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第一章

24 祭典 ト 教会

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色々あったけどついに来ました『新緑祭』!!
朝からおめかしして教会に向かう。

特に命令がなければ侍女は邸で通常業務が普通だけど、セフィドの世話を口実に連れ出した。
セフィドは正式に面倒見ることになった仔犬の名前。
単純だけど、前世のペルシア語で白って意味で名付けてしまった。

「街中が華やかに飾り付けられて楽しいですね、お嬢様!」

「連れ出してくれてありがとうございます、お嬢様」

「こっちこそ、ついてきてくれてありがとう。」

2人とも楽しそうで良かった。
労働には福利厚生が必要。絶対。

専属侍女になった2人は所謂レディーメイドと呼ばれ、使用人を統括するハウスキーパーの指揮下から外れる。
使用人の中でも上位の地位にあり、仕える主の不要となった服飾品を下賜されたりする特権を持っている。
しかし、私の場合は幼女のドレスとか貰ってどうすんの?って話である。
そういった部分の特権をあげられないので、せめて祭りに連れ出したり、適度に休みをとらせる事でカバーするしかない。


昼過ぎに祝福の祭典が行われるので、私たちはそれに間に合うように教会に向かう。

「祭典の間にお食事を用意しておきますね。」

「うん。さきにセフィドにはたべさせてて。
ふたりも、こうたいできゅうけいしてね。」

「休憩の間、お祭り行ってもいいですか?」

「いいよー」

「私、お嬢様の専属になれて本当によかったです!」

別に構わないんだけど、素直すぎやしないかい?マリーさんや。

心なしか、バスケットから顔を出しているセフィドまでもがチベットスナギツネみたいな顔で私の侍女たちを見ている。
やめろ!そんな目で見るんじゃない!


教会に到着すると立派な正門に続く道に修道女たちが並び、私たちを出迎えてくれる。

国政に属する貴族と、宗教の教会は別組織だと思ってた時期が私にもありました。
昔は別組織だったらしいんだけど、ズブズブの癒着を経てからの今となっては教会も王宮の一部署みたいな扱いになっている。

神の前では人は同列だろうに神に仕える者が貴族に対してしっかり頭下げなきゃいけないんだから神様って何なんだろうね。

今日の新緑祭で祝福を受ける子供は私を含めて13人。家格の高い順から祝福を与えられ、私は2人目だ。
公爵家の生まれである私が2人目なら1人目は当然、王家である。
そう、本日の祝福にはリアル王子様が参加するのだ。

まあ、だからどうしたって話しよね。
私の目的は王子様じゃなくてステータスなんだから!

教会の中に入ると控え室のような一室に案内される。
すでに何人かいるが全て女の子なので恐らく男女別に部屋を用意してくれたのだろう。

「ごきげんよう」

「ごきげんよう」

初めて会った同年代の女の子。
何か話してみたいけど、これといった会話も思いつかない。

当たり障りのない挨拶をしていると間もなく扉がノックされた。

「お嬢様がた、長らくお待たせいたしました。
儀式が始まりますのでこちらへお越しください。」

白く飾り気のない長衣を着た女性が声をかけてくれる。

私たちはこれから祝福を受けるべく、大聖堂へと歩いていく。
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