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第10章
第174話
しおりを挟むファルファラの美しさに少し見惚れていたが、すぐにその鳴き声で現実に引き戻される。下を見ればエルフ達も気付いたらしく、ファルファラを見て言葉を失っていた。
ファルファラが敵か味方なのか見定めていると、何かの魔力を背後に感じた。
「何だ…ゔっ?!」
振り向いた瞬間、俺の鳩尾に馬鹿げた威力の蹴りが入った。蹴った相手の勢いが止まる事はなく、俺は森の木をなぎ倒して地面に踏みつけられた。
「エレナ…?!」
「…………………。」
俺の腹に足を乗せて見下ろしていたのは、龍の翼を生やしたエレナだった。
「…どいてくれないか?」
エレナの瞳はどこか虚ろで、俺の声など響いていないようだった。
すぐにエレナをどかそうとしたが、エレナは一冊の本を取り出した。そして適当にページを開いて俺に見せると、俺の意識はどんどん薄れていった。
「レイ様?!エレナ様も!」
フリーエルが家を出て辺りの様子を飛んで警戒していると、森の木がなぎ倒されており地面に倒れている2人を見つけた。
すぐに側に降りて駆け寄ると、2人とも息はしているが意識が完全になかった。
「2人ともしっかりして下さい!何があったのですか!」
フリーエルの声も届いていないのか、レイは静かに眠っている。
その時、エレナは何かの殺気を感じてその場から飛び退いた。見ると、自分のいた場所はエレナの拳で地面に亀裂が入っていた。
「エレナ様…?」
寒気を感じるフリーエルの目の前で、エレナの体に黒い模様が浮かんでいった。シオンにあったものと酷似している。
「…………コロシテモイイヨネ」
エレナはそう呟くと、フリーエルに飛びかかった。
すぐさま魔法障壁を張るが、エレナは軽々拳で砕き勢いを殺さず殴りかかった。フリーエルはあまり格闘術が得意ではないので、そのまま天翼族のスピードを活かして回避する。
「っ?!」
空高く飛び上がって振り返ると、すぐ側までエレナは近づいていた。
(間に合わないっ!)
そう思って目を閉じたが、フリーエルには何の衝撃も起きなかった。うっすら目を開けると、フリーエルを包むような障壁が何重に張られていた。
「間一髪だったわね…」
「シオン!」
下に視線を向ければ、フリーエルに手を向けて一息つくシオンがいた。
「あれ、どこだここ…?」
気がつけば、俺はどこか真っ暗な空間にいた。周りには何もなく、ただ黒い靄が広がっているだけだ。
こんな感じの場所に連れてこられた事が一度だけあるが、今回は黒い腕もなくただの空間といった感じだった。ただ、前の同じなのは転移などの魔法が使えないくらいだ。
「君に会うのは、これが初めてかな」
「っ?!」
振り返ると、そこには黒髪の男性が立っていた。男性は妖艶な笑みを浮かべながら、俺に近づくわけでもなくじっと見据えている。
「誰だ、お前…?」
「僕はフォルカス。君はジョーカーから聞いていたけど、レイ君で間違い無いね?」
「フォルカスって…!ってか、ジョーカーがこの島にいるのか?」
「あぁ。磔にしてたけど、今頃はもう逃げてるだろうね。」
フォルカスはどこか当然のように答えながら、一冊の本を取り出して優雅に読み始めた。
「おい、早く俺をここから出せ。」
「そう慌てなくてもいいじゃないか。少し話さないか?お互い、数少ない転生者なのだから」
「……は?」
ポカンとする俺の目の前で、フォルカスは顔を上げてフッと微笑んだ。
その頃、王都の闘技場は大会を観戦する客たちの歓声に包まれていた。
試合を終えて観戦するロゼッタの視線の先では、紅葉がフィールドを炎に染めて楽しそうにはしゃいでいる。ロゼッタからすれば、とても退屈な時間だった。
「はぁ…いくらマスターの姿とは言え、分身君では味気ないですね…」
ロゼッタの膝上には、レイの分身がちょこんと座って試合を観戦している。分身は話は聞いてくれるが返事をする事がないので、人形のようなものだった。
だが、ロゼッタが小さなため息を漏らした時、分身は霧のように突如消えていった。
「これは…マスターの魔力の供給が途絶えた…?」
ロゼッタは嫌な予感がしながらも、世界眼でレイの姿を探した。
(※登場人物まとめはまだ途中なので、書き終わってからアップします…!待たせてしまい申し訳ないです!)
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