつかない。
殿下との初顔合わせは、なんか、出会い頭の睨み。からの称号云々の会話だけで終了した。
お茶すら嗜まなかった。
その後、「よし帰ろう!」とサッパリした気分で部屋を後にした私は国王陛下に呼ばれたらしい。
宰相さんがいて謁見室に来るように言われたんだよね。
お父様も付いてきてくれて、謁見室に入ると陛下と宰相さん、更に王妃様までいらっしゃった?!
なんで?殿下の婚約者だから??
今さらお母さん面接とかすんの?!
顔には出さずに混乱してたら陛下のお声がかかる。
「久しいな。まずは楽にしてくれ」
「陛下直々にお目通り叶うとは我ら親子には望外の喜びでごさいます。
王妃様に置かれましては、ご機嫌麗しゅう·····」
お父様が挨拶してくれる。
ああ、空気になりたい。
「主がセレスティアか。 ご苦労であったな」
「恐れ入ります。この度は国王陛下、王妃様に置かれましてはご尊顔拝すこと叶い、恐悦至極にございます。」
かなり深めのカーテシーを決めた所で気付いた。
··········コレ間違えたー!!!
完っ全にやり過ぎた!
ただでさえ非公式の謁見に加え、たかだか7歳のお子様がガッツリ挨拶してしまった。
国王夫妻、ポカーンってしてるもん。
お父様お願いだからフォローして!
「··········陛下、やはり彼女に」
王妃様が陛下に何かを進言される。
私?何??
「ああ、そうだな。元より他に選択肢もない。」
陛下がため息混じりに一言呟くと、改めてこちらを見据える。
「ウォルフレーネ嬢、突然呼ばれて驚いたろう。
余は主に頼みがあってな。まずはこれを見てくれ」
陛下が宰相さんに視線で指示すると、宰相さんによってスっと1枚の羊皮紙が差し出される。
見てくれと言うからには見てもいいのだろう、と素直に受け取り何が書かれているのかとドキドキしながら目を走らせる。
そこに書いてあったのは2年前に殿下本人に見せてもらったまま、何一つ変わっていない殿下のステータスだった。
うん、1回見てるから特に感想とかないな。
「娘の事だ。公爵も見ておくといい」
「は。では遠慮なく」
陛下のお言葉にお父様が羊皮紙を覗き込む。
「これは·····」
「ああ、それがヴィンセントのステータスだ。」
途端にお父様の顔が難しくなる。
「この称号は·····」
「ええ、見ての通り『傾国の親王』·····。
もちろん、称号は運命ではありませんわ!傾国の称号があるからと言って本当に国を傾けると決まった訳ではないのです。」
「仰る通りでございます」
王妃様のお言葉にお父様が即座に肯定する。
だが、場の空気は変わらず重いままだ。
「ウォルフレーネ嬢、先ほどの挨拶は見事であった。とてもヴィンセントと同じ歳とは思えん。
そこでだ。主に頼みたい事とは婚約者としてヴィンセントを国王に相応しく導いて欲しいのだよ·····」
重い!!!!
空気以上に重いわ!!
まぁ、簡単に言うと「今後、婚約者として何度も顔を合わせる事になるから仲良くなるついでに勉強とかちゃんとするように言ってくれ」みたいな事らしい。
いや、言うだけなら言ってもいいけどさー。
結果に責任持てないよ?
しかも取って付けたように「お前の婚約者なんだし、将来的にお前も困るぞ」というニュアンスも含めてきやがった。知るか。
家族や大人に出来ない事がイタイケな幼な子に出来ると思うなや。
って言えたら楽しいだろうなーー。
しかし悲しいかな、私は臣下たる貴族の生まれ。
何より国が傾いて1番割を食うのは私以上に何の関係もない国民だしな。
「かしこまりました。
浅学の身ではございますが、微力を尽くさせていただきます。」
やるだけやるけど、あんまり期待しないでね、と匂わせたつもりだけど伝わったかな?
そうじゃなくても年齢的1桁の女子に責任を問う真似はしないだろうけど。
「うむ、よろしく頼む。
それに加えて王太子の称号については他言無用にせよ。これは頼みではなく命令だ。」
「「かしこまりましてございます」」
当たり前だ。
国に唯一の王太子が不穏な称号持ってるって知られたら中央は荒れる。
変な野心家なんかは適当な嫡子を担ぎあげてこないとも限らないし、そこまで行かなくとも噂が独り歩きしただけで人口流出や景気低下は免れないよね。知ってる。
アラサー舐めんな。
私は2年前から知ってた事だけど、よく考えたらとんでもない秘密を抱えてたんだなー。
改めて冷静に身を引き締めよう。
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