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世直し聖女誕生編
第10話 解放される力
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「お前の身体には恐らく途轍もない魔力がある……」
「とてつもない……魔力?」
大叔母様はそう仰いますが、私は魔法の適性は無いと言われてきました。そんな私に魔力があるなんて――。
生まれながらにして、人が誰しも大なり小なりもつと言われる魔力がほぼ皆無だ――様々な魔術師や神官にも診てもらったけれど、私の様に魔力の反応がほぼ無いという例を知らないと言われたと。
お父様としてはお母様は私を産んだことで早逝したと思ったのか、私を腫れもの、厄介者として扱っていました。お祖父様のお屋敷に来ることになったのも、お祖父様が私を不憫に思ったからだそうです。
「多くの人や獣は体内の魔力を呼吸や血流の様に無意識に循環させる事が出来る、これは生き物の生まれ持っての仕組みだ。お前はその循環が滞り、それが発熱となって表れている」
私は意味があまり理解出来ずにキョトンとしていました。大叔母様は私の顔を見て苦笑すると「あー……」と呟いて少し考える仕草をされます。
「元々、お前は凄い力を持ってるんだよ。でも凄すぎて身体が持たないからそれを抑えようとする働きが起こった。だからその力が身体の中に閉じ込められて暴れてるのさ……わかるかい?」
「はい、大丈夫です……」
私が答えると大叔母様は表情が固くなりました。
「今からその抑えている力を開放する。もちろんそのままだとお前の身体は保たないから私が治癒魔法で回復させ続ける」
「だ、大丈夫なのでしょうか?」
なんだかとても大変そうな事なので不安がよぎります。
「ま、何とかなるだろうさ」
大叔母様はニヤリと悪戯な笑みを浮かべます。それが頼もしく思え、全てお任せする事にしました。
「さあ、力を抜いて。なんなら眠っても構わないよ……」
と言われても緊張してしまいます。
『……健やかなる身体……命の湧泉……鎮痛』
大叔母様が魔法を唱えると、自分の中になにか大きな流れがうねる感覚が急激に高まりました。
「うああっ?! 大叔母様……これは……」
「お前の身体の滞りを全て平坦にしたから身体中の魔力が巡り始めんだよ。身体への負荷は治癒魔法で軽減してるけど、多少は苦しいから頑張るんだよ」
「た、多少……」
身体の中を熱と痛みのうねりが駆け巡り、そしてスッと楽になり、再びうねり始める……そんな事が延々と繰り返されます。
現実か夢か分からなくなってきます。その中で、私は暖かいものに包まれていました。美しい女性に赤子の様に抱かれています。それは、朧げにしか憶えてない母の様にも思えましたし、知らない女性の様にも思えました。
妙な懐かしさと暖かさが心地よく、いつまでも揺蕩っていたい気持ちでした――どれくらい経ったでしょうか、いつの間にか私は眠っていました。気を失っていたのかもしれません。
窓の外は明るく、朝の様で小鳥の囀りが聞こえました。身体を起こすと、羽根のように軽くて生まれてからこれ程身体が楽になった事はありませんでした。
「気がついたかい?」
ベッド脇の椅子には大叔母様が座っておられました。
「大叔母様、身体が……軽いです。呼吸も楽で……こんなこと初めてです!」
「お前の身体は魔力が正常に流れる様になったからね。但し、まだ無理はするんじゃないよ。か弱いお前の身体に不釣り合いな魔力を持ってるんだ」
「私はどうすれば……」
「魔力を運用する鍛錬、魔術を学ぶ、肉体の鍛錬……方法は色々あるが……神聖魔法なら私がたんまり教えてやれるよ」
大叔母様は腕組みをしながらニヤリと不敵な笑みを浮かべました。
「神聖魔法……私にしていただいた治癒魔法などですか?」
「そうさね。慈愛の女神を崇拝して、慈悲の心で魔術を行使するのさ」
私は治癒魔法で救われた事で、自分でもそれで誰かを助けたいという気持ちが芽生えました。
「大叔母様。私、神聖魔法を学びたいです!」
興奮気味に大叔母様へ答えましたが、ふらついて大叔母様に支えられてしまいました。
「ご、ごめんなさい……」
「まずは、最低限の身体作りからだね……病人の回復訓練だ」
「はい……」
そういうことがあって、数年間かけて私はお爺様からは鍛錬と武術、大叔母様からは魔法知識に神聖魔法をみっちりと学び、自分流に神聖魔法と武術を組み合わせたスタイルを身に着けていった。
武術の訓練で、お爺様の子飼いの傭兵達と過ごしていたものだから言葉遣いも影響されて、かつての病弱な深窓の令嬢だった私はどこかへ行ってしまった――まあ、お父様やお兄様も私には興味無いと思うから関係無い、そんな風におもっていたのだけれど……。
「とてつもない……魔力?」
大叔母様はそう仰いますが、私は魔法の適性は無いと言われてきました。そんな私に魔力があるなんて――。
生まれながらにして、人が誰しも大なり小なりもつと言われる魔力がほぼ皆無だ――様々な魔術師や神官にも診てもらったけれど、私の様に魔力の反応がほぼ無いという例を知らないと言われたと。
お父様としてはお母様は私を産んだことで早逝したと思ったのか、私を腫れもの、厄介者として扱っていました。お祖父様のお屋敷に来ることになったのも、お祖父様が私を不憫に思ったからだそうです。
「多くの人や獣は体内の魔力を呼吸や血流の様に無意識に循環させる事が出来る、これは生き物の生まれ持っての仕組みだ。お前はその循環が滞り、それが発熱となって表れている」
私は意味があまり理解出来ずにキョトンとしていました。大叔母様は私の顔を見て苦笑すると「あー……」と呟いて少し考える仕草をされます。
「元々、お前は凄い力を持ってるんだよ。でも凄すぎて身体が持たないからそれを抑えようとする働きが起こった。だからその力が身体の中に閉じ込められて暴れてるのさ……わかるかい?」
「はい、大丈夫です……」
私が答えると大叔母様は表情が固くなりました。
「今からその抑えている力を開放する。もちろんそのままだとお前の身体は保たないから私が治癒魔法で回復させ続ける」
「だ、大丈夫なのでしょうか?」
なんだかとても大変そうな事なので不安がよぎります。
「ま、何とかなるだろうさ」
大叔母様はニヤリと悪戯な笑みを浮かべます。それが頼もしく思え、全てお任せする事にしました。
「さあ、力を抜いて。なんなら眠っても構わないよ……」
と言われても緊張してしまいます。
『……健やかなる身体……命の湧泉……鎮痛』
大叔母様が魔法を唱えると、自分の中になにか大きな流れがうねる感覚が急激に高まりました。
「うああっ?! 大叔母様……これは……」
「お前の身体の滞りを全て平坦にしたから身体中の魔力が巡り始めんだよ。身体への負荷は治癒魔法で軽減してるけど、多少は苦しいから頑張るんだよ」
「た、多少……」
身体の中を熱と痛みのうねりが駆け巡り、そしてスッと楽になり、再びうねり始める……そんな事が延々と繰り返されます。
現実か夢か分からなくなってきます。その中で、私は暖かいものに包まれていました。美しい女性に赤子の様に抱かれています。それは、朧げにしか憶えてない母の様にも思えましたし、知らない女性の様にも思えました。
妙な懐かしさと暖かさが心地よく、いつまでも揺蕩っていたい気持ちでした――どれくらい経ったでしょうか、いつの間にか私は眠っていました。気を失っていたのかもしれません。
窓の外は明るく、朝の様で小鳥の囀りが聞こえました。身体を起こすと、羽根のように軽くて生まれてからこれ程身体が楽になった事はありませんでした。
「気がついたかい?」
ベッド脇の椅子には大叔母様が座っておられました。
「大叔母様、身体が……軽いです。呼吸も楽で……こんなこと初めてです!」
「お前の身体は魔力が正常に流れる様になったからね。但し、まだ無理はするんじゃないよ。か弱いお前の身体に不釣り合いな魔力を持ってるんだ」
「私はどうすれば……」
「魔力を運用する鍛錬、魔術を学ぶ、肉体の鍛錬……方法は色々あるが……神聖魔法なら私がたんまり教えてやれるよ」
大叔母様は腕組みをしながらニヤリと不敵な笑みを浮かべました。
「神聖魔法……私にしていただいた治癒魔法などですか?」
「そうさね。慈愛の女神を崇拝して、慈悲の心で魔術を行使するのさ」
私は治癒魔法で救われた事で、自分でもそれで誰かを助けたいという気持ちが芽生えました。
「大叔母様。私、神聖魔法を学びたいです!」
興奮気味に大叔母様へ答えましたが、ふらついて大叔母様に支えられてしまいました。
「ご、ごめんなさい……」
「まずは、最低限の身体作りからだね……病人の回復訓練だ」
「はい……」
そういうことがあって、数年間かけて私はお爺様からは鍛錬と武術、大叔母様からは魔法知識に神聖魔法をみっちりと学び、自分流に神聖魔法と武術を組み合わせたスタイルを身に着けていった。
武術の訓練で、お爺様の子飼いの傭兵達と過ごしていたものだから言葉遣いも影響されて、かつての病弱な深窓の令嬢だった私はどこかへ行ってしまった――まあ、お父様やお兄様も私には興味無いと思うから関係無い、そんな風におもっていたのだけれど……。
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