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第11章
第188話
しおりを挟む「ディアブロ!大丈ー」
「オラオラァ!さっきまでの勢いはどうしたぁ!」
ガーネットは洞窟の奥につくなり固まった。血の気の荒いガブリエラの気配を感じて慌てていたが、目の前にはそのガブリエラを弾き飛ばして楽しそうに笑う少女が1人。シオリからは、懐かしい男の魔力が感じられた。
「何よ、これ…」
呆然とするガーネットをよそに、シオリはボロボロになったガブリエラの頭を掴んで目を覗き込んだ。
「おい起きろ、まだ遊びたりねぇだろうが。お前こんなに弱かったか?」
「ゔぐっ…!こ、こんなはずじゃ…」
「俺様の宿主をいたぶった罪はデケェからな。死ぬ以上の苦しみを味合わせてやる」
そう言ってシオリは空いている方の手を高く挙げた。その手に莫大な魔力が集まっていき、黒炎が燃え上がっていく。
その魔力の濃度にガブリエラは血の気が引くのを感じた。
「待って…そんなのを今ここで放ったらー」
「トドメだ。地獄があるならまた会おうぜ」
「許さない…!賛成派は私がこの手でー」
ガブリエラの制止に気付く事なく、シオリは炎を手放した。
それと同時に、洞窟内に白い閃光が弾けた。
「………あれ?」
ガーネットは目を覚まし、辺りを見回して首を傾げた。莫大な魔力の爆発があったにも関わらず、自分には傷1つついていない。それどころか、洞窟にあった筈の戦闘の爪痕も全て綺麗に無くなってた。
そして奥には、意識を失って静かに眠るガブリエラとシオリがいた。シオリからはディアブロの魔力も感じず、先程までの表情があ嘘だったかの様に穏やかな表情で眠っている。
(な、何があったの…?)
「んー…」
「っ?!」
突然後ろから怠けた声がして、ガーネットは飛び退いた。振り返ってみれば、すぐ後ろにぐるぐるに巻かれた布団が1つ。
「何よ、これ…」
ポカンとするガーネットの前で、布団を縛っていた白い縄が徐々に消えていく。
そして縄が消え去ると、布団が開いて中から白髪の男がのそりと起き上がった。だが立つかと思った所で、再び横になって目の前の光景に閉じかかった瞳を向けた。
「あれ……来る場所間違えたかなぁ…」
「あなた一体…」
「…僕って何しに来たんだっけ…?」
「いや、知らないわよ」
「あれ…何か大事な事を忘れているような、いないような…」
呆れるガーネットの前で男は「う~ん…」と気の抜けた声を漏らしたが、不意に眠る2人を見て首を傾げた。
「…もしかして、お取り込み中だったのかなぁ?」
「え?」
「…ごめんね。僕が魔力を無にしちゃって。でも無の神だからしょうがないんだ」
男はそう言うと、一瞬で眠る2人のそばに移動していた。全く目で追えなかったガーネットは言葉を失ったが、男は気にせずガブリエラの服の中にある魔導書を引っ張り出した。
「あ~…禁忌魔法を発動しようとしてたのかなぁ…?」
「禁忌魔法?」
「…お詫びってわけじゃないけど、代わりに僕が手伝ってあげよう。神の魔力を流したらどうなるんだろぅ…?」
そう言って男は魔導書に魔力を流し込み、ガブリエラの側に置いた。
そしてシオリを肩に担ぐと、再び一瞬で移動してシオリをガーネットに預けた。
「…えっと、この子と2人で頑張ってね」
「え?!何を?!」
「僕はちょっと…お昼寝の時間だから…」
「ちょっと!」
男はそこで倒れて再び寝始め、ガーネットはシオリを抱えたままポカンとなった。だが次の瞬間、洞窟内に大地を揺らす様な咆哮が響き渡る。
そのあまりの煩さに耳を塞ぎ、ガーネットは背筋に冷たい物が走るのを感じた。
「嘘…ケルベロス…」
ガブリエラがいた場所には、3つの首をもつ巨大な猛獣が立っていた。
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