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第11章
第184話
しおりを挟む俺は前にアンジュさんから聞いた話をそのまま話すと、ガーネットは最初は悲しそうな表情を浮かべたが、次第にプルプルと怒りと悔しさからか震え始めた。
「つまり…あの男は、私以外の女と結婚してたってわけ…?」
「そ、そうかもしれませんね」
「しかも子供までいるなんて…!出遅れたっ!」
ガーネットは残っていた酒を一気に飲み干すと、飢えた獣のような顔つきになった。これが婚期を逃した女性の顔というやつか。
「決めたわ、あいつを探し出して私が正妻になる!」
「どうやってですか…。そもそも、ディアブロさんは奥さんだけしか愛してないかもしれないし、生きてるかどうかすら怪しいんじゃー」
「お黙り。言ったでしょ、私はなんでも自分のものにするって。それに彼が私の事を好きじゃないはずがないわ」
なんという強欲っぷり。まるで世界は自分を中心に回っていると言わんばかりだ。それが許されるのは、天道総司とプリキュアの悪役だけだ。
「まぁ頑張ってください、俺はこれからフローリアとー」
「…あらぁ、こんな所にいらしたんですねマスター」
背筋が凍るような声がしてゆっくり振り向くと、宿題の山を持ったロゼッタが背後に立っていた。気配隠蔽魔法を使っていたはずなのに、何故ここがわかったのか不思議でしょうがない。
「い、いつからそこに?!」
「つい先程、マスターの匂いを辿って来たらここに着きました」
「匂い?!」
「さぁ…帰ってお仕置きです」
「宿題じゃなくて?!」
「私もお仕置き手伝う」
「フローリアさんんんん!!」
ロゼッタはそう呟くと俺を脇に抱え、空を飛んで家へと強制送還した。
レイ達が帰った後、ガーネットは少し前に見かけた少女を探していた。そしてあの気配のする方向へと歩きながら、古い記憶を呼び覚ましていた。
『はぁ?!魔人の大陸を出て行く?!」
『んだよ、何かおかしい事でも言ったか?』
目を見開くガーネットの前で、ディアブロは当然かのように荷造りをして産まれた地を去る準備をしている。
『当たり前よ!あんた…魔人が他種族の土地で生きていけるわけないでしょ?!』
『は?何言ってんだテメェは、頭おかしくなったか?』
『おかしくなってるのはあんたよ!』
ガーネットは大きな声を出しながら近づき、今にも出て行こうとするディアブロの腕を力強く掴んだ。
『忘れたの?!魔人族は闇に生きる種族…陽の光を拝む事すら許されないのよ!』
『あー…あったな、そんな話』
2人のいる魔人族の大陸、その空は分厚い真っ黒な雲で覆われており陽の光が地を照らす日などない。陽の光は魔人族の体を蝕んでいき、それは言葉に表せないような激痛を伴うという。同様に、他種族が陽のない魔人族の地で生きるのも不可能な事だった。
だがそれを言ってもディアブロが引く様子はなく、ガーネットは項垂れて彼の体に縋り付いた。
『なんでよ…なんで…?』
『…大切な奴が出来たからだ』
『私よりも…?』
ガーネットは小さく零した言葉に、ずるい言い方をしているという自覚があった。だが幼い頃から面倒をみてくれた彼なら、もしかしたら残ってくれるかもという望みにそう言わずにはいられなかった。
『…すまねぇ』
ディアブロはそれだけ言い残し、ガーネットの前から消えた。
それから少しして、ディアブロが人族に殺されたという噂が流れたが、ガーネットは特に何も言うことはなかった。
冒険者登録を終え、シオリは初めての依頼で王都からさほど離れていない草原で薬草採集をしていた。ナガルの花を集める依頼で、残り二輪で依頼内容は達成となる。はずなのだがー
『なぁ、魔物退治でも行こうぜ。体が鈍っちまう』
「行きまへんよ。そんなん依頼内容に書いてないです」
『いいんだよ、人生ルールを破った方が楽しい時が多いもんだぜ?」
「全く…それをして、前に森で死にかけてたのはどこのー」
そう言いかけてシオリは慌てて口を塞いだ。長い間一緒にいるが、その手のことに触れる事など殆ど無かった。正確にはずっと気になっていたが、あまり聞かない方がいい事だと勝手に思っていただけなのだが。
「ご、ごめんなさい…」
『何を謝ってんだよ、別に間違っちゃいねぇよ』
「で、でも…」
「ねぇ」
シオリが声のした方に振り向くとそこには、褐色肌のローブを着た女性が1人優しい笑みを浮かべて立っていた。
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