196 / 210
第10章
第176話
しおりを挟む俺とフローリアは空に飛び、エレナを追いかけていた。ロゼッタとフェルは不死蝶の方へと向かってくれている。
転移して挟み撃ちの形になるが、エレナはそのスピードを活かしてあっさり避けて飛んで行った。それに魔弾のおまけ付きだ。
そこに下からシオンが魔弾を放って相殺し、さらに追加で放ってエレナの進路を塞いで行く。
「フローリア!」
「りょーかい」
魔弾を避けたエレナの目の前にフローリアは転移し、その場で拘束魔法をかける。そしてシオンにもやったように、全針操作でエレナの呪詛を無くした。
黒い痕がなくなると、エレナはハッとなって辺りを見回した。
「あれ?!レイどうしたの?」
「はぁ…良かった。それよりあっちがヤバイな…」
俺の視線の先では、巨大な蝶が触角から輝く光線を出して森を破壊していた。蝶の目は黒く染まっており、もしかしたら操られているのかもしれない。
「あれは全針操作でなんとかなるのか…?」
「ボウヤ!」
声のした方では、木のてっぺんに登ったシオンが大きく手を振っていた。
「ファルファラは私に任せて!」
「わかりました!じゃあすぐに運んで…」
「僕の邪魔をするのは止めて欲しいね」
「ゔっ?!」
「レイ様!」
耳元で声がしたと思ったら、俺の後ろにフォルカスがいた。そして俺の腹を、一本の剣が貫通していた。全身が焼けるように熱い。
「お、お前…!」
「ジョーカーから聞いてるよ。君は亜神なんだよね?だからこの件には滅神の呪詛をかけておいたんだ。どうだい、痛みを感じるかな?」
「あがっ……はっ………!」
フォルカスは剣をグリグリとねじるように動かし、それにより全身にとんでもない激痛が走った。あまりの痛さに、息ができなくなり呼吸が止まりそうになる。
「てりゃー!」
「おっと、もう呪詛がとけたんだね」
そこへ呪いのとけたエレナが蹴りを入れようとするが、フォルカスは剣を引き抜いてすぐに後退した。
「レイ!大丈夫?!」
「心配するな…フローリアとあいつを止めるの任せてもいいか…?」
「う、うん!」
「後は頼んだぞ…」
俺は傷口に手を当てながら、真下の森へと降下した。フリーエルはシオンを連れて飛んでいき、俺は傷口を眺めた。
傷口の周りには黒い靄のような物があり、徐々に全身に広がっている。このままでは、エレナのように操り人形になるかもしれない。
「はぁ…………はぁ………」
なんとか傷口に手を向けて回復魔法を使おうとするが、体が痺れて意識が集中できない。
「おやぁ…これは大変な事になっていますねぇ♫」
「お前……なんでここに…」
いつの間にか俺の隣にジョーカーが座っており、空を見上げて楽しそうに笑っていた。
「ここで死ぬわけにはいかないでしょぉ?治して差し上げますよ♬」
ジョーカーは俺の傷口に指を向け短く詠唱すると、傷口はすぐに塞がっていった。
「…お前があいつを連れてきたのか?」
「はぁい♪彼なら、私たちの戦力に充分役立つでしょう?」
「そうかもしれないが…あいつが協力してくれるとは思えん」
俺たちの視線の先で、フォルカスは本のページを何枚か破って宙に投げ捨てた。ページはすぐに黒い風を巻き起こし、風が止むと何人ものフォルカスが現れた。
「あれは…」
「彼は様々な呪詛を使うようですねぇ…どうですか、やっぱり戦力になりますでしょぉ?」
「とにかく、今はあいつを止める事が最優先だ。お前も手伝え」
「もちろんですよぉ~♬」
「…さっきから、なんの話してる…?」
ジョーカーの隣にいた姫が、俺たちを不思議そうに見上げて尋ねてきた。確かにこの話は俺たち以外知らないから当然の反応かもしれない。
「姫にはそのうち話しますよぉ~。さぁ姫、参りましょうか」
「………わかった」
姫はコクリと頷くと、背中にエレナのような龍の翼を生やした。
12
お気に入りに追加
5,972
あなたにおすすめの小説

異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜
ei_sainome
ファンタジー
クラスメイト全員が異世界に召喚されてしまった!
謁見の間に通され、王様たちから我が国を救って欲しい云々言われるお約束が…始まらない。
教室内が光ったと思えば、気づけば地下に閉じ込められていて、そこには誰もいなかった。
勝手に召喚されたあげく、誰も事情を知らない。未知の世界で、自分たちの力だけでどうやって生きていけというのか。
元の世界に帰るための方法を探し求めて各地を放浪する旅に出るが、似たように見えて全く異なる生態や人の価値観と文化の差に苦悩する。
力を持っていても順応できるかは話が別だった。
クラスメイトたちにはそれぞれ抱える内面や事情もあり…新たな世界で心身共に表面化していく。
※ご注意※
初投稿、試作、マイペース進行となります。
作品名は今後改題する可能性があります。
世界観だけプロットがあり、話の方向性はその場で決まります。
旅に出るまで(序章)がすごく長いです。
他サイトでも同作を投稿しています。
更新頻度は1〜3日程度を目標にしています。

スキルが覚醒してパーティーに貢献していたつもりだったが、追放されてしまいました ~今度から新たに出来た仲間と頑張ります~
黒色の猫
ファンタジー
孤児院出身の僕は10歳になり、教会でスキル授与の儀式を受けた。
僕が授かったスキルは『眠る』という、意味不明なスキルただ1つだけだった。
そんな僕でも、仲間にいれてくれた、幼馴染みたちとパーティーを組み僕たちは、冒険者になった。
それから、5年近くがたった。
5年の間に、覚醒したスキルを使ってパーティーに、貢献したつもりだったのだが、そんな僕に、仲間たちから言い渡されたのは、パーティーからの追放宣言だった。

病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~
於田縫紀
ファンタジー
ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。
しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。
そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。
対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。

チートな親から生まれたのは「規格外」でした
真那月 凜
ファンタジー
転生者でチートな母と、王族として生まれた過去を神によって抹消された父を持つシア。幼い頃よりこの世界では聞かない力を操り、わずか数年とはいえ前世の記憶にも助けられながら、周りのいう「規格外」の道を突き進む。そんなシアが双子の弟妹ルークとシャノンと共に冒険の旅に出て…
これは【ある日突然『異世界を発展させて』と頼まれました】の主人公の子供達が少し大きくなってからのお話ですが、前作を読んでいなくても楽しめる作品にしているつもりです…
+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-
2024/7/26 95.静かな場所へ、97.寿命 を少し修正してます
時々さかのぼって部分修正することがあります
誤字脱字の報告大歓迎です(かなり多いかと…)
感想としての掲載が不要の場合はその旨記載いただけると助かります

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる