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第11章
第185話
しおりを挟むシオリに声をかけた女性《ガブリエラ》は、シオリの手を引いて近くの森の方へと歩いていた。彼女曰く、『この大陸の魔物を狩ってみたい』だとか。
シオンはその誘いを断ろうとしたのだが、ガブリエラのマシンガントークに圧倒され断る事が出来なかった。
「あ、あの…私はただ薬草集めに来ただけでー」
「いいからいいから!そういえば、偶然遭遇した魔物を倒したら特別報酬が貰えるらしいわよ。大丈夫、倒した分は全部あなたにあげるから」
「え?!で、でも…」
お金というワードに一瞬釣られかけたが、早く帰りたいという気が勝り今度こそ断ろうとした。だがー
『おい!俺もちょうど運動したかったし、こいつも怪しそうなやつじゃねぇから、このまま行こうぜ!』
(えぇっ?!だ、だめですよ…日が暮れる前に帰らんと)
『よっしゃぁ!体借りるぜ!』
(あ、ちょっと…!)
シオリの思考を読んだディアブロが、その思考を遮るように頭の中で叫び出した。そしてシオリに喋らせる間も与えず、シオリの体を勝手に己の物とする。
「それにしても、あなた可愛いわね!ほっぺも柔らか~い」
更に追い打ちをかけるかのように、ガブリエラはシオリに頬ずりをした。シオリ(憑依中)は疲れて言い返す気力もなくなり、されるがままになっていたが、不意にガブリエラから冷たい空気を感じて体を震わせた。
「ほんと可愛いわね…中身まで喰べちゃいたいくらい」
「っ…?!」
(な、何ですか今の…?)
「な~んてね、さっ行きましょう」
ガブリエラはニコッと笑うと、そのままシオリの手を引いて森の中へと進んだいった。
その頃、王都にあるレストリア邸の二階ではー。
「ねぇ…ロゼッタさん何してるの?」
「見てわかりませんか…くっ…トレーニングです」
宿題と睨めっこをする俺の前で、ロゼッタは右手の人差し指だけで逆立ちをし、足に巨大な重りを乗せていた。ちなみに、重りの上にはフローリアとフェルが座って仲良くじゃれ合っている。なかなかにカオスな光景が広がっているせいか、全く宿題に集中出来ていなかった。
「何で急にトレーニングなんて…。世界一の大剣豪でも目指し始めた?」
「いえ。…強く、ならなくてはいけませんから」
「…なるほどね」
俺も宿題を早く終わらせ、組手でもしようかと思い、超高速移動魔法で速攻終わらせようとした。だがその瞬間、俺の頰を巨大なダンベルが掠めた。
驚いてゆっくり顔を上げれば、ロゼッタがダンベルを持ってユラユラと立っている。
「ひぃっ?!」
「マスター…魔法を使って宿題を終わらせるのは、ルール違反だと言いましたよねぇ…?自分の力でやってください」
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『ピッ!』
「お仕置き?」
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そのまま俺たちは、杉田○和と中○悠一の如く引かれあってー
『ピャッ!』
「あだだだだだだだだ!歯、歯ー!なんか前より強くなってないか?!」
「面白い」
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「レイ君!お父様から帰って来ていると聞きましたわ!やっと会え…た?」
あ…マリアさん、お久しぶりの登場ですね。久しぶりに会っても相変わらず天使のようにおかわわわ(※可愛い)なのに、こんな変な光景見せてしまってごめんなさい。
そして同時刻、空に浮かぶ雲より遥か高くにある神界ではー
「ベラム!」
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問われたサラーキアは、顔を真っ赤にしながらアネモイに持っていた書類を見せた。
「ベラムがまた私の机にこれを置いてどっか行っちゃったのよ!あぁ…もう赤ちゃんの面倒見ないといけないのに…」
「あの、私が代わりにやっておきましょうか…?」
「ダメよ、これはあいつの仕事なんだから。私が地獄の果てまで探し出してやるわ…」
「ひっ!…って、あれベラム様じゃないですか?」
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「あ、こらー!あんたこれどうにかしなさいよ!」
サラーキアは見つけるなり怒りの声を飛ばしたが、当の本人は全く聞こえてないようでピクリともしなかった。
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「この世界…なんで創ったんだっけぇ…?」
「えー?聞こえないわよー!」
「なんでもないよぉ~」
ベラムはそう言って満面の笑みを見せると、2人の元へと飛んで行った。
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