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第一章

28 驕心 ト 混乱 ~或る王子の矜恃~

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5歳。

毎年、新緑祭という祭りが行われる。
この年の新緑祭は私にとって特別な意味を持つ。

なぜなら、その日は神が私に称号を与える日。

世界の王となる私には当然、それに相応しい称号がもたらされるだろう。

普通の子供であれば1桁の年齢で称号を得ることはない。
親に守られ、仕事にも就いていない貴族の子供はまだ何も成してはいないからだ。

何も成さない子が称号を得るというのは何かしらの才能、性質、運命があるという事。

この私のように生まれた時から世界の王になる運命を与えられた人間以外にありえないのだ。


にも関わらず、なぜだ。
たかだか一貴族の生まれに過ぎない子供が、同じ年の、私より身分の低い、しかも卑しい女の身で·····。
私より多くの称号を持っているとはどういう事だ。

あの日、私は一つの称号を得た。
王として生まれた私には当然の事だ。
そんな事のためにわざわざ城下の教会に出向くだけでも億劫なのに、他の子と同列に扱われ偉そうな神職者に祝福とやらを受ける。

私が祝福を受けるというのも意味がわからない。
世界の頂点に立つ私がなぜ、何者かに祝ってもらわねばならないのか。

早く王宮に戻り父上に私の称号を報告して、やはり私こそがこの世の王に相応しいと示さなければならないのに。

イライラしながら祝福とやらを受け、羊皮紙を受け取って鑑定士に鑑定させる。

得られた称号は
ほら!称号の中に「王」の文字が入っている!!
細かい意味は分からないが、なかなか気分がいい。

いざ目の前に称号を見せられると他のヤツらとの差が気になってくる。
当然、他のヤツらに称号があるはずがない。
誰か適当な子供のステータスでも見てやろうかと思っていたら1人の少女が入室し、さっそく鑑定させていた。

少女は自身のステータスを書かれた羊皮紙を穴が空くほど見つめている。
どれほどじっくり見ても称号を得られる訳ではないのに熱心な事だ。

楚々として視線を落とした立ち振る舞い、足音をたてない歩き方、タレ目勝ちで気の弱そうな顔立ち、銀の髪をパールの髪飾りでまとめ、揃いの耳飾りと合わせている。
薄桃色のドレスも広がりを抑えるように締められていて慎ましやかな装いだ。

ふむ、女らしく男を立てる事を知っている振舞いだな。
身の程を知っているならば、私の称号を見る栄誉を与えてやろう!

「おいきさま。そのすてーたすをみせてみろ!」

ん?なんだ、高貴な私に声をかけられて混乱しているのか?当然だな。
ならば、その高貴な私の称号を見せてやろう。

「ではわたしのすてーたすをみせてやろう!!
はじめてのしゅくふくで、しょーごーがついたすてーたすをみられるなどこーえいにおもうがよい!」

私は自分のステータスが書かれた羊皮紙を翳し、相手の羊皮紙を眺める。

·····なんだコレは?

いーち、にーい、さー···ん········?

え?称号?
しょーごー??

さんこあるよ?
どうみてもおなじとしのおんなのこ·····。

頭が真っ白になる。
こんな事あるはずない。
そんな訳ない。何かの間違いだ。

私より後に来た、私より身分の低い少女が3つの称号を持っている。
もしかして、称号が1つしかないのは少ないのか?
みんな、このくらいの称号は持っているのか??

私は王だぞ?
この世界の王になる事を約束されているのだぞ?

ふざけるな、ふざけるな。ふざけるな!!
この私が一般人より劣っているわけがない!

とにかくさっさと戻って誰かに聞こう。
教師でも臣下でも侍女でもなんでもいい。
なぜ私が他のヤツより称号が少ないのかを問いたださなくては!
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