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第一章

33 散歩 ト 努力

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あれから3ヶ月。
季節は夏の様相を呈し、空の色も鮮やかさを増してきたように思う。

私はと言えば、いつもと変わらない日常を過ごしている。
具体的にはお勉強とお茶会だ。

そして散歩。
セフィドを散歩させているわけではない。
むしろ、私の散歩にセフィドを付き合わせているのだ。

「どうかな、少し変わった?」

『見た目もステータスも変わんないよ』

「なぜ?!」

『知らんて』

そう、ダイエット兼スキル取得のため!

しかし、何事も都合よくはいかないようで結果はあまり思わしくない。

『もう戻ろうよー。別に太ってないでしょー』

「ペットならもうちょっとよろこんでさんぽしようよ!」

『俺、ペットだけど犬じゃないから』

「いぬじゃないの?」

『バイトで神様のお使いしてるだけだもん。犬っぽい見た目なだけで、犬として生まれてきたわけじゃないし』

わお!
確かに犬っぽくないなーとは感じてたけど、それは転生者だからだと思ってた。
そもそも生物として犬じゃなかったとは。

「おさんぽきらい?」

『疲れるじゃん』

素直か!!
散歩と張り切ってはいるけれど、現実はお庭をぐるぐるしてるだけ。
そこそこ広い庭ではあるけれど別棟の方にまで行けるわけでもなし、実際はそんなに疲れない代わりに大した運動にもなっていない。

「ずっとおうちのなかにいるの、からだにわるいよ?」

『お嬢、知らないのかい?世の中には自宅警備員という素晴らしい職が·····』

「ないよ」

所得を得られない立場を職とは認めない。
搾取反対!!寄生反対!!

『俺の今の立ち位置を全否定されてる気が·····』

「セフィドはじたくじゃなくて、わたしのけーびしてるでしょ」

『何が違うの』

雇用主の有無は大きな違いじゃない?

うなるセフィドを連れ回しながら一通りウロウロしてるとお茶の用意をしていてくれてたはずのマリーが現れた。

「お嬢様!旦那様がお呼びです、お戻りください。」

なんだろう。お父様が私に用事なんて珍しいこともあるものだ。

呼ばれてしまった以上は仕方がない。
いつもよりちょっと早く散歩を切り上げ部屋に戻り、着替えなどの身支度を済ませるとお父様の書斎へと向かうのだった。
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