転生令嬢は冒険したい～ダンジョン目指してるのになぜか婚約破棄～

第一章

21 覚悟 ト 逃亡 ～或る神使の転生～

子猫のように掴まれた俺は檻のように組まれた木箱にポイッと放り込まれた。

完全に動物扱いだよな。
よく見ると木箱は1つじゃない。

様々大きさの箱に様々な動物が入っている。
中には血塗れの動物もちらほら見える。
動物保護活動でもしてんのか？だとしたらケガもしてない野生動物の俺を保護する意味はなんだろう。
親とはぐれた小動物だと思われたとかかな？

大小さまざまな木箱は森を出た所にある馬車にどんどん乗せられていく。
馬車には幌がかけられていて 外からは中が見えない。

あんまり大きい馬車にも見えないんだけど、こんな馬車にこんだけの木箱が入るのか？なんて訝しんでいたら俺の予想の更に上を行っていた。
なんと、馬車の中には既に人が何人か膝を抱えて座っていた。

座り込んでいるのは３～４人だろうか、みんな子供みたいだが、それでも狭いスペースに肩を寄せ合っている所に更に動物の入った木箱が詰め込まれるもんだからより圧迫されてる。
なんだか保護って雰囲気じゃないな。

ちょっと俺を連れてきた人間を見られるかな。
鑑・定！！·····って、このノリはもういいか。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
名前：ティンブロ

レベル：8

筋力：34
魔力：12
敏捷：25
知力：20
運：29
魅力：16

スキル：剣術Lv3  投擲Lv5  トラップ設置Lv8  泥魔法Lv2  道具知識Lv1

称号：狩猟人ハンター  供給者ベンダー

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

うーん、レベル8か。
ゲームだとだいぶ序盤な空気だけど、俺のレベル0だしな。
基準が分からないけど俺より強いのは確実だな。

しかし、ぎゅうぎゅうに詰め込まれた幌馬車の荷台。
膝を抱えた子供の足に繋がれた鎖。
そして、男の称号である狩猟人ハンターと供給者ベンダー。
もう嫌な予感しかない。

ガタガタと馬車に揺られ·····もといシェイクされること約1時間くらいだろうか。
辿り着いたのは空き地に建てられた倉庫みたいな場所。

そこに俺を含む多数の木箱が降ろされるとやけに恰幅のいい男が現れる。なんか樽みたいなシルエットしてる。
そいつは木箱の中の動物や膝を抱えていた子供たちを丁寧に見てまわり不穏な会話をしている。

「今回の子供はなかなかですな。
欠損も奇形もない。顔色は病ではなく栄養不足のようだ。長持ちしそうですね·····1人銀貨3枚付けましょう！」

「ありがとうございます」

明らかに人身売買！

順番に見ていたそいつが俺の所にくると、ぐぐっと顔を近付けてくる。

「ほう、これは見事な毛並みですな。
貴婦人の襟巻きに喜ばれそうだ。」

ちょいちょいちょいちょいちょい！！！
どう見ても俺、ペット枠じゃん！
毛皮需要とか予想外！！

薄々ヤバいとは思ってたけど、ペットとして売られるなら売られた後でも逃げるチャンスはあると考え大人しくしてた。
でも皮を剥がれるなら売られるのを待つ意味は無い。
今すぐにでも逃げないと！

とにかくこの箱から出ない事には始まらない！
俺が入れられた木箱にガンガン体当たりしてみよう。上手くいけば体当たりの衝撃で壊れるかも知れないし、箱自体が転がってくれればどっかにぶつけて壊せる。
しかし、いくら体当たりしても手応えがない。
ならば噛み付いてみようと歯を立てるが噛めない。
なんだこれ？檻みたいな縦棒の手前にアクリル板でも入ってんのか？牙が箱本体に届かない。

《スキル：突進Lv1を取得しました。》

今、それどころじゃないから。
この箱おかしいだろ·····どうなってる？？

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
【隷従の箱(下級)】

隷従シリーズアイテムの箱タイプ。
下級、量産品。
外部からのみ開閉が可能な箱に内部から外部への魔法、衝撃を遮断する術式が施された物。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

箱を見ると上位鑑定が作動したらしく、テキストが表示される。

何これ！中から出られないの？
しかも隷従シリーズってなんだよ！
こんな物騒なアイテムが他にもあるって事？！

まずい。ヤバい。
いい加減、楽観視してる場合じゃない。
ここはもう異世界なんだ。
他人の親切心や動物愛護に期待するな。
まして、友達も知り合いもいない世界なんだ。
保身も報復も全て自分自身でやらなきゃ誰も助けてくれない。

俺に出来ることを惜しんでいる場合じゃない。



そうして俺は、ただ一度の神の奇跡を発動した。